みなさんはサプリメントにどのようなイメージをお持ちでしょうか。もう少し健康になりたい、食事では不足しがちな栄養素を補充したいなどの理由で、サプリメントに惹かれることもあるでしょう。

しかしそのサプリメント、本当に安全なのでしょうか。今回は、サプリメントの選び方について、健康食品との違いや摂取するときのポイント、薬との併用についてご紹介します。

サプリメントとは

「サプリメント」と混同しそうなものとして「健康食品」があります。健康食品については法律上の定義はありませんが、消費者庁によると、健康食品とは「健康に良いことをうたった食品全般」を指します。※1

広義にはサプリメントも健康食品の一種であり、特定の成分を濃縮して錠剤・カプセル状・顆粒状などに加工したものを指すことが多いです。ただし、医薬品・医薬部外品といったお薬とは異なり、あくまでも健康の維持・増進を目的とした健康食品の一種と考えるとよいでしょう。※2

健康食品の種類

現在、日本で販売されている健康食品には、いくつかの種類があります。※2、3、4、5、6、7

健康食品の種類
引用:厚生労働省 健康食品の正しい利用法

分類 名称 特徴
いわゆる「健康食品」 栄養補助食品 2000年頃までは、栄養成分の補給や特別な保健の用途を満たすものとして販売されていたが、2004年に健康食品の制度の見直しが行われて以降は、国の制度や定義としてこの名称は使用されていない。
健康補助食品 栄養成分の補給や特別の保健の用途に適するもの、あるいはそのほかの健康の保持・増進や健康管理目的のために摂取する食品。
健栄養調整食品など 特に表示の許可・認証・届出等が必要な名称ではないが、2003年に新設された健康増進法の虚偽誇大表示の禁止規定等により、使用できないものがある。
サプリメント いわゆる健康食品のうち、特定成分が濃縮された錠剤・カプセル状のものが該当するが、スナック菓子や飲料にも「サプリメント」の名称が使われることがある。ただし、ビタミンやミネラル、脂肪酸など栄養機能食品の基準を満たしているものは、栄養機能食品(後述)として食品のもつ効果を表示できる。
国が制度を創設して表示を許可しているもの 特定保健用食品(トクホ)
※マークあり
健康の維持増進に役立つことが科学的根拠に基づいて認められ、消費者庁長官により「特定の保健用に適する旨を表示してよい」と許可された食品。「特定保健用食品」と「条件付き特定保健用食品」があり、有効性と安全性についての審査を経る必要がある。
機能性表示食品
※マークなし
事業者の責任において、科学的根拠に基づいた機能性を表示した食品。販売前に安全性および機能性の根拠に関する情報などが消費者庁長官へ届け出られたもの。ただし、特定保健用食品とは異なり、消費者庁長官の個別の許可を受けたものではない。
栄養機能食品
※マークなし
一日に必要な栄養成分(ビタミン、ミネラルなど)が不足しがちな場合、その補給・補完のために利用できる食品。13種類のビタミン、6種類のミネラル、1種類の脂肪酸の含有量が国の基準を満たしていることが条件。

「特定保健用食品(通称トクホ)」「機能性表示食品」「栄養機能食品」は、含有される成分や有効性・安全性等について国から認可された場合のみ使用できる名称です。※2

いわゆる「健康食品」は、国が保健効果や健康効果に対する表示を許可していないため、効果や機能に関する表示はできません。また、医薬品・医薬部外品としての許可がないものはすべて「食品」という扱いになります。※2

サプリメントの摂取状況

厚生労働省が毎年行っている「国民健康・栄養調査」からは、健康食品の摂取状況や摂取の目的などがわかります。2019年の調査によると、20歳以上の男女5,701人に「サプリメントのような健康食品を食べたり、飲んだりしているか」と聞いたところ、34.4%の人が「はい」と回答しています。ただし年齢により多少のバラつきがあり、60歳代(37.7%)がもっとも多く、次いで70歳以上(37.0%)が多くなっています。それ以外の年齢層では、年齢が若くなるほど「はい」と回答した人は減り、20歳代(24.4%)がもっとも少ないという結果になりました。性別では、すべての年代で男性よりも女性の方が「はい」と回答した方が多くなりました。※8

サプリメントや健康食品を摂取する目的については、総数では「健康の保持・増進(71.3%)」と回答した人がもっとも多く、続いて「ビタミンの補充(31.4%)」が多くなっています。ただし、20歳代は「ビタミンの補充(58.7%)」を目的としている人がもっとも多く、20歳代の男性に限っては、「タンパク質の補充(50.0%)」を目的としている人がもっとも多いという結果でした。30歳代以上になると、男女ともに「健康の保持・増進」を目的としている人が多くなります。50歳代以上では男女ともに70%を超え、特に多かったのは60歳代男性で、実に80%以上の人が「健康の保持・増進のため」にサプリメントや健康食品を摂取していると回答しました。※9

