2020年9月2日に日本経済新聞社と日経BPの主催で「ヘルスSHIFT100 日本発!世界へ広げる レジリエンスな健康社会」というオンライン講演が開かれました。
帝人株式会社ヘルスケア新事業部門長の森山執行役員とヘルスケア事業統轄補佐・研究主幹、NOMON代表取締役CEOでもある山名が登壇し、次の100年へ向けた老化や健康長寿への帝人の挑戦やプロダクティブエイジングの実現のためにできることは何か?などが話されました。
今回の講演では、帝人グループが提供する価値である「3つのソリューション」のうち
「少子高齢化・健康志向ソリューション」分野の「食品」と「機能性素材」による健康寿命延伸への取り組み
についてフォーカスされています。
今回、講演内容をもとに、帝人グループの取り組みと食品と機能性素材による健康長寿への挑戦についてまとめました。
2020年9月2日開催、日本経済新聞社・日経BP主催「ヘルスSHIFT100 日本発!世界へ広げるレジリエンスな健康社会」より
Index
1918年創業から始まった帝人グループの101年目の挑戦
帝人グループの創業は1918年であり、長い歴史があります。
そして2018年に創業から100年を迎えた帝人が「次の100年に何をすべきか」を考えたとき行われた100周年プロジェクトでは、9つのプロジェクトが立ち上がました。
そこでユニークかつ先進的なプロジェクトが動き出したわけですが、そのプロジェクトのひとつに「加齢:人間は、老化と別れられるのか?」という人間の加齢・老化に関するものがあります。
人が年齢を重ねて老化していくことを当然の事として捉えていますが、実は”加齢=老化”ではなくなる未来が作り出せるのではないか。帝人グループが次の100年に向けて注力しているのは非常に興味深いことだと感じます。
老化に立ち向かえるのか?!帝人100歳の挑戦からNOMON株式会社が生まれた
「そもそも老化に立ち向かうことができるのか」そんな疑問を払拭するかのように、帝人100歳からのプロジェクトのひとつ「加齢・老化プロジェクト」では、老化を抑制する作用が期待できる「NMN(ニコチンアミド・モノヌクレチド: β-Nicotinamide Mononucleotide)」に注目しました。
そして、NMNを取り扱う会社として「NOMON株式会社」が誕生します。
NOMONは、科学的エビデンスに基づくサプリメント事業を展開しており、「100年後の人間は老化を内面からコントロールできているかもしれない」という仮説のもと、人類が立ち向かう老化という大きな問題に取り組んでいるそうです。
NMNは、今回の講演のテーマでもある「食品と機能性素材による健康長寿への挑戦」のうち「機能性素材」に該当し、いわばサプリメントのようなものです。
【世界が注目】老化抑制が期待できるビタミン
NOMON株式会社代表取締役CEO 山名 慶
NMNは食品と医薬品の間にある「ニュートラシューティカル」
「ニュートラルシューティカル」とは、食品と医薬品の間に位置付けられているもので「健康の維持に対し明確な科学的根拠を有する食品」です。NOMONはこのニュートラシューティカルに注目し、その中でもNMNに着目しました。
NMNは老化を抑制する候補物質のうちの一つで、現時点では動物実験においてポジティブな結果が出ているとの事です。
関連記事:なぜ、ニュートラシューティカルが健康寿命を長くするといわれるのか
NMNは身体に取り込まれるとNADに変わる
NMNは身体に取り込まれると酵素の働きによってNAD(ニコチンアミド・アデニンジヌクレオチド)に変換されます。そして、このNADは老化を抑えるサーチュイン(老化を抑制する機能を持つタンパク質)を活性化します。しかしNADの量は歳を取るとともに減少することが分かっています。
それなら老化を抑えるサーチュインを活性化させるために加齢と共に体内のNADを増やせばいいと思いますが、NADは直接体内には取り込めないことが分かっています。
そこで注目されたのがNMNです。NMNは身体に取り込むことでNADに変わる物質であるため、NMNを摂取することに注目が集まったわけです。
NMNには明らかな「抗老化作用」がある
NMNには老化を抑える明らかな作用があると、数々の研究からも明らかになっています。まだ人への研究結果は出ていませんが、マウスを使った実験や研究ではNMNを投与することで、以下のような老化現象の抑制効果が確認されています。
・体重増加
・加齢によるエネルギー代謝の低下
・骨密度の低下
・眼の機能低下 など
さらにNMNの摂取は糖尿病に対しても著しい効果があり、アルツハイマーや心不全、腎不全などに対する効果も期待されています。これらは現時点ではあくまでも動物実験によるものですが今後、人への効果も期待できると考えられています。
