お、コハルちゃん、急にどうしたの?
前に「よろこびのうた」ピアノで弾いたよ。ベートーヴェン作曲。大昔の人なんでしょ?
マミィの作る音楽もクラシックになるの?
え!笑。頑張ります!
現在多くのポップスやジャズ、ロックに至る音楽ジャンル全般にいわゆる「クラシック」と呼ばれる音楽が多く存在しています。定義としては、後世に影響を残しているかどうか、ではないでしょうか。
西洋で数100年前に作られたもののみを「クラシック」と呼ぶわけではないようです。
が、一般的にクラシック、という言葉は音楽の世界では西洋でのバロック、古典、ロマン派、20世紀までの現代音楽を指していることが多いです。
そんな西洋のクラシック音楽が生まれた背景や、作曲家たちを私なりの視点でご紹介できたらと思います。
体系的に紹介しているサイトや書籍は多数ありますが、ここでは、それらの音楽が皆さんにどんな影響を与えることができるだろう、という点でその時代の音楽に興味を持っていただけるようなものを目指します。
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西洋音楽の始まりって?
始まりか~、バッハは有名だし、割とよく聞くけど、最初のクラシックの作曲家って言われる人は誰なんだろう。
そうですね、バッハ以前、というとピアノで弾く方もなかなかいないですね。西洋音楽の始まりのお話から入りましょう!
西洋音楽の原点、それはなんといっても宗教音楽ではないでしょうか。
祈る時の音楽。今もキリスト教であれば讃美歌やゴスペルといった祈りと共に歌う文化があります。
声のみ、伴奏はなくリズムも不確かな感じがします。
なんだか気持ちがゆったりする感じがします!
そうなんですよ。すごく厳かで豊かな響きですよね。
作曲者は誰なんですか?
実は残念ながら作曲者は不明なんです。
保存する手段が少ない時代だからかな。
そうなんです。口承で伝わったと言われています。かろうじて楽譜が残っているくらいなんです。
バロックの時代(1600~1750)
さて、続いてやってくるバロック時代、変わらず宗教と音楽が深く関わりを持っている時代です。
この時代はどのような作曲家がいたでしょう。
「四季」で有名なヴィヴァルディ、ヘンデル、そしてバッハが有名ですね。
バッハはまさにバロック時代の頂点を極めた作曲家といえます。
そんなバッハについて取り上げてみましょう。
バッハという作曲家は大勢いる!
他のバッハさんは、中バッハや小バッハっていうの?
ううん、笑
すごい音楽家ももちろんいたけど、あんまり有名な人はいないね。
なんたって大バッハは1000曲以上の楽曲を残したからね。音楽の父って言われてたって。
彼の有名な作品「平均律クラヴィーア曲集」全48曲!は鍵盤楽器のまさにバイブルとされており、これを演奏(勉強)しなかったピアニストはゼロと言えるのではないでしょうか。
前奏曲とフーガの2つで1曲の構成となっています。
有名なのは第1番の前奏曲。グノーの歌曲「アヴェマリア」の伴奏ともなりました。
ちょうどバッハの前奏曲のあと、アヴェマリアをピアノで演奏している動画がありましたのでご紹介いたします。
シンプルで美しく、後半にドラマチックな展開があるバッハの曲に、素晴らしく切ないメロディが加わっています。
バッハ「ゴールドベルク変奏曲」
この曲は、バッハが眠れない伯爵のために作曲したという逸話が残っています。
繰り返しも入れると1時間以上の演奏時間!これはゆったりと弾けば確かに心地よい眠りにつけると思います。
この楽曲を多く世に広めたのは、カナダ人ピアニスト、グレン・グールドです。
周りの反対を押し切ってこの曲をデビューアルバムの楽曲に選びました。それが全世界を驚かす、まさにセンセーショナルなアルバムデビューとなりました。
どう言った意味で驚かれたのかを、2人のピアニストの演奏で比較してみましょう。
曲を全て聴くと大変長いのですが、冒頭のAria(3分半ほどまで)から第1変奏への移り方が特徴的です。ぜひそちらから聴いて頂けたらと思います。
アンドラーシュ・シフ
ハンガリー出身のピアニストです。
洗練されている、という言葉がピッタリです。柔らかく、とても素直な美しい演奏です。
グレン・グールド
人生で2度この曲を演奏しています。
