飽食の国アメリカで、アメリカ国内の平均寿命より10歳も平均寿命が長寿のコミュニティがあります。

ロサンゼルスの東65マイルにある、人口2万4000人の街、ロマリンダ。そこにある、1840年代設立のアドベンティスト教会の9,000人のコミュニティです。

彼らはタバコを吸わず、アルコールも飲みません。研究者はその長寿の秘密は、菜食主義と定期的な運動によるものと考えています。いったいどんな暮らしをしているのでしょうか。

<参考> ブルーゾーン 世界の100歳人(センテナリアン)に学ぶ 健康と長寿のルール

定期的に休む

彼らは一週間ごとの安息日に休み、家族、神、友人、自然と向き合う時間をとります。

金曜日の日没から土曜日の終わりまで、どれほど忙しいかや子育てのスケジュールに関係なく全てを止め、家族と1日を過ごし、通常はハイキングに出かけます。その間の料理は、前日に準備します。これらによりストレスが緩和され、社会的つながりが強化され、継続的な運動ができます。

定期的に適度な運動をする

平均寿命を延ばすために、マラソンランナーほどの運動は必要はありません。

毎日、散歩のような低強度の運動を定期的に行うことで、心臓病やがんになるリスクを下げることができます。

より多くの植物を食事に取り入れる

聖書の教え

聖書の創世記は、植物(菜食)を食べることを伝えています。「そして神は言われました、『わたしはすべての地球の表面にある種をもつ全ての草と、種のある実を結ぶすべての木とをあなたがたに与える。これはあなたがたの食物となるであろう。』」アドベンティスト派はこれを守り、植物主体の食事を摂っています。

野菜、果物、豆

トマト

アドベンティスト派の100歳以上の人の食事の割合は、33%が野菜、27%が果物、12%が豆類、10%が乳製品となっています。反対に、糖分・塩分・精製穀物が少なくなっています。

研究では、タバコを吸わないアドベンティスト派の人で、1日に2回以上果物を食べた人は、週1〜2回果物を食べた人よりも、肺がんになる確率が約70%少ないことが示されました。豆類を週に3回食べた人は、大腸癌が30〜40%少なくなっています。

トマトを週に5回以上食べるアドベンティスト派の女性は、トマトを週に1回以下しか食べない女性に比べて、卵巣がんになる確率が70%少なくなっています。トマトをたくさん食べることは、男性の前立腺癌を28%減らす効果もあります。

<参考> 女子栄養大学
日本人菜食主義者における生活習慣病予防の観点から見た栄養状態の特徴に関する研究

American Journal of Epidemiology, Vol.133, Issue 7, p683-93, 1 Apr 1991
Diet and Lung Cancer in California Seventh-day Adventists

American Journal of Epidemiology, Vol.148, Issue 8, p761-74, 15 Oct 1998
Dietary Risk Factors for Colon Cancer in a Low-risk Population

Cancer Causes & Control, Vol.17, p137-46, 2006
Dietary Risk Factors for Ovarian Cancer: The Adventist Health Study (United States)

World Cancer Research Fund International, 29 Apr 2020
Cooked tomatoes can reduce the risk of prostate cancer

肉は控えめに

彼らの多くは、肉を食べません。10%の人は完全なベジタリアンで、30%の人は乳製品と卵は食べます。8%の人は魚までは食べますが、肉は食べません。残り半分の肉を食べる人でも、1日あたりの肉の消費量は50g余りと少なく、平均的なアメリカ人の1/5ほどです。

菜食主義者の人は、コレステロール値と血圧が低く、糖尿病になるリスクが低いことが分かっています。また、心血管疾患やがん、特に大腸がんになるリスクが低くなります。肉好きの人には、メインディッシュとしてではなく、サイドディッシュとして少量食べることをアドベンティスト派は推奨しています。

健康なBMIを維持する

彼らは、活動的な状態を保ち、肉を食べる量は控えめで、健康なBMI(身長に対して適切な体重)を保っています。肉を食べない人のBMIは23で、基準値の25を大きく下回っています。アドベンティスト派の人は、肉を少し食べる人でもBMIは29で、肥満とは考えられていません。BMIが高いアメリカ人よりも血圧が低く、血中コレステロールが低く、心臓血管疾患が少なくなっています。

早い時間帯に軽い夕食をとる

アドベンティスト派は、夕方の早い時間帯に軽い夕食をとります。活動のない夜に身体がカロリーで溢れることを防いでいます。その方が良い睡眠につながり、BMIも低下させるようです。

おやつにナッツ

ナッツを週に5回以上食べる人は、心臓病のリスクが約半分になり、約2年長生きします。少なくとも4つの主要な研究で、ナッツを食べることが健康と平均余命に影響を与えることが確認されています。

<参考> Archives Internal Medicine, Vol.152, No.7, p1416-24, Jul 1992
A Possible Protective Effect of Nut Consumption on Risk of Coronary Heart Disease. The Adventist Health Study

たくさん水を飲む

アドベンティスト派の健康調査で、1日に5杯以上の水を飲む男性は、水を2杯しか飲まない男性よりも、致命的な心臓発作のリスクが54%低いことが示唆されました。

<参考> American Journal of Epidemiology, Vol.155, Issue 9, p827-833, 1 May 2002
Water, Other Fluids, and Fatal Coronary Heart Disease: The Adventist Health Study

ボランティア活動

多くの信仰と同様に、アドベンティスト教会は、会員にボランティア活動を奨励し、その機会を提供しています。100歳を超えても、他の人を助けることに焦点を当てることにより、活動的であり続け、目的意識を見出し、うつを回避している人がいます。

同じ価値観の友人と時間を過ごす

孤独なアメリカ人は、そうでない人より寿命が8年短くなります。アドベンティスト派の人は、同じ宗派の多くの人と一緒に時間を過ごす傾向があります。同じ価値観を共有し、お互いの習慣をサポートすることで幸せに感じます。

まとめ

ロマリンダの暮らし。安息日のハイキングや菜食主義など、教会の導く暮らしがあります。コミュニティの仲間が同じスタイルで暮らしているので、一人そこから外れてしまう心配もありません。

自然に健康的な暮らし方が実現できるのでしょう。また、ボランティア活動で社会貢献することも、生きがいとなっています。私たちはアドベンティスト派の信徒ではありませんが、参考にしたいポイントがありますね。

 

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執筆

sakura15

 

サイエンスライター。大学院にて生物情報を研究後、半導体開発や遺伝子解析ベンチャー企業に携わりました。 趣味は海外トレッキングで、ネパールを横断するグレートヒマラヤトレイルを歩くのが夢。 生物から理学まで幅広く見ながら、分かりやすく書くことを心がけています。

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