「マインドフルネス」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

アメリカを中心に注目され始め、タイム誌が「マインドフル革命」というタイトルの特集記事を組んだほどです。

Googleが社員のストレスを軽減して、生産性やクリエイティビティを高めるために、社員向け研修に取り入れたことから、日本でも注目度が高まってきました。

きっかけはそれとして、マインドフルネスはビジネスパーソンのものだけではありません。

抑うつ症状や不安症状などのストレス反応を和らげる、集中力や創造力が高まるなどの効果がみられています。

 

マインドフルネスの定義は次のとおりです。

 

①今ここでの経験に

②評価や判断を加えることなく

③能動的に注意を向けること

 

これだけだと分かりづらいと思うのですが、次のような注意の向け方・体験のしかただと理解してもらえたらと思います。

 

①ふだん私たちの注意は、過去や未来へとあちこち移っています。

「あぁ、あんなこと言わなきゃよかったな」(過去)、「明日これやらなきゃ」(未来)など。

マインドフルネスでは、「今ここ」に注意をむけます。

②私たちは日々、評価や判断をしながら生活しています。

「これはいい」、「これは悪い」、「うまくいかないかもしれない」、「私のことよく思っていないかも」などなど。

マインドフルネスでは、色づけせずに、目の前で起きていることをそのまま受け止めます。

③ふとしたとき、私たちは「なんとなく」流れるままに考えたり、ぼーっとしていますが、マインドフルネスでは、自ら意識して、①や②のやり方で注意を向けます。

 普段の生活で実践できる呼吸への意識

少しは「マインドフルネス」な体験のしかたをつかんでもらえたでしょうか。

ふだんの生活に取り入れていただくには、まずは呼吸に注意を向けるトレーニングがおすすめです。

呼吸は私たちが片時も忘れずにしていることなので、呼吸に注意を向けるだけで、自然と「今ここ」に意識が向くので、これから初めて取り組むという人におすすめです。

 

1)椅子に座って、姿勢を調えます。何度か伸びをすると、楽に呼吸ができる姿勢をとれます。

2)深呼吸を繰り返して、自分の呼吸に注意を向けます。「あまりたくさん吸えないな」、「吐くときに身体の力が抜けるのが気持ちいい」など、呼吸をコントロールしようとせず、うまくできている・できていないなどの判断もせずに、ただ観察します。

3)続けていると、つい別のことに注意がそれるかもしれません。「今夜は何を食べよう…」など。注意がそれているのに気づいたら、そっと呼吸に意識を向けなおしてください。(これが「能動的」という部分です)

 

場所を選ばずに、すぐに試せるのでおすすめです。

 

このマインドフルネス、効果のメカニズムは科学的にも解説があるのですが、個人的には、「ないものよりあるものに目を向ける」ことの効果もあるのでは、と思っています。

私たちは、つい自分が持っていないものや、足りないものに目を向けて、落ち込んだり、不安になったりしてしまうことがありますが、私たちには「すでにあるもの」もたくさんあります。

マインドフルネスで、呼吸や自分の身体の感覚、感情などにフォーカスすると、「いつものとおり呼吸をしていられる」ことのしあわせを味わうことができます。

ないものよりも「ある幸せ」に。

できないことより「できること」に。

失ったものより「手元にあるもの」に。

そんな注意の向け方もマインドフルネスの効果の秘訣かもしれません。

 

【参考文献】

Gotink, R. A., Chu, P., Busschbach, J. J., Benson, H., Fricchione, G. L., & Hunink, M. M. (2015). Standardised mindfulness-based interventions in healthcare: an overview of systematic reviews and meta-analyses of RCTs. PLOS ONE, 10 (4), e0124344.

執筆

博士(心理学),臨床心理士,公認心理師

関屋 裕希(せきや ゆき)

 

1985年福岡県生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、筑波大学大学院人間総合科学研究科にて博士課程を修了。東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野に就職し、研究員として、労働者から小さい子をもつ母親、ベトナムの看護師まで、幅広い対象に合わせて、ストレスマネジメントプログラムの開発と効果検討研究に携わる。 現在は「デザイン×心理学」など、心理学の可能性を模索中。ここ数年の取組みの中心は、「ネガティブ感情を味方につける」、これから数年は「自分や他者を責める以外の方法でモチベートする」に取り組みたいと考えている。 中小企業から大手企業、自治体、学会でのシンポジウムなど、これまでの講演・研修、コンサルティングの実績は、10,000名以上。著書に『感情の問題地図』(技術評論社)など。

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