サプリメントの効果

サプリメントの効果

サプリメントを摂取することで、実際に健康に良い効果が得られるのでしょうか? 有効性や安全性などの側面から、サプリメントの効果について考えてみましょう。

サプリメントの有効性・科学的根拠

食事から特定の栄養成分が摂れていない場合には、サプリメントが補助的な役割を果たすことがあります。例えば、魚の油から採れるオメガ3脂肪酸としてはDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)が含まれており、これらを含むサプリメントとしては「一部の心疾患がある人に役立つ」可能性が期待されています。※10

しかしながらその有効性については、科学的根拠に基づいているとは言い難いものも含まれています。本来であれば、試験管内実験(in vitro実験)や動物実験(in vivo実験)だけではなく人体への有効性を測る実験や研究(臨床試験)が必要ですが、実際にはこれを行わなくても販売できてしまうためです。

サプリメントの安全性・リスク・副作用

多くのサプリメントには、体に何かしらの強い影響を与える可能性がある成分が含まれていることがあります。また、「自然由来の成分は安全で、化学合成された成分は危険」とか、「食事に含まれているのと同じ成分だから、たくさん摂取しても問題ない」といった、誤った解釈をされることもあります。※11

さらに、複数の有効とされる成分が1つの製品になっていることもありますが、これに対する科学的根拠を判断するのは困難です。特定の成分だけを多く摂取することになり、摂取する人の状況によっては何らかの副作用が起こる可能性もあります。※10、11

そのため、人体への安全性を確認する臨床試験を行っていることが、サプリメントを選択する際の重要な判断ポイントのひとつとなります。

サプリメントの選び方

サプリメントの選び方

まずは、そのサプリメントの成分表示を確認してみましょう。
例えば、「センナ茶」はアフリカ原産で黄色い花をつけるセンナを使用した植物由来のお茶ですが、果実・小葉・葉の柄と軸は医薬品として使用されており、茎の部分はサプリメントとして使用できます。※12
こうしたものが成分表示のなかに記載されているか否かで、その製品への信頼度を見極めるのもよいでしょう。

サプリメントや健康食品の場合、原材料の表示があっても「含有量」の表示がないものがあります。本来、これらの有効性や安全性を判断するためには含有量の情報が必須ですが、それがない場合は有効性や安全性を確認することができません。含有量の表示をもとに、人体への影響があるほど多く含まれているのか、そもそも有効性を発揮するほどの量が含まれていないのかを判断するのがよいでしょう。※3

また、サプリメントや健康食品を販売するために製造業者や販売業者は広告や宣伝をします。しかし、それらはあくまでも「販売するための情報」です。広告によくある体験談や口コミは、あくまでも個人の感想でしかないので、これだけで判断するのは危険です。※13

さらに、サプリメントや健康食品は、健康な人が摂取することを目的として作られています。病気の人や高齢者、妊産婦や乳児・小児は、そもそも対象ではありません。また、アレルギー体質の人にとっては、サプリメントに含まれるどの成分がアレルギーを引き起こすかわかりません。こういった点にも注意しながら、有効性や安全性を確認した上でサプリメントを選ぶようにしましょう。※14

サプリメントを摂取するときのポイント

サプリメントを摂取するときに注意したいのは、摂取量です。それぞれのサプリメントには1日当たりの摂取量や摂取方法などの注意書きがあるので、これをよく読み、必ず守るようにしましょう。

期待通りの効果が見られない場合でも、似たような効果を謳う別のサプリメントを複数摂取するのは危険です。量を多くすれば健康に良い影響があるわけではありません。むしろ、特定成分を過剰摂取してしまう可能性があります。例えば、ビタミンDなどの特定成分のサプリメントの場合、サプリメントを摂取するだけで1日の耐用上限量を超えてしまうこともあります。※15

また、健康維持・増進など多くの効果を期待するあまり、多種類のサプリメントを同時に摂取するのも大変危険です。何種類以上だと危険といった基準はありませんが、サプリメントには必ずしも1つの成分だけが含まれているわけではありません。特定成分の過剰摂取になってしまう可能性もありますし、サプリメント同士の飲み合わせが良くない場合もあります。相互作用として効き目が強すぎたり、逆に弱くなったりすることもあるので、本当に必要なものだけを摂取するようにしましょう。※3

注意事項:薬との併用

医師による処方にてお薬を飲んでいる人は特に、サプリメントとの相互作用に十分注意する必要があります。いくつかの例を挙げます。※16

サプリメントの成分 注意したいお薬(一部)
ビタミンC 卵胞ホルモン剤(エストロゲン)、ワルファリンカリウム、利尿薬
ビタミンD 強心薬、活性型ビタミンD製剤、サイアザイド系利尿薬
ビフィズス菌 抗菌薬(抗生物質)
DHA、EPA 降圧薬、糖尿病治療薬
センナ 強心薬(ジゴキシン)、利尿薬、卵胞ホルモン剤(エストロゲン)
ショウガ(ジンジャー) ニフェジピン、ワルファリン、抗凝固薬/抗血小板薬
コンニャクマンナン 経口薬全般、糖尿病治療薬
グルコサミン ワルファリンカリウム
オリーブ 降圧薬、糖尿病治療薬
トウガラシ 降圧薬、糖尿病治療薬、アスピリン、ワルファリンカリウム

