世界の長寿地域ブルーゾーン

イカリア島

ブルーゾーン(英名:Blue zones)とは

日本人の平均寿命が延びています。長生きするのは良いことですが、健康に長く暮らしたいですよね。

ベルギーの人口学者ミシェル・プーランとイタリア人医師ジャンニ・ペスが長寿者が多いイタリア・サルデーニャ島のバルバギア地方に、「青色マーカー」で印をつけたことに由来します。

その後、ナショナルジオグラフィックのダン・ビュイトナーが、世界で5つの健康長寿の地域を発見し、ブルーゾーンと名付けました。ギリシアのイカリア、イタリアのサルディーニャ、コスタリカのニコヤ、カリフォルニア州のロマリンド、そして日本の沖縄です。

 

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ブルーゾーン 世界の100歳人(センテナリアン)に学ぶ 健康と長寿のルール

 

そこには、食生活に始まり、社会生活習慣にまで特徴がありました。いったいどんな暮らしをしているのでしょうか。エーゲ海に浮かぶ島、イカリア島から見てみましょう。

 

健康長寿のイカリア島

3人に1人が90才を超えるイカリア島。100才を超える人もめずらしくありません。例えば、祖父が110才、叔父が115才、兄が108才で亡くなったという人もいます。

また、単に長生きなだけではなく、実際の年齢よりもはるかに若く見えます。65才から100才のイカリア人男性の80%が、まだ性生活があると回答しています。さらに、認知症も少なくなっています。85才になるとアメリカ人の50%は認知症になりますが、イカリアでは10%未満です。日本がこれから目指す姿が、ここにあるかもしれません。

イカリア島の地理と歴史

トルコとの国境近くのエーゲ海に、イカリア島はあります。約250平方kmに1万人が暮らしており、人口密度は日本の1/8ほど。島には7つの市営温泉と露天風呂があり、古代ギリシアの時代から保養地として有名です。

17世紀の文献にも、「100才の人を見るのは普通」と書かれています。島を強風が襲い自然の港が無いことから、主要な航路の外にあり、イカリアは自給自足の暮らしをしてきました。

イカリア島の場所はこちら↓

イカリアの名は、イカロスの神話からとられています。イカロスは、父親の指示を無視して太陽に近づき過ぎて、ワックスで固めた翼が溶けて、死んでしまいました。若者の無謀さやテクノロジーを戒める神話として受け止められるイカロスの神話。今、自然な暮らしをする長寿の村の名として広まっているのも、何かの縁でしょうか。

イカリア島の暮らし

山あいの暮らし

イカリアで最も長生きする人は、島の山あいに住む人たちです。彼らはガーデニングをしたり、畑仕事をしたり、近所の人の家まで起伏のある道を歩いたりすることによって、自然に運動しています。90才代や100才代の男性に健康体操をしているかと聞くと、「土を掘り起こしています」と返ってきます。

昼寝の習慣

イカリアの男性の84%は、午後に昼寝をします。研究によると、昼寝をすると心臓病で死亡するリスクが34%、働く男性に限ると、64%も低下すると報告されています

短時間の昼寝がストレスを解放し、不十分な夜の睡眠のバランスをとるためです。

なお昼寝の時間は、20分で充分と言われています。

<参考> The Guardian, 13 Feb 2007
Taking a siesta reduces the risk of dying of heart disease by a third

地中海風の食事

イカリア人は、通常の地中海料理と比べると、魚や肉をはるかに少なくし、野菜を多く食べています。果物や野菜、全粒穀物、豆、ジャガイモ、はちみつ、オリーブオイルをたくさん摂っています。オリーブオイルは、コレステロールを下げる一価不飽和脂肪酸を含んでいます。

イカリア人は、アメリカ人と比べると6倍の豆を消費し、魚を週に2回、肉は月に5回食べ、コーヒーを1日2~3杯、ワインを1日2~4杯飲んでいます。一方、精製砂糖の量は1/4です。彼らはまた、野生の植物を摂ります。これらは赤ワインの10倍の抗酸化物質を含んでいます。

ハーブティー

ハーブティー

イカリアの人達は、家族や友人とハーブティーを飲んで楽しんでいます。ハーブティーは、抗酸化物質を含んでいます。またワイルドローズマリー、セージ、オレガノティーは利尿剤として働きます。

ある研究では、高血圧で処方される利尿剤によって、アルツハイマーのリスクが75%減少しました。イカリア島に認知症が少ない理由は、ハーブティーにあるのかもしれません。

<参考> Johns Hopkins Medicine, Health
Blood Pressure and Alzheimer’s Risk: What’s the Connection?

山羊乳

八羊

イカリアでは、牛乳の代わりに、牧草飼育のヤギ乳を使用します。ヤギ乳は牛乳に比べてアレルギーが少なく、消化性も良いことから栄養に優れています。

断食

イカリア人は、伝統的なギリシア正教徒です。彼らの宗教的なカレンダーでは、一年のほぼ半分は断食することになります。動物の研究では、30~40%のカロリーをカットすると、寿命が40~50%長くなることが知られています。腹八分目の生活も、イカリア人の長寿を支えているのかもしれません。
<参考> 健康長寿
摂取カロリーと老化

ストレスの少ない暮らし

少々意外なことに、イカリア島の82%の男性が以前タバコを吸っていたことがあります。彼らはまた、時間に鷹揚です。午後のランチに誘うと、午前10時に来たり、夕方に来たりするかもしれません。失業率は約40%ですが、ほぼ全員が庭や畑で食物を育て、家畜を飼い、多くが自分のワインを生産しています。またお互いを知っているので、犯罪が起こる心配もありません。

家族や友人を優先する

イカリアでは、社会的な接触を避けることはできません。人々は村の祭り、教会、お祝いごとに参加することを期待されています。欠席すると、どこにいるのかと、近所の人が呼びに来ます。

また、夕方は家で過ごすのではなく、1日の仕事の後にグループで集まって喜びと悲しみを共有します。多くの村のカフェが夕方遅くにも開いていて、畑から戻ってきた農家のニーズに応えます。何か悪いことが起こったときは、家でそれについて少し話し、それからカフェに行くか、友人に会いに行くそうです。一人でためこまないことも、長生きの秘訣かもしれません。

まとめ

いかがでしょう。イカリア島の暮らし。自然な運動、昼寝、野菜中心の食事、腹八分目、ハーブティー、ストレスの少ない暮らし、人とのつながりなど、参考になるポイントがたくさんありそうです。次回は、イタリアのサルディーニャ島の暮らしを見てみましょう。

 
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執筆

sakura15

 

サイエンスライター。大学院にて生物情報を研究後、半導体開発や遺伝子解析ベンチャー企業に携わりました。 趣味は海外トレッキングで、ネパールを横断するグレートヒマラヤトレイルを歩くのが夢。 生物から理学まで幅広く見ながら、分かりやすく書くことを心がけています。

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