世界の長寿地域ブルーゾーン。5つのブルーゾーンを見てきました。
エーゲ海に浮かぶイカリア島、男性長寿世界一のサルディーニャ島、アメリカで平均より10歳長寿のロマリンダ、メソアメリカ文明を受け継ぐニコヤ、そして日本の沖縄。さまざまなバリエーションに富んだ地域があります。
その暮らしを詳しく見てみると、おどろくほど共通する点があります。
その共通点を探ることが、長寿の秘訣に繋がるのではないでしょうか?
<参考> ブルーゾーン 世界の100歳人(センテナリアン)に学ぶ 健康と長寿のルール
Index
1. 役割を持って暮らす
どの社会も、年をとっても社会からリタイアせずに、コミュニティの中で役割をもって生きています。ロマリンダのアドベンティスト派の高齢者は、教会のボランティア活動に参加し、ケアされる側であるよりも、ケアする側でいます。沖縄では模合(もあい)が今でも生きていて、経済的に、また精神的に互いに助け合う文化が息づいています。
模合(もあい)とは?
沖縄県や鹿児島県奄美群島において、複数の個人や法人がグループを組織して一定額の金銭を払い込み、定期的に1人ずつ順番に金銭の給付を受け取る金融の一形態である。本土における頼母子講・無尽講に相当する相互扶助システムである。沖縄ではその他、寄合(ユレー、ユーレー)とも呼ばれる[2][3]。
飲み会の資金拠出のためといった小規模なものから、事業の運転資金調達といった大規模なものまで様々なものがある。(wikipediaより)
サルディーニャでは、いつ種をまくのか、干ばつや害虫にどう対処するのか、高齢者が知恵を授けつつ、家の仕事もします。高齢者が社会に必要とされている、目的を持って生きている、それが生きる力の源となります。
2. 家族を大切にする
そして、家族を大切にします。サルディーニャやニコヤには、長期の老人ホームはありません。子や孫と一緒に暮らしたり、家族が近くに住んでいたりします。
イカリアやサルディーニャでは、仕事の昼休みは自宅に帰り、家族と一緒に昼食をとります。午後は昼寝をとり、仕事に戻る日は週に数日です。ロマリンダでは、毎週金曜の晩から土曜日いっぱいは安息日で、仕事を止めて家族と一緒に過ごします。多くはハイキングに出かけます。家族を優先して考え、子や孫の成長に気を配ることで、心がみずみずしく保たれています。
3. 自然に運動する
どの社会も、自然に運動するような仕組みになっています。庭仕事や畑仕事にいそしんだり、起伏のある土地を隣近所の家まで歩いて訪問したり、といった中で、自然に身体を動かしています。
サルディーニャの羊飼いは、1日に8km歩きます。イカリア島で最も長寿の人達が暮らしているのは、歩くだけで適度な運動になる、山あいの地域でした。ロマリンダでは、毎週末自然の中へハイキングに出かけます。
また沖縄では、近年若い世代の死亡率が相対的に高くなってきていますが、自動車の普及により運動不足になったことが一因と考えられています。
ジョギングやマラソンのような激しい運動はしなくても大丈夫です。歩くこと、庭仕事をすること、それで充分と考えられています。
4. 植物ベースで腹八分目の食事
ブルーゾーンの人達は皆長生きですが、食生活はバリエーションに富んでいます。サルディーニャ島では、100歳以上の人の食事の47%が全粒穀物です。その一方、同じ地中海のイカリア島では、穀物はわずか1%しか占めていません。これはいったいどういうことでしょう。
沖縄では近年、35歳から65歳までの働き盛りの死亡率が、全国でワーストクラスになってしまいました。米軍基地が近くにあり、缶詰消費量や一人当たりのファーストフード店の数が全国一となるなど、食生活のアメリカ化が進んだ影響と考えられています。平均寿命ランキングも、外食の機会の多い男性から先に低下しています。食生活が重要であることには変わりはありません。
一つの共通点として、彼らは野菜を中心とした食事をとっています。イカリア島は野菜が主体、サルディーニャ島は全粒穀物が主体、などバリエーションはありますが、いずれにしろ肉はアクセント程度で、月に5回程度、一回の量は100g前後です。沖縄も豚肉は食べますが、かつての100歳以上の人達は、特別な日に食べる程度でした。
また、ロマリンダやニコヤでは、夕方の早めの時間に軽い夕食を済ませます。身体が活動していない夜に胃腸を休める事で、睡眠の質も良くなるようです。
関連記事:全粒穀物のメリットとは?栄養価が高く食物繊維も豊富、疾患による死亡リスク減や体外受精の成功率向上の可能性も
5. 豆をよく食べる
