普段から手足が冷えてつらい、外気温に関係なく夏も冬も体が温まらなくてつらい……こんな症状に悩む方も多いのではないでしょうか。特に冬は、ずっと手足が冷たい、温めてもすぐに冷たくなるなど、冷え性が一段とつらくなる季節です。この記事では、冷え性の症状や原因、そして冷え性を改善する方法としてサウナの効果や具体的な入り方をご紹介します。
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冷え性とは
冷え性とは、体全体や手足など体の一部が冷たくてつらいと感じる状態のことをいいます。気温としてはさほど低くなく、寒さを感じないときにも症状が現れます。例えば、ふとんの中でも足先が冷たいために眠れないとか、暖かい部屋にいるのに手足が冷たいなども冷え性にあたります。低体温とは異なり、医学的には病気ではないとされていますが、冷えが原因となりさまざまな症状が引き起こされることがあります。※1、2
冷え性が引き起こす不調として、次のようなものがあります。※1、2、3
- 頭痛、腰痛、肩こり、腹痛、下痢、便秘、倦怠感などの身体症状
- くすみ、かさつき、むくみ、たるみ、クマ、シミなど、肌トラブルや美容面の症状
- やる気低下、イライラ、抑うつ、不眠などの精神症状
- 免疫力の低下
- 女性の場合、月経不順、無月経、不妊症などの症状
医学的には病気ではないとしても、つらい症状を我慢せず、早めに冷え性を改善するのが望ましいといえます。
冷え性の原因
冷え性の原因となる疾患には、膠原病や貧血、低血圧、甲状腺機能低下症などがあるといわれています。しかし、検査などを行っても原因といえる疾患が見つからないことも少なくありません。※3
私たちは、内臓がある体の中心部の温度を一定に保つため、次のように体温を調節しています。※2
つまり、これらの仕組みが何らかの理由でうまく機能しなくなっているのが冷え性です。※2
体温調節の仕組みが機能しなくなってしまう原因として、次のようなことが挙げられます。※2、3
- 衣類で体が締め付けられるなどの理由で血流が悪くなったり、温度変化に弱くなったりして、寒さを感じる神経のはたらきが低下している
- 夜更かしや朝食抜きなどの生活リズムの乱れ、ストレスなどによって、自律神経のはたらきが低下している
- 貧血や低血圧などによって血行が悪くなっている
- 性差や運動不足などによって筋肉量が少なく、熱を生み出す量が少ない(女性は男性に比べて筋肉量が少なく平熱も低いため、冷え性は女性に多い)
- 疾患によるもの
また、漢方医学の考え方によると、30歳前後を境に、体の新陳代謝が活発な「陽」という状態から新陳代謝が低下する「陰」という状態に向かうとされています。加齢に伴い、体が寒さに弱くなると考えられています。※3
冷え性を改善するためのポイント
冷え性を改善するためには、前述の原因に注意し、生活習慣を見直すことが重要です。体を冷やさないようにすること、体の内側から温めること、運動などを通して血行を促すことなどにより、体温調節のはたらきを整えましょう。
冷え性を改善するためのポイントをいくつか挙げます。※1
- 三食きちんと摂る。特に、朝食後に体温が上昇するため朝食は抜かない
- 体を温める食品や、香味・調味料を使用する、冷たい飲食や体を冷やす食品はなるべく控える
- 首元を温める服装や、調節しやすい重ね着、吸湿性の良い素材など、体を冷やさない服装を心がける
- 血行を妨げないよう、体を締め付けない服装にする
- 継続的な軽い運動を行う(ウォーキング、ヨガ、ストレッチなど)
- ストレスをためない生活を心がける
- 入浴はシャワーで済ませず湯船に浸かる
- しっかり睡眠をとる
体を温め、冷え性にも効果的とされる食材のひとつに、生姜が挙げられます。
冷え性と生姜の関係性について詳しく知りたい場合は、こちらの記事をご覧ください。
関連記事:冷え性には生姜が効果的!身近な食材「生姜」の魅力とおすすめレシピ
サウナによる冷え性の改善