それぞれ、注意したいお薬はこれだけではありませんし、注意すべきサプリメントの成分もたくさんあります。例えば、気分の安定や睡眠導入などを謳った「セント・ジョーンズ・ワート」というサプリメントは、強心剤、鎮鎮静薬、鎮痛薬、抗うつ薬、抗凝固薬、経口避妊薬など、さまざまなお薬との相互作用に注意が必要です。※17

NMNサプリメントの選び方

NMNサプリメント

近年、研究が進んでいる成分に、「NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)」があります。
NMNはビタミンB3から生成される成分であり、体内の代謝の源であるNAD+の前駆体となります。2016年に、ワシントン大学の今井教授らが「NMNの長期投与はマウスの加齢に伴う生理学的機能低下を軽減する」とした研究成果(論文)を公表したことで、NMNは新しい「抗老化成分」として世界中から注目が集まりました。※18

抗老化とNMNについて詳しく知りたい場合は、こちらの記事をご覧ください。

関連記事:老化を止めることができるのか?Aging HallmarksとNMNの関連性

そして現在、NMNを含有するサプリメントは容易に手に入るようになりました。しかし、人類の夢ともいえる抗老化を謳っているからこそ、慎重に選ぶ必要があります。NMNサプリメントを選ぶ際のポイントは、大きく3つあります。

純国産/トレーサビリティ

どの原料を使って生産されたのか、最終製品までたどれるように記録されていること。特に、NMN原料を作る工程を把握するために、日本で生産されたNMN原料を用いて作られたNMNサプリメントであれば安心です。

有効性や安全性に関する臨床試験の有無

人において、有効性や安全性を検証する臨床試験に用いられたNMNであること。

ブランド

原料の品質規格基準を設け、実績や製造工程など信頼できる企業を厳選していること。さらには、どういったことを目指した企業が販売しているのかわかることも大事です。

以下の動画では、NMNに期待される効果と、NMNサプリメントの選び方における「3つのポイント」をさらに詳しくご紹介しています。

サプリメントを活用するときは安全性や有効性に注意しよう

サプリメントや健康食品はお薬ではありませんが、その分比較的手頃な金額で取り入れられます。口コミをはじめとする購買意欲を刺激するような広告を目にすることも多いですが、よく見える情報を鵜呑みにして安易に摂取すると危険な場合もあります。特に、医師から処方されたお薬を服用している方は、医師と相談の上、十分に注意して選択してください。

参考資料

※1 消費者庁 健康食品
※2 厚生労働省 健康食品による健康被害の未然防止と拡大防止に向けて
※3 厚生労働省 健康食品の正しい利用法
※4 消費者庁 栄養機能食品について
※5 東京都保健医療局 保健機能食品制度及び特別用途食品制度
※6 東京都保健医療局 機能性表示食品(食品表示基準第3条第2項、第18条第2項)
※7 東京都保健医療局 栄養機能食品(食品表示基準第7条、第21条)
※8 厚生労働省 令和元年 国民健康・栄養調査結果 65健康食品の摂取状況
※9 厚生労働省 令和元年 国民健康・栄養調査結果 66健康食品を摂取している目的
※10 eJIM 厚生労働省『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』 海外の情報 サプリメントについて知っておくべきこと
※11 梅垣敬三.(2017) サプリメントの利用において留意すべき事項. ビタミン. 91-1
※12 内山奈穗子ほか. (2018)センナ茎およびハネセンナ含有健康食品におけるSennosideの定量分析
※13 東京都保健医療局 磨け!選択眼 サプリは「魔法のクスリ」じゃない。
※14 日本医師会 「健康食品」・サプリメントについて
※15 消費者庁 未成年者におけるビタミンDを含む加工食品の摂取状況の調査結果等について サプリメント形状の食品では栄養成分の摂り過ぎに注意しましょう
※16 日本医師会総監修 健康食品・サプリ[成分]のすべて ナチュラルメディシン・データ・ベース 日本語対応版<第6版>
※17 eJIM 厚生労働省『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』 海外の情報セントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ)
※18 Kathryn F. Mills, et al. (2016) Long-Term Administration of Nicotinamide Mononucleotide Mitigates Age-Associated Physiological Decline in Mice. Cell Metabolism. 24(6), 795-806.

執筆

看護師

岡部 美由紀

 

埼玉県内総合病院手術室(6年)、眼科クリニック(半年)勤務、IT関連企業(10年)勤務、都内総合病院手術室(1年半)、千葉県内眼科クリニック(1年)勤務。2011年よりヘルスケアライターとして活動。 現在は、一般向け疾患啓発サイト、医療従事者向け情報サイト等での執筆、 医療従事者への取材、記事作成などを行う。一般向けおよび医療従事者向け書籍の執筆・編集協力:看護の現場ですぐに役立つICU看護のキホン (ナースのためのスキルアップノート)、看護の現場ですぐに役立つ 人工呼吸ケアのキホン (ナースのためのスキルアップノート)、看護の現場ですぐに役立つ ドレーン管理のキホン (ナースのためのスキルアップノート)他

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