やらなきゃいけないと思いつつ、すぐに取りかかれない。
ついつい、先延ばしにしてしまう。
読みたかったはずの本ですら、めんどくさいと感じて、積ん読状態。

誰もがこんな経験をしたことがあるのではないでしょうか。
なかなか手をつけられないと、「あれ、やらなきゃな」とそのことが気になってモヤモヤして、そんな自分に嫌気がさして、さらにモチベーションダウン、なんて悪循環になってしまうことも。
スムーズに取りかかれたら、どれほどスッキリ気持ちも軽くなるでしょうか。

モチベーションとは

心理学の領域で、モチベーションは、「人が特定の行動を起こし、その行動を維持し、方向づける内的なプロセスや力」と定義されています。

行動を促進するだけでなく、どのようにその行動が持続し、方向づけられるかも含まれるため、個人の行動やパフォーマンスに大きく影響する重要な要素とされています。

モチベーションの内在化

そんなモチベーションですが、皆さんは、モチベーションについて「ある」「なし」の2択だと思っていませんか?

モチベーションがあってサクサク行動できる。
モチベーションがなくて何も行動できない。

こんな風に「ある」「なし」で捉えられがちなモチベーションですが、実はグラデーションのように、①「やる気なし」、②「仕方なくやる」、③「大切だからやる」、④「楽しいからやる」の4種類に分けられます(図)

左から右へとモチベーションが内在化されていくプロセスを表しています。
①の「やる気なし」から、④の「楽しいからやる」に変わるのは到底無理!と思うかもしれませんが、1つずつ、ゲームのレベル上げのように右へと移していくのはいかがでしょうか。

動機の内在化

1.行動スイッチ「やる気なし」→「仕方なくやる」

まずは、行動スイッチの押し方です。
ごほうびもしくは罰で行動させるという方法(アメとムチ)が一般的ですが、長期的な視点ではおすすめしませんので、ここでは、動機の内在化の前提条件とされる3つの欲求を紹介したいと思います。
この3つの欲求が満たされると、左から右へのプロセスが進みやすくなります。

1つ目は「自律性の欲求」と呼ばれていて、私たちは自分で何かを決めたり、意見や考えを表現したい、という欲求を持っています。何かするときに、自分らしくアレンジしたやり方に変えてみるといった工夫ができます。

2つ目の「有能さの欲求」は、私たちは「うまくできるようになりたい」「成長したい」という欲求を持っています。前よりもうまくできたことに注目してみるのもおすすめです。

3つ目は「関係性の欲求」で、よい人間関係の中で過ごしたい、というものです。自分からあいさつしたり話しかけたりして、関係づくりをすることができます。
この3つを満たすことで、左から右へのプロセスを促していきます。

2.大切スイッチ「仕方なくやる」→「大切だからやる」

それをすることの意味を考えたり、自分にとって何が大切か考えることで、スイッチを押すことができます。

ここでは、これまでの生活や仕事をじっくりと振り返るなど、内省する時間をもつことが役に立ちます。

3.喜びスイッチ「大切だからやる」→「楽しいからやる」

楽しさや達成感、喜びを味わえるような要素を取り入れることが役に立ちます。
ただ短期的な「今楽しい!」だけではなくて、社会とのつながりが感じられるような「自分の強みを社会のために活かせている」という喜びだったり、自分が時間を尽くしたからこそ得られる達成感を目指せると、持続的な楽しさ(ウェルビーイング)にもつながっていきます。

瞬発力のあるモチベーションも爽快で、短期間で目標を達成するときなど、大事になります。
一方で、人生100年時代、働く期間がどんどん延びている今、バーンアウトせずにモチベーションを持続していけるような、自分のモチベーションとの自分らしいつきあい方を見つけてほしいなと思っています。
3つのモチベーションスイッチをヒントに、自分のモチベーションとの上手なつきあいかたを探ってみてくださいね!

 
【参考文献】
Ryan, R. M., & Deci, E. L. (2000). Self-determination theory and the facilitation of intrinsic motivation, social development, and well-being. American Psychologist, 55(1), 68–78.

執筆

博士(心理学),臨床心理士,公認心理師

関屋 裕希(せきや ゆき)

 

1985年福岡県生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、筑波大学大学院人間総合科学研究科にて博士課程を修了。東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野に就職し、研究員として、労働者から小さい子をもつ母親、ベトナムの看護師まで、幅広い対象に合わせて、ストレスマネジメントプログラムの開発と効果検討研究に携わる。 現在は「デザイン×心理学」など、心理学の可能性を模索中。ここ数年の取組みの中心は、「ネガティブ感情を味方につける」、これから数年は「自分や他者を責める以外の方法でモチベートする」に取り組みたいと考えている。 中小企業から大手企業、自治体、学会でのシンポジウムなど、これまでの講演・研修、コンサルティングの実績は、10,000名以上。著書に『感情の問題地図』(技術評論社)など。

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