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SNSが普及し始めて、どれくらいが経つでしょうか。
私が大学生だった2000年代はmixiやGREEという紹介制のSNSが一気に普及した記憶があります。
授業のこと、アルバイトのこと、サークル活動のことなど書き込んで、友人たちとコメントのやりとりなどをしていました。
まだスマートフォンが普及する前で、パソコンで書き込みをしていたので、常に「つながっている」という感覚はありませんでした。
その後、2010年代以降は、スマートフォンの普及とともに、2008年に日本に上陸していたFacebookやTwitterのユーザーが増加していきました。

 

私がFacebookやTwitterを利用し始めたのも、ちょうど2010年頃でした。
総務省が発表した令和2年版情報通信白書によると、2012年には代表的なSNSの利用率は41.4%でしたが、2019年には69.0%と大きく上昇しています。
2019年の状況を年代別でみると、13~19歳、20~29歳、30~39歳では8割を超える人が利用しています。
また、持ち歩いて手軽に取り出せるスマートフォンでの利用になるにつれ、生活の中にも、ぐっと入り込んできたようにも思います。

 

SNSとメンタルヘルスについては、まだまだ研究数も限られており、どんどん研究が増えていっている発展段階といえます。
すでにある研究を概観すると、SNS利用について、メンタルヘルスにとってはネガティブな影響だけでなく、ソーシャルサポートが増える、ストレスコーピングのひとつになるというポジティブな側面も指摘されています。
一方で、もともとの性格特性によって、孤独感が増える場合もあれば、減る場合もあるなど、性格特性による影響の違いがあるとの指摘や、現実世界で居場所がない状態ではインターネット上で攻撃的な言動をしやすくなったり、依存的に利用するようになり、リアルな人間関係を抑制するなど、現実世界での状況が影響するとの指摘もあります。

メンタルヘルスへの影響を考えるうえでは、SNSのもつ特性を知っておくことも欠かせません。
私が注目しているのは、次のような点です。

・容易性(簡単に受信・発信できる)
・拡散性(発信したことがたくさんの人の目に触れる可能性、しかもコントロールできない)
・即時性(すぐに発信できる、広がるスピードも速い)
・匿名性(性別や年齢など社会的な手がかりがないので自由な自己表現をしやすい反面、集団や規範に同調しやすくなり秩序維持のための批判や排斥、攻撃的な言動につながる)
・非言語情報の少なさ(交流する相手の表情や声色などがわからないので、相手の状態が想像しづらい)
・承認欲求を刺激するツール特性(「いいねボタン」やフォロワー数の表示など)

 

SNSを使っていて苦しくなるとしたら、自分のペースでいられなくなることがひとつの要因なのではないかと考えています。
これまで知る由もなかった他人の生活が垣間見えて、他の人と自分を比較して気持ちが揺れ動いたり。
発信しやすさから、それほど関わりの深くない他人の言動にまで口を出したくなったり。
自分をよりよく見せようとしたり、普段の自分ならば言わないようなことを言って、本来の自分とネット上の自分とに乖離が出てきたり。

 

こういった状態を予防するには、自分の状態に気づきやすくなり、衝動的な行動をとる前に立ち止まれるようになるマインドフルネスのトレーニングもおすすめです。
(マインドフルネスについて詳しく知りたい方は『ないものではなく「ある幸せ」に目を向ける』へ)
もうひとつの指標として、「無人島に行ってもやり続けるだろうこと・やりたいこと」があるかどうかというのも大事なのではと思っています。

 

無人島なので、自分以外には誰もいません。
それをやったからと言って、いいねボタンを押してくれたり、褒めてくれる人もいません。
それでも、やり続けたいこと、やりたいことがある人生というのは、他の人や世の中の基準に振り回されるのではなく、自分が舵をきって進んでいける人生のように思います。
自分の場合は何かな?と考えてみると、あまり大きなことではないのですが、コーヒー豆を挽いて、ゆっくり時間をかけながらハンドドリップで淹れる、というのは、今と同じように毎日続けたいなと思い浮かびます。
忙しいときでも、こういったことに時間をとることで、私たちは自分のペースを取り戻せるのかもしれません。

【参考文献】
・小寺敦之(2009). 若者のコミュニケーション空間の展開:SNS『mixi』の利用と満足、および携帯メール利用との関連性, 情報通信学会, 27(2), 55-66.
・三浦麻子(2008). ネットコミュニティでの自己表現と他者との交流, 電子情報通信学雑誌, 91(2), 137-141.
・中山満子(2018). 高校生の友人関係とSNS利用に伴うネガティブ経験, 科学・技術研究, 7(2), 127-132.

執筆

博士(心理学),臨床心理士,公認心理師

関屋 裕希(せきや ゆき)

 

1985年福岡県生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、筑波大学大学院人間総合科学研究科にて博士課程を修了。東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野に就職し、研究員として、労働者から小さい子をもつ母親、ベトナムの看護師まで、幅広い対象に合わせて、ストレスマネジメントプログラムの開発と効果検討研究に携わる。 現在は「デザイン×心理学」など、心理学の可能性を模索中。ここ数年の取組みの中心は、「ネガティブ感情を味方につける」、これから数年は「自分や他者を責める以外の方法でモチベートする」に取り組みたいと考えている。 中小企業から大手企業、自治体、学会でのシンポジウムなど、これまでの講演・研修、コンサルティングの実績は、10,000名以上。著書に『感情の問題地図』(技術評論社)など。

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