人間の病気のなかで老化が関係するものはとても多い。病院を受診する多くの患者さんから、いろいろな症状の原因としてやはり加齢が原因でしょうかと尋ねられる。

実際、高血圧や不眠症、骨粗しょう症や筋力低下など、年齢が主要な原因となるものも多く、加齢が原因でしょうかと尋ねられると、うーん、それも原因の一つですね、と答えることはそれなりに多い。

この本には、その年齢による体の変化を制御する方法が書いてあるという。自分も体の症状から年齢を感じるようになった。

若いときのようにたくさん食べられない。脂っこいものを食べると胸やけがする。自分ではそうとはおもっていないが娘たちが私のお腹が出てきたと指摘する。そのたびに私は出ていないと主張している。眠りが浅くなっている。以前はもっとぐっすり寝ていたような気がする。えーと、あれなんだっけ、名前がでてこないといったら、母が笑って、あんたも年取ったねといっていた。

この本を読むことでこれらの症状に少しでもあらがうことができないだろうか。また、糖尿病や不整脈の持病をもつ両親に提案できることはないだろうか、そして年齢とともに生ずる様々な症状に悩む患者に伝えられるメッセージがあるのではないかと期待して本を読み始めた。

健康的に過ごすために

最初の章では老化の全体像や健康的に過ごすための秘訣がまとめられていた。

中年の私(40代)は、ちょうど今ぐらいの年齢から取り組むと効果的だそうだ。

今この本に巡り合えてよかった。癌の予防法がまとめられていて、その中では運動不足が該当した。運動不足は以前から自覚しているので、実は今でも時間があるときはグーパーしたり、娘たちや妻からは貧乏ゆすりをしないでといわれるが、運動のつもりで足を動かしたりしている。

電気刺激で腹筋を鍛える製品をせっかく購入したが最近使っていない。冬はつけるときにパッドがとても冷たいのだ。冷たくないパッドを開発してくれないかと考えているが、もう少し運動したほうが良いことは確かなので冷たいのを我慢して腹筋を鍛えるのを再開することにしよう。

 

最新の老化についての科学的知見

次の章は老化についての最新の科学的な知見がまとめられていた。

7つの方法があり、印象的なのは断食だ。患者にはバランスの取れた食事を腹八分目でとるように勧めることが多いが、断食を勧めたことはなかった。

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自分自身も、忙しいときでもできるだけ食事を抜かないように気を付けて過ごしていた。昼は仕出し弁当を食べているがどうしても揚げ物が多く、カロリーは高そうだ。あくまで健康的な食事との組み合わせでという条件のようだが、食事が抜けてしまうことがあっても、他の時に健康的な食生活ができていれば、抜けてもむしろ健康的である可能性があると考えてそれほど心配しなくてもよいということになる。

患者に断食を勧めるかどうかは適さない場合もありケースバイケースであると思うが、3食しっかりと食べなくてはというのは最新の研究からすると固定観念であるということだ。

以前から話題にのぼることのあった赤ワインに含まれるポリフェノールであるレスベラトロールも記載されていた。以前ワイン通の知り合いがいて、一時期ワインの品種や産地、酒造であるシャトーを頑張って覚えたり、ラベルをはがして保存したりしたが、最近はお酒といえば夕食の時にビール一缶を妻と分けるぐらいで、保存したはずのラベルはどこかにいってしまった。

これを機会にまた赤ワインを飲み始めてみようと思う。老化を防ぐ可能性のある物質として挙げられていた✴︎スペルミジン・ラパマイシンという物質にも興味をもったが、すぐに利用できるものではないようだ。

✳︎スペルミジンは、納豆に多く含まれており日常生活で摂取することが可能。

同じく挙げられていたメトホルミンは現在糖尿病の治療薬で、薬を選ぶ際に第一候補として検討される主要な治療薬だ。老化に抗する可能性があるなら、糖尿病ですでにメトホルミンを使用している方にとってはとてもうれしい話だ。最新の研究ではNAD(ニコチンアミドジヌクレオチド)、NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)という一連の物質が注目されている。いろいろと研究が進み利用できるようになるとよいと思った。

第3章から第9章は、関連各分野の第一人者による解説であった。これらの中では、紫外線や食品を通してビタミンDを多く摂取するようにすること、食物繊維を多く摂取する方法として全粒穀物がよいこと、睡眠を大事にすることなどが自分にとって取り組みやすく、生活習慣を変えようと思った項目だ。

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老化に抗する最新研究

最後の章は、老化に抗する最新の研究を進める若い研究者や、それらの研究を実際に社会に普及させるために起業した若手経営者たち4名の対談だ。

どの方たちも輝かしい経歴が記載されていて、日本の大学を卒業後、海外で研鑽を積み、その後日本に戻り、蓄えた力を発揮している。彼らのうちの一人が海外で研究する日本人のネットワークを立ち上げて、そこで知り合った仲だということだ。

ネットワークは自然な流れで立ち上がったようだ。ボストンに留学していた同世代の日本人研究者が出会い、週末にお互いの研究内容やサイエンスについて夜通し語り合い、刺激しあった。少人数で始まった研究会が徐々に拡大し、研究以外でも外国で困る様々な問題にお互いにサポートしあうというコミュニティーに発展したということだ。そして帰国後も交流がつづいているという。

例えば、メンバーの一人である山名慶さんは帰国後に、健康や医療に関する研究成果を一般の方に伝えることが重要だと考え、勤めていた企業で「NOMON(ノモン)」という会社を社内起業として立ち上げられた。

とても素敵な話でうらやましい。NOMONでは注目される抗老化物質であるNMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)、さらにワサビに含まれるスルフォラファンという成分にも注目して、これらの商品化を行っているという。

ほかに印象にのこったのは、老化についての研究を実際に自分で試されているという話だ。断食の論文を読んだ後に実際に断食に挑戦したという。月に4日間だったり、1日1食だったりといろいろなパターンで断食をした個人的な感想や考えがいきいきと述べられていて、とても楽しく読めた。彼らのような研究者や経営者の努力によって、老化に関する研究が進み、その成果が社会に広まっていくはずだ。

読み終えて、提案されている老化を制御する方法のうち、いくつか生活で取り入れてみたいと思うものがあった。食べるのが好きな妻に断食を勧めてみたが、それは無理!と即答された。それぞれが取り組みやすいところから取り組むのが良いだろう。

老化についての最新の情報を得たい、自分の生活に適したアンチエイジングの方法を知りたい、取り入れたいと思われている方には是非読んでいただきたいおすすめの書籍だ。

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執筆

篠原翼

 

認定医:日本プライマリケア連合学会認定プライマリケア認定医・日本医師会認定産業医 専門医:日本プライマリケア連合学会認定家庭医療専門医 所属学会:日本プライマリケア連合学会 千葉大学医学部卒業後、JR東京総合病院、亀田総合病院を経て、現在三浦海岸つばさクリニック院長。対話を大切にし、安心・信頼・満足できる医療を提供している。診療科目:内科・小児科・皮膚科・漢方内科。

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