いつまでも若々しく健康でいたいというのは、誰しもが考えることかもしれません。私たちが普段食べている食事は、近い将来の自分の体を作ることにつながります。同じ食事を摂るならば、美容効果があり、若々しい体を維持するのに役立つ食事にしたいものです。今回は、美容に良いとされる栄養素や食べ物、サプリメントで補う方法についてご紹介します。

美容に良い栄養素

美容に良い栄養素

「美容」の定義をどのように捉えるのかによって、良いとされる栄養素は異なります。

例えば、シミやシワなどがない「美肌」のほか、いつまでも若々しく美しい肌を維持する「アンチエイジング(エイジングケア)」も美容です。若々しい肌を保つために良い栄養素としては、タンパク質、亜鉛、ビタミン類(A、C、D、E)、ポリフェノール、コラーゲン、コエンザイムQ10、必須脂肪酸などが挙げられ、美肌やエイジングケアに効果があると考えられています。※1、2、3

また、エイジングケアに関係する言葉に「抗酸化」があります。私たちが日常的に浴びる紫外線や、体の中に取り込んだ酸素、タバコなどの有害物質により、体の中に「活性酸素」という物質が蓄積していきます。活性酸素は肌の老化の原因のひとつであり、活性酸素に対抗する仕組みを「抗酸化」といいます。※2、4

最近では、肌トラブルの原因となる酸化ストレスから皮膚を保護する活性成分として、マグネシウムが効果的である可能性があることもわかってきました。※4

また、抗酸化の司令塔であるNRF2は、新鮮な本わさびに含まれる希少成分「わさびスルフォラファン」によって活性化することが知られています。NRF2が活性化すると、細胞がより多くの抗酸化物質を自分自身で作るようになり、酸化ストレスによるダメージから細胞を守ることが知られています。

わさびスルフォラファンとNRF2について詳しく知りたい場合は、こちらの記事をご覧ください。

関連記事:細胞の抗酸化作用を高めるわさびスルフォラファンとは?抗酸化物質ビタミンCとの違いも解説

抗酸化作用のあるこれらの栄養素を摂ることで活性酸素の蓄積を防ぎ、老化のスピードを緩やかにすることも、エイジングケアのひとつの方法です。
では、美容に良いとされる栄養素とその特徴を見ていきましょう。

タンパク質

タンパク質は、私たちの体を作る大事な栄養素です。タンパク質は20種のアミノ酸からできており、その組み合わせやアミノ酸の結合の仕方(長さ)によって非常に多くの種類があります。アミノ酸から、皮膚や髪、爪、筋肉、臓器のほか、免疫物質や一部のホルモンなどの構成成分であるタンパク質が作られます。20種のアミノ酸のうち、9種のアミノ酸については、体内で合成することができません。それらを必須アミノ酸と呼び、食事から摂取しなければなりません。※5

亜鉛

亜鉛はミネラルのひとつで、皮膚、骨や骨格筋、肝臓、脳、腎臓などの臓器に存在します。亜鉛はタンパク質と結合することでその機能を発揮し、成分同士の反応を助ける触媒作用や、細胞構造を維持する作用があります。体内の亜鉛が不足すると、皮膚炎や味覚障害、慢性の下痢などが起こります。※5

ビタミンA

ビタミンAは脂溶性ビタミン(注1)で、多くの食品に含まれます。皮膚や粘膜を正常に保ち、視力や免疫、生殖、心臓、肺、腎臓などさまざまな臓器のはたらきを助けます。ビタミンAには、食肉、魚、乳製品など動物性食品に含まれるビタミンAと、果物や野菜など植物性食品に含まれるプロビタミンAの2種類があります。※6

ビタミンC

ビタミンCは水溶性ビタミン(注2)で、肌のハリを保つコラーゲンの合成を促進するとともに、ビタミンEと協働して強力な抗酸化作用を発揮します。シミの元となるメラニンの生成を抑えることで、若々しい肌を維持します。※1、7、8

ビタミンD

ビタミンDは脂溶性ビタミン(注1)で、骨を丈夫にしたり、髪の質を維持したりするはたらきがあります。また、皮膚の免疫機能調整や、若々しい肌の維持にも関わっています。※1、9

ビタミンE

ビタミンEは脂溶性ビタミン(注1)で、紫外線による肌へのダメージから守るはたらきがあります。また、ほかの抗酸化物質と協働することで、皮膚の弾力性や肌荒れが改善する可能性があります。※1、7

ポリフェノール

ポリフェノールは抗酸化作用を持つ成分で、多くの植物に含まれます。フラボノイド、レスベラトロール (スチルベン)、フェノール酸など、たくさんの種類があります。※1

コラーゲン

コラーゲンは、皮膚や軟骨、腱などを作る、タンパク質の一種です。人体のタンパク質のうち約30%がコラーゲンで、そのうちの40%が皮膚に存在し、シワの改善や肌の弾力性維持に役立つと考えられています。※1、10

