世界の長寿地域ブルーゾーン。5つ目は日本の沖縄です。ダン・ビュイトナーが世界の5地域をブルーゾーンと名付けたのは、2000年代のこと。沖縄は、アメリカ人よりも心臓病になる確率が1/6~1/12で、がんになる確率も低くなっていました。

当時の沖縄の暮らしは、どのようなものだったのでしょう。

<参考> bluezones.com
The Okinawa Diet: Eating and Living to 100

沖縄の100歳以上の人の暮らし – 9つのポイント

1. 植物ベースの食事

沖縄の高齢者は、野菜中心の食生活です。100歳以上の人の食事の67%がサツマイモで、12%がお米、9%が野菜、6%が豆となっています。

サツマイモ、野菜炒め、豆腐の食事は、栄養価が高く、カロリーが低くなっています。またゴーヤは、抗酸化物質と血糖値を下げる化合物を含んでいます。

100歳以上の沖縄の人は豚肉を食べますが、伝統的には儀式の行事のためとなっており、少ししか食べません。代わりに魚は週に3食です。

2. 大豆をたくさん食べる

沖縄の食事は、豆腐や味噌汁など、大豆を使った料理が豊富です。1日に大豆を85g食べています。豆腐に含まれるフラボノイドは、心臓を守り乳がんの予防に役立ちます。発酵大豆食品は、健康的な腸内環境に貢献し、栄養の吸収を助けます。

<参考> 国立がん研究センター
イソフラボンと脳梗塞・心筋梗塞発症との関連について
大豆・イソフラボン摂取と乳がん発生率との関係について

3. 薬草を食べる

ヨモギ、ショウガ、ウコンは全て沖縄の庭の定番であり、薬効があることが証明されています。これらを毎日食べることで、沖縄の人は病気から身を守っているのかもしれません。

4. 畑仕事

沖縄の100歳以上の多くの人が、畑を育てていました。毎日幅広く身体を動かす運動となり、ストレスを減らすのにも役立ちます。また新鮮な野菜を食べる事にも繋がります。

5. 活動的であり続ける

年輩の沖縄の人は、活動的に歩いたり庭仕事をしたりします。沖縄の家は、家具がとても少ないです。椅子を使わずに床の畳に座って食事をとったり休んだりします。一日に何十回も床から立ち上がったり座ったりすることで、下半身の強さとバランスを鍛え、危険な転倒から守ります。

6. 日差しを浴びる

日光を定期的に浴びると、ビタミンDが生成され、骨が強くなり身体が健康になります。毎日外で時間を過ごすことにより、高齢者でも年間を通じて最適なビタミンDを得ることができます。

7. 模合を維持する

沖縄には、模合(もあい)と呼ばれる伝統的な会合があり、安全な社会ネットワークとなっています。必要なときに経済的および感情面のサポートをします。常に助けとなる誰かがいることを知っていることで、ストレスを緩和するセーフティネットとなります。

模合(もあい)とは?

沖縄県や鹿児島県奄美群島において、複数の個人や法人がグループを組織して一定額の金銭を払い込み、定期的に1人ずつ順番に金銭の給付を受け取る金融の一形態である。本土における頼母子講・無尽講に相当する相互扶助システムである。沖縄ではその他、寄合(ユレー、ユーレー)とも呼ばれる[2][3]。

飲み会の資金拠出のためといった小規模なものから、事業の運転資金調達といった大規模なものまで様々なものがある。(wikipediaより)

8. 生きがい

沖縄の高齢者は、朝起きる理由を簡単に説明できます。目的を持って生きることで、責任のある役割と気持ちが得られ、100歳になっても元気でいることができます。

9. 柔らかい態度

困難が彼らの態度を和らげました。若い時の厳しい時代を過去のものとして、現在のシンプルな喜びを楽しんでいます。彼らは人に好かれるようになり、若いメンバーを老齢まで導くことを学びました。

沖縄の変化

都道府県別平均寿命ランキングの変化

素晴らしい特質を持ちブルーゾーンに認定された沖縄ですが、皮肉なことに認定以降、平均寿命のランキングが下がってきています。都道府県別平均寿命は、1985年は男女とも1位でした。2005年時点でも女性は1位(男性は25位)だったのですが、2017年には男性は36位、女性も7位に後退してしまいました。いったい何が起きたのでしょう。

<参考> 厚生労働省, 平成27年
都道府県別にみた平均寿命の推移

アメリカ型食生活の普及

一つには、アメリカ型の食生活が普及したことが原因として考えられます。

人口10万人あたりのファーストフード店が最も多いのが沖縄です。男性は外食の機会が多く、その影響を受けやすいライフスタイルとなっています。

また、戦後アメリカの占領下で海外の缶詰文化が広がった影響で、SPAM缶やシーチキンなどの缶詰消費量が多く、日本一となっています。1993年には、脂肪摂取量が全国で唯一30%を超えました。

<参考> 都道府県ランキング
都道府県別ハンバーガーショップ店舗数

自動車生活

また、豊かになるにともない、自動車が生活に入り込んできました。一世帯に3台とも言われています。それまで歩いて出かけていたところが、自動車一台で済むようになり、運動不足になってしまったのです。

かつての沖縄との違い

ブルーゾーンに認定された頃に100歳前後だった人たちは、幼少期から三食とも煮イモを主食としていました。食物繊維が豊富で、低カロリー・低脂肪の質素な食事になります。戦前は白米を常食できた人はまれで、”伝統的な”沖縄料理は特別な日にのみ口にできたようです。

1970年代の沖縄は、糖尿病による死亡率は全国で最も少なかったのです。それが2000年代に入ると、男女とも全国でワースト近くになってしまっています。

<参考> 沖縄県保健医療部健康長寿課
沖縄県における主要死因の年齢階級別死亡数、年齢調整死亡率・年齢階級別死亡率(人口10万対)・都道府県順位 -平成27年-

沖縄から学べるもの

Zamami, Okinawa, Japan

沖縄の変化からは、食生活と運動の影響がいかに大きいか分かります。平均寿命ランキングも、外食の機会の多い男性から先に低下しています。

一方、沖縄の変わらない良い点も参考になるでしょう。今でも模合(もあい)が生きていることで、仲間と実際につながり、ストレスを感じずに暮らすことができます。柔らかい態度は、今を生きることを楽しみつつ、若い人とのつながりも維持します。

これまでブルーゾーンの5つの地域を見てきました。次回は、各地域に共通する長寿の秘密を探ってみましょう。

 

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執筆

sakura15

 

サイエンスライター。大学院にて生物情報を研究後、半導体開発や遺伝子解析ベンチャー企業に携わりました。 趣味は海外トレッキングで、ネパールを横断するグレートヒマラヤトレイルを歩くのが夢。 生物から理学まで幅広く見ながら、分かりやすく書くことを心がけています。

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