もう一つには、彼らは豆をよく食べます。イカリア島はレンズ豆、サルディーニャ島はそら豆、ニコヤは黒豆、沖縄は大豆です。アメリカの中にありながら平均より10歳長寿のロマリンダは、多くの種類の豆を食べ、ブルーゾーンの中で一番豆を食べています。
豆は重量当たりに多くのたんぱく質を含んでいます。また、豆の豊富な繊維質が、腸内の善玉菌の栄養となり、腸内フローラのバランスを保つことにもつながります。
<参考>
公益財団法人 日本豆類協会
6. 適度にお酒をたしなむ
ブルーゾーンの人達は、必ずしも禁欲的な生活を送っているわけではありません。コミュニティに所属し、自然に運動しながら、人生を楽しんでいます。周囲の人も、健康になるような生活をしているので、同じペースで暮らしていると、自然に自分も健康が保たれる形です。
お酒も飲みます。イカリアの人は、畑仕事の後にカフェに立ち寄り、友人とワインを飲みます。1日にワイン2杯前後。一週間分を週末にまとめて飲むスタイルではなく、定期的に飲んでいます。友人と一緒に、食事をとりながら飲むのがポイントです。
次のブルーゾーンはどこか
4年連続寿命世界一の香港
厚労省の2018年の簡易生命表によると、香港が4年連続で寿命世界一となりました。香港というと100万ドルの夜景が有名で、ビル群の都市のイメージで、長寿とは結びつきにくいかもしれません。
でも、狭い都市国家だからこそ、子供や孫が近くに住んでいます。週末になると、親孝行しに訪ねてくることができます。友人も近くに住んでいます。広大な中国大陸では、帰省は年に一回になってしまうでしょう。
朝、公園で太極拳をして身体を動かした後は、そのままグループで早茶(ザオチャ)といって朝の飲茶に出かけます。大きな声でおしゃべりして、ストレスも発散します。
<参考>
香港経済新聞
医食同源の香港
食事は医食同源の考えが強く、ふつうの人も漢方に馴染みがあり、日常的に漢方を取り入れています。身体の不調は「湯(スープ)」で整えるというほど、滋養豊かなスープを毎日たくさん飲んでいます。飲物は冷たいものは身体を冷やすからと避け、暑い夏でも常温のビールを飲むほどです。
そんな香港も、1997年の香港返還当時は今ほど寿命が長かったわけではありません。2000年から香港政府が健康促進プロジェクトを行ってきました。75歳以上の低所得の老人には、基本的な医療費を無料にしています。
健康寿命世界一のシンガポール
シンガポールは、2018年にWHOの統計で健康寿命世界一となりました。
健康寿命というのは、「心身ともに自立し、健康的に生活できる期間」のことで、単に寿命が長いのではなく、寿命の質が高いと言えます。シンガポールも、香港と似ています。どちらも小さな都市国家で、家族や友人が近所に住んでいます。医食同源の食生活が根付いている点や、政府の努力も共通しています。
日本がブルーゾーンとなるために
日本も、香港やシンガポールと比べて、年金・医療制度や公衆衛生は整っています。
家族や友人と近くに住める、というのが一つのポイントではないでしょうか。テレワークが進み、職場に通いやすいところに住まざるを得なかったこれまでから、住みやすいところに住むようにシフトしていくでしょう。その中で、家族と同居、もしくは近くに住むようになっていくかどうか。
年長者が煙たがられるのではなく、かつての沖縄のように、和やかな態度で若い世代と過ごすことが求められるのではないでしょうか。
適度な運動も必要でしょう。かつては公園でゲートボールが盛んで、高齢者どうしのコミュニケーションも活発でした。今、同じことを繰り返すことはないかもしれませんが、香港の太極拳のように、毎朝公園でウォーキングするなどの運動ができるのではないでしょうか。
ブルーゾーンについてのまとめ
ブルーゾーンの人達の暮らしは、とても魅力的なものでした。コミュニティの中で役割をもって生きている。家族を大切にし、自然に身体を動かしながら暮らす。食事は野菜ベースの腹八分目で、豆(ナッツ類)をよく食べる。
禁欲とは言わず、飲酒や性交渉などは世界的に見ても平均以上に行ってます。
ブルーゾーンの人達は、どこか遠い国の人達というよりも、私たちの暮らしと続いている姿かもしれません。心の中に、ブルーゾーンの人達の姿を思い浮かべて、今日からの一日を過ごしてみてはいかがでしょうか。
関連記事:世界の長寿村ブルーゾーン – (1) エーゲ海に浮かぶ島、イカリアの暮らし
関連記事:世界の長寿村ブルーゾーン – (2) 男性長寿世界一のサルディーニャ島
関連記事:世界の長寿村ブルーゾーン – (3) アメリカで平均より10歳長寿のコミュニティ、ロマリンダ
関連記事:世界の長寿村ブルーゾーン – (4) コスタリカのニコヤ半島
関連記事:世界の長寿村ブルーゾーン – (5) 沖縄から学べること