前述の他に冷え性を改善する方法として、サウナが挙げられます。サウナには自律神経を整える効果が期待でき、冷え性の改善にも良い効果をもたらします。
自律神経と冷え性の関係
冷え性を改善するためには、体を冷やさず、体の内側から温め、血行を促すことで、体温調節のはたらきを整えましょう。暑いときには皮膚の血流を増やし、汗をかくことで体温を下げます。また、寒いときには皮膚の血流量を下げて熱の放散を抑制し、筋肉を震わせて熱を生み出したりします。血管腔を拡げたり縮めたりして血行を制御するはたらきは、自律神経が担っています。そのため、自律神経のはたらきを高めることは、冷え性の改善につながると考えられます。※4
自律神経には、相反するはたらきをする交感神経と副交感神経があります。心や体を興奮状態にするのが交感神経、リラックス状態にするのが副交感神経で、それぞれがバランスを取りながら自律神経をコントロールしています。そもそも自律神経は、私たちの生命維持のために機能している仕組みです。そのため、強い刺激を与えることで「今、生命の危機が起こっている」という状況を作りだし、その機能を鍛えることができます。
サウナが自律神経にもたらす効果
自律神経を鍛えるためには、サウナがおすすめです。サウナにはいくつかの効果が期待できます。
サウナに入ると血行が良くなりそうなことは想像しやすいですが、皮膚表面と体の中心部では血液量が異なるところがポイントです。また、サウナ室、水風呂、外気浴とシーンによっても異なります。これが冷え性改善のカギともいえます。
サウナ室では、熱を放出させるために皮膚表面での血流が増えます。反対に、体の中心部では血流が減ります。これは、血流が皮膚表面に集中しているため心臓に戻る血液量が減っているからです。次に水風呂では、熱を閉じ込めようとして皮膚表面の血流は低下します。体の中心部では、心臓に戻る血液が多くなり、送り出す血液も多くなります。最後に外気浴をすることで、平常の血行に戻るという流れです。※5
続いて、サウナ室・水風呂・外気浴における自律神経のはたらきをみてみましょう。
交感神経は強い刺激で活性化します。サウナ室でも水風呂でも交感神経が優位となり、外気浴では低下します。副交感神経は、サウナ室に入るタイミングでは温かさによるリラックスのため少し優位となりますが、熱くなってくると低下し、水風呂でも下がります。その後、外気浴で再び副交感神経が優位になるという流れです。このように、サウナ室と水風呂という強い刺激を交互に与えることで、自律神経を鍛えることができるのです。※5
また、このサウナ室・水風呂・外気浴のサイクルの繰り返しにより、「ととのう」という心身のコンディションが良くなった状態が得られることがあります。「ととのう」とは、医学的には「体が興奮状態で出るアドレナリンが血中に残る中、自律神経はリラックスした副交感神経優位の状態」を指すと考えられています。※6
自律神経の機能を高めることで、交感神経と副交感神経のスイッチ切り替えを素早く行うことができるようになり、結果として冷え性の改善になるというわけです。
サウナのさまざまな効果
サウナには、自律神経の機能向上や冷え性の改善の他にも、さまざまな効果が認められています。※5
脳疲労が取れる
脳回路のうち消費エネルギーが大きい「DMN(デフォルト・モード・ネットワーク)」の消費量を減らすことができるため、脳の疲労が回復する
集中と決断
α波の周波数の振れ幅が適切な範囲になるため。ワーキングメモリも向上する
ひらめき
リラックス状態では減少するはずのβ波が感覚をコントロールする脳領域に増えるため、ひらめきやすい状態になる
メンタルの安定
自律神経のはたらきが鍛えられるため、メンタルが、安定する
睡眠コントロール
深部体温と末梢体温の差が小さくなることで眠りやすくなり、入眠からすぐに深くて長い睡眠を得られる
眠気コントロール
意識レベル低下で増えるδ波が低下するため覚醒できる
食後や日中の眠気からの解放
眠気の原因のひとつと考えられるインスリン感受性の低下に対し、感受性を上げるHSP70が分泌されるため眠気から解放される