コエンザイムQ10 (ユビキノン、CoQ10)

コエンザイムQ10はビタミン様物質とよばれ、全身、特に心臓、肝臓、腎臓などに多く存在する抗酸化物質です。※11
細胞内のミトコンドリアの安定化・損傷予防といったはたらきがあり、紫外線による皮膚の老化を抑えると考えられています。※1

必須脂肪酸(ω-3、ω-6)

必須脂肪酸の代表的なものにはω-3脂肪酸とω-6脂肪酸があり、体内では合成できないため食事から摂取します。ω-3脂肪酸には皮膚の老化スピードを抑制するはたらきが、ω-6脂肪酸は傷を治すはたらきがあるとされます。この両方を含む魚油は、皮膚のバリア機能改善のほか、紫外線による炎症や色素沈着の軽減といった効果が期待できます。※1

※注1 脂溶性ビタミン:水に溶けず、脂肪組織や肝臓に蓄積される。体の機能を正常に保つはたらきがある。摂りすぎると過剰症を起こすことがある。
※注2 水溶性ビタミン:水に溶けやすく、血液中などに溶け込んでいる。体内では酵素としてはたらく。多く摂っても尿として排出される。

美容に良い食べ物

美容に良い食べ物

それぞれの栄養素が含まれる食べ物を挙げてみます。

タンパク質

肉類、魚介類、卵、牛乳や乳製品といった動物性食品や大豆など ※12

亜鉛

赤身肉、甲殻類、うなぎ、煮干し、卵黄、チーズなど ※12

ビタミンA

レバー、うなぎ、チーズ、卵、人参など ※12

ビタミンC

果物や野菜といった植物性食品に多く、特に柑橘類やピーマン、キウイフルーツに多い ※8、12

ビタミンD

サケやサバのほか、キクラゲやキノコ、鶏卵など。また、日光を浴びると体内でも生成される ※9、12

ビタミンE

植物油のほか、ナッツ類や緑黄色野菜に多く含まれる ※13

ポリフェノール

果物や野菜、お茶やコーヒー、ワイン、チョコレートなど ※1

コラーゲン

ゼラチン、鶏の手羽や皮、牛すじ、ふかヒレなど。ビタミンCやAのはたらきにより、体内でも再合成される ※10

コエンザイムQ10

イワシ、牛・豚・鶏の肉など ※14

必須脂肪酸

オリーブオイルや亜麻仁油、ナッツ、アボカド、サケや貝類、魚油など ※1

美容に効果のある栄養素は動物性の食品、植物性の食品のいずれにも含まれていますが、一度食べれば効果が持続するというものではありません。これらの栄養素を、毎日の食事に取り入れていくことが大切です。

ただし、実際の調理における注意点もあります。例えば、脂溶性ビタミンを含む食品は、脂質と一緒に摂ると吸収されやすくなります。水溶性ビタミンは茹でる・煮るという調理をすると周りの水分にビタミンが溶け出すので、スープとして調理して残さず食べるとしっかりと摂ることができます。

また、ポリフェノールは加熱に弱いため、電子レンジでの加熱や揚げるなどの調理をすると、大きく減ってしまうこともあります。※1

さらに、肉・魚・野菜・果物には旬があり、旬の時期には特に栄養価が高い傾向があるようです。例えば、ほうれん草は1年中店頭に並んでいますが、その旬は冬です。ほうれん草に含まれるビタミンCを100g当たりで比較したところ、9月は17mgだったのに対し、12月には84mgと、約5倍も多かったといいます。旬の時期に食べることでより豊富な栄養価を摂れることがわかります。※15

食材の栄養素をまとめた『日本食品標準成分表』には、全国の食材の平均値が掲載されています。一年を通じていろいろな産地の食材を摂ると、その平均値が日本食品標準成分表の数値に近づいていくことになります。※16

カロリーを考えつつバランスの良い食事が重要

美容という観点で食事を考えるのであれば、肉・魚に偏った食事ではビタミンやミネラルが不足しがちになりますし、野菜・果物だけではタンパク質やコラーゲン、必須脂肪酸を十分に摂ることは難しいでしょう。どれかひとつの栄養素に偏るのではなく、さまざまな食材を使ったバランスの良い食事が、美容効果を高めることになります。また、食事全体のカロリーも、美容や健康には必要な考え方です。

厚生労働省と農林水産省が共同で策定した「食事バランスガイド」は、1日の食事内容を考えるきっかけになるかもしれません。全体のカロリーを考えながら、主食・主菜・副菜をバランス良く食べ、適度な運動をすることで、美容効果は高まります。※17、18