20代の初期の演奏、50歳の後期の演奏も聴き比べてみましょう。
初期
後期
後期の演奏では、冒頭Ariaのテンポが圧倒的に遅いです。
そのあとの第一変奏曲のドキッとする音量差は、寝ている人も起こされるのでは?というほどの差を表現しています。
グールドは24歳でデビューアルバムにこの曲を収録し、さらに晩年にも同じ曲でレコーディングをしました。
みずみずしい初期の演奏に比べ、晩年は死を意識するような、重々しく重厚な演奏です。
そのテンポの取り方、解釈、全ての意味で一般的な演奏とはかけ離れています。
特に強弱の付け方は、誰も気づかなかった新たなイメージを聴く人に与えました。
私自身のグールドの思い出は、かつて中学生時代にバッハの平均律クラヴィーア曲集を弾いていた際に、ロック、ジャズが好きな兄がグレングールドの本を持っていてその名を知りました。そしてその音を聴いて、あまりにも鮮やかだったことに驚きました。
無意識に影響され、ちょっと派手な表現(ためを作る、強弱を極端につけるなど)をしたところ、当時の先生から「グールド聴いたでしょ」と注意を受けて、グールド禁止令が出るほどに、基本を知らない勉強中の身にはNGとされる弾き方でした。
先生は、きちんと基本を理解した上で、自分の解釈を持ってそういう弾き方をすることは良いと言っていましたが、
少なくとも当時の私の演奏ではただ興味本位に、遊び弾きしていると取られたようです。
グールドは奇を狙ったのではなく、純粋にバッハの解釈の扉を開けた、という意味でセンセーショナルだったのです。
その独特な弾き方や、素行の数々も全てが風変わりで謎に満ちつつ、魅力に溢れたピアニストです。
バロック期の鍵盤楽器
バロック期の楽器は、チェンバロ、クラヴィコード、パイプオルガンが主なものでした。
現在のピアノの前身であり、構造も全く違います
・クラヴィコード(弦を棒で叩く構造。家庭用。
・チェンバロ(弦を引っ掻くような構造。金属的なイメージの音色)
バッハの演奏はこれらの楽器で行われていました。
そのため、現代のピアノで演奏する場合も、ある一定のルールが要求されます。
例えば、四分音符や八分音符など、長めの音符については、可能な限り切って演奏します。
また、ペダルを使っての叙情的な表現、テンポのゆれはNGとされます。
この辺りは、学習中の時は意味をあまり感じられず、正直ストレスでした。
子供であっても、演奏をする上で、なぜそうする必要があるのか、納得のいく説明が必要と感じます。
以下の二種類の弾き方を録音してみました。
- バロック期を意識した弾き方
- ロマン派風、自由な弾き方(ペダル多用)
曲はバッハのインベンション第13番の冒頭部分です。
お聴きになって、いかがでしょうか。
「2」の方の弾き方は、もちろんそういった曲調にアレンジすることは可能ですが、
それはあくまでアレンジであり、原曲を知らない方が聴いたら、バッハとは思わないかもしれません。
ロマン派の弾き方、バロック期の弾き方、時代に合わせた解釈を無視することは、
作曲家の意図を無視する行為ともなります。
作曲家の意図を汲み取った上で、独自の解釈をして変えていけるならば良いのですが、音楽を学習していく過程で、
その時代の形式や奏法を学ぶことはとても大切です。
これは、音楽のみならず、他の学問や新しい組織に加わる時のルールではないでしょうか。
まず知ること、そのあとで改革していく過程に移ります。
前述のグレングールドも同じく、知り尽くした上での改革は、結果的にバッハの楽曲がより鮮やかに見えてくることとなり、
その楽曲をより多くの人に伝えることに成功したと言えます。
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今回は中世~バロックまでの鍵盤楽器での楽曲やピアニストについて取り上げました。
少しでも興味の扉が開いていただけたら幸いです。
🎶 今日の即興
今日は「魅惑の5秒間」というタイトルで即興ピアノです。
思い出すたびに、ときめいたり微笑んでしまったり。
みなさんが一つは持っている、幸せな瞬間をイメージしました。
<参考>
・西洋音楽史 音楽様式の遺産 ドナルド・H・ヴァン・エス 著
どうしてクラシックの音楽って大昔から残ってるんだろ