五感が敏感に
感覚をコントロールする脳野が活性化するため感覚が研ぎ澄まされる
肩こり、腰痛、目の疲れの緩和、予防
温熱効果による筋肉が和らぎ、血流が増えて疲労回復するほか、炎症や活性酸素が減る
美容
血行促進による新陳代謝の活発化のほか、熱刺激によってHSP70が分泌され、細胞修復による美肌効果も期待される。また、甲状腺ホルモン増加で代謝が上がり、やせ体質や脂肪燃焼効果、大量発汗によるむくみ取り効果なども期待される
老化抑制効果
老化の原因のひとつに、タンパク質恒常性の崩壊が挙げられる。サウナの温浴刺激によって、タンパク質の恒常性を司るHSP(ヒートショックプロテイン)の産生促進が期待される
サウナの老化抑制効果について詳しく知りたい場合は、こちらの記事をご覧ください。
関連記事:サウナがもたらす老化抑制の可能性とHallmarks of Aging
冷え性改善のためのサウナの入り方
冷え性を改善するためにサウナに入る場合、意識しておきたいのが、冷え性のタイプです。自律神経のバランスの視点から、冷え性は次の2つのタイプに分けることができます。サウナは、平常時に優位にはたらいている神経とは反対の神経を優位にするので、冷え症を解消するためには自分のタイプを知り、適切な入り方をする必要があります。※7
手足が冷える「末端冷え」タイプ
交感神経が優位の場合は、手足が冷えやすい傾向にあります。血管の収縮により体の先端部分(末梢)まで血液が流れにくくなっているので、手足などに強く冷えを感じる冷え性です。このタイプの冷え性には、副交感神経を優位にするためのリラックスしながら入れるマイルドサウナがおすすめです。比較的低温のサウナ室からスタートし、水風呂には入らず、外気浴へ進みます。※7
内臓が冷えて全身が寒いと感じる「全身・内臓冷え」タイプ
副交感神経が優位の場合は、内臓や全身が冷えやすい傾向にあります。血管が拡張しているため血液の流れが豊富になりますが、体温が留まらず全身に冷えを感じる冷え性です。このタイプの冷え性には、交換神経を優位に導く、刺激強めのハードサウナがおすすめです。高温のサウナ室からスタートし、水風呂に入ってから、外気浴へと進みます。※7
この方法では、「サウナ-水風呂-外気浴」の流れを1セットとし、これを3~4セット繰り返すとより効果的とされています。ただし、初心者は3セットまでにしましょう。急激な自律神経の機能上昇に追い付かず逆効果になるためです。※5
また、これら3つの順番は守り、これ以外の行動を加えないことも重要です。セット間に組み込むのは構いません。最終セットでは、水風呂の時間を10秒程度にし、外気浴の代わりに水シャワーで皮膚表面を冷やし毛穴を締めることで、しばらくはポカポカと温かさを感じられます。水分が大量に失われるので、セット間にしっかりと水分補給することも大切です。※5
慢性的な冷え性の解消のためにもサウナを効果的に利用しよう
冷え性の症状は冬だけではなく、夏にも感じる人もいるかもしれません。慢性的な冷え性は、さまざまな体の不調にもつながります。まずは自分の冷え性のタイプを知り、サウナを効果的に利用することで、つらい冷え性を改善していきましょう。
参考資料
※1 千葉県医師会. 健康トピックス. 女性に多い「冷え性」
※2 公益財団法人三重県健康管理事業センター. 健康一口メモ~冷え性のしくみと予防~
※3 日本医師会. 健康ぷらざバックナンバー【2019年】. 冷えは万病のもと-からだを冷やさないひと工夫-【健康ぷらざNo.525】
※4 新藤和雅. (2023). 冷え性と自律神経. 自律神経. 60(2). 71-75.
※5 加藤容崇. (2020) 医者が教えるサウナの教科書 ビジネスエリートはなぜ脳と体をサウナでととのえるのか?. ダイヤモンド社.
※6 サウナの効能、専門家が解説 「ととのう」状態とは? 2022年5月6日 日経新聞
※7 早坂信哉 (監修). (2023). 名医がやっている 正しいサウナの入り方. 宝島社.