不足しがちな栄養素はサプリメントから摂取も

サプリメントから摂取

そうは言っても、食事から摂取した栄養素による美容効果は、すぐに現れるものではありません。一つひとつの栄養素のはたらきはわかってきていますが、食材の採れる時期によっては期待するほどの栄養素が含まれていないこともありますし、調理法によっても栄養価は変わってきます。

美容効果を高めたいのであれば、不足しがちな栄養素はサプリメントで補うという方法もあります。例えば、アンチエイジング効果があるとされるNMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)は、すべての細胞に含まれている成分です。血液や尿などの体液にも存在していますが、加齢とともにその量は減っていきます。近年の研究により、NMNは皮膚をはじめとするさまざまな臓器でミトコンドリアのエネルギー産生を助けるはたらきをすることが見出され、体全体の老化スピードをゆるやかにする効果が期待できることがわかってきました。※19

現在は、さまざまな栄養素のサプリメントがあります。ビタミン類やミネラルを補うだけではなく、加齢により減少することがわかっている成分をサプリメントで補うことも、若々しい肌の維持につながっていくと考えられます。

サプリメントの選び方について詳しく知りたい場合は、こちらの記事をご覧ください。

関連記事:サプリメントの選び方は?健康食品との違いや摂取するときのポイント、薬との併用についても解説

美容やアンチエイジングのためにはバランスの良い食事を

「アンチエイジング」とは抗老化を指し、老化のスピードを遅らせ、若々しく健康な体を維持することです。今回は「美容」という観点から栄養素の特徴やそれを多く含む食材についてお伝えしましたが、美容効果がある栄養素は、同時に体全体の若々しさを維持する効果も期待できます。いつもの食事を少しだけ見直し、良い栄養素をバランスよく食べ続けることが、美容やアンチエイジングにつながっていくのです。

参考資料

※1 Sonal Muzumdar, Katalin Ferenczi. (2021) Nutrition and youthful skin. Clinics in Dermatology. 39(5). 796-808.
※2 厚生労働省 e-ヘルスネット. 活性酸素と酸化ストレス
※3 厚生労働省 e-ヘルスネット. 抗酸化物質
※4 Keigo Fujita, et al. (2023) Intracellular Mg2+ protects mitochondria from oxidative stress in human keratinocytes. Communications Biology. 868 (6)
※5 厚生労働省 『日本人の食事摂取基準(2020年版)』 「日本人の食事摂取基準」策定検討会報告書
※6 eJIM 厚生労働省『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』 海外の情報 ビタミンA
※7 厚生労働省 e-ヘルスネット. ビタミン
※8 eJIM 厚生労働省『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』 海外の情報 ビタミンC
※9 eJIM 厚生労働省『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』 海外の情報 ビタミンD
※10 厚生労働省 e-ヘルスネット. コラーゲン
※11 日本医師会・日本歯科医師会・日本薬剤師会総監修. (2022) 健康食品・サプリ[成分]のすべて<第7版> ナチュラルメディシン・データベース日本対応版<書籍版>. 同文書院
※12 厚生労働省. 働く女性の心とからだの応援サイト. 健康と美を食べるもので叶える!~ 肌や髪、爪も美しく ~
※13 eJIM 厚生労働省『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』 海外の情報 ビタミンE
※14 菅野直之. (2017) ミニレビュー コエンザイムQ10. 日本歯周病学会会誌. 59(2)
※15 厚生労働省 e-ヘルスネット. 旬を取り入れた食生活(秋・冬)
※16 文部科学省. 科学技術・学術政策局政策課資源室. 日本食品標準成分表に関するQ&A
※17 厚生労働省 e-ヘルスネット. 食事バランスガイド(基本編)
※18 厚生労働省 働く女性のためのヘルスケアブック キレイになるための食生活
※19 Harshani Nadeeshani, et al. (2021) Nicotinamide mononucleotide (NMN) as an anti-aging health product – Promises and safety concerns. J Adv Res. 2022(37). 267–278.

執筆

看護師

岡部 美由紀

 

埼玉県内総合病院手術室(6年)、眼科クリニック(半年)勤務、IT関連企業(10年)勤務、都内総合病院手術室(1年半)、千葉県内眼科クリニック(1年)勤務。2011年よりヘルスケアライターとして活動。 現在は、一般向け疾患啓発サイト、医療従事者向け情報サイト等での執筆、 医療従事者への取材、記事作成などを行う。一般向けおよび医療従事者向け書籍の執筆・編集協力:看護の現場ですぐに役立つICU看護のキホン (ナースのためのスキルアップノート)、看護の現場ですぐに役立つ 人工呼吸ケアのキホン (ナースのためのスキルアップノート)、看護の現場ですぐに役立つ ドレーン管理のキホン (ナースのためのスキルアップノート)他

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