帝人グループ、NOMON株式会社のNMNに対する取り組み
老化を抑制する物質として注目されるNMNは、現在、人への臨床試験も始まっています。特に注目されているのが大阪大学医学部附属病院で行われている研究で、65歳以上の糖尿病患者の男性を対象にして行われ、NMNの身体的フレイル(健康的な状態と要介護状態の中間)への効果の有効性が検証されています。
加えてNOMONのNMNサプリメントはドーピングにはならないという認証も取得しており、NOMONではNMNを「医薬品以外の物質で人に役立つ栄養素」の一つとして位置付けて社会実装していきたいと考えています。
「NMNはもはや特別なものではなく、すべての人の老化に関わるものである」
だからこそ帝人グループの今後の挑戦として取り組む、会社としての強い意思やミッションが感じられます。
腸に注目!食品を使った健康長寿への帝人グループの挑戦
帝人 ヘルスケア新事業部門長 執行役員 森山 直彦
さて今回の講演では機能性食材であるNMN以外でも、食品から健康長寿へ挑戦する帝人グループの取り組みについても語られていました。ここでいう食品には、食物繊維が特に多く含まれる「スーパー大麦バーリーマックス」が取り上げられました。
食物繊維が圧倒的に多く含まれる「スーパー大麦」を活用する
スーパー大麦バーリーマックスは、良質な食物繊維が多く含まれる食品で、オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)が開発したスーパーフードとして知られています。その特徴はなんと言っても含まれる食物繊維量の多さです。
帝人グループではこのスーパー大麦に注目し、今やおにぎりやシリアル、パンなど様々な食品に入れて健康社会の実現に役立てようと尽力しています。
また社会により早く認知され、人々がより簡単に食物繊維が取れるような工夫として、ご飯やパンなどの主食にスーパー大麦を入れ、毎日の食事で食物繊維の取り忘れがないよう働きかけているのも帝人グループが工夫しているポイントです。
腸内フローラを整えると健康になることに注目する
では帝人の健康長寿への挑戦として、なぜ食物繊維を多く含む食品に着目したのかというと、「腸内フローラ」にあります。
腸内フローラは腸内細菌叢ともいわれ、腸内に生息する1兆個とも言われる細菌の集まりを指します。
腸内環境が良好に保たれると健康維持に繋がるという研究論文が、ここ10年来で次々と報告されています。その効果には肥満の軽減、整腸作用、免疫力を高める、肌を綺麗にする、脳機能を高めるなど人にとってもメリットが非常に多い点が特徴です。
では腸内環境を整えるには何が必要かというと、腸内細菌を増やすためのエサとなる食物繊維を多く摂取することだと言われています。帝人ではこの食物繊維に注目してスーパーフードである大麦に着目したのです。
【プロダクティブ・エイジング】老化を抑制するためにやるべきこと
講演では、NMNやスーパー大麦を利用した健康長寿を目指す帝人グループやNOMONの興味深い取り組みがレクチャーされました。
なぜ今老化に取り組むのか、その理由を明らかにする
どうして今、老化問題に取り組む必要があるのか、その答えとして講演では以下のように示されました。
①社会課題として「健康寿命の延伸」が重要になっている
②様々な研究から生き物にとって老化は必然ではないことがわかってきた
③最先端の研究から老化を抑制することが可能であることが分かってきており、人でも適応できる時期にきている
これまでの社会通念では、人は誰もが等しく年老いていき、老化は誰も避けられない現象して捉えられています。
しかしその老化が抑えられると人々が知ったら、どう行動するでしょうか。おそらく誰もが老化を遅らせて、歳をとっても健康でいられる期間を伸ばしたいと思い行動するはずです。そして人生をより長く、より深く楽しみたいと思うでしょう。
帝人やNOMONが老化の抑制に早くから取り組む理由がそこにあるのです。
健康寿命と老化の問題を解決する
老化が抑制できるとするなら、あとは健康的に生きられる時間をどう延ばすかも議論として欠かせません。
なぜなら老化は抑制できるのに健康でいる時間が短いというのは、さらなる問題を生み出しかねないからです。そこで健康でいる時間を伸ばすことが必要になるのですが、この問題を解決するための必要な概念として「フレイル」があります。
フレイルの予防や治療が老化の抑制と共に重要である
フレイルとは健康と要介護の中間にあたる状態のことで、フレイルは老化と同義と考えても差し支えありません。フレイルは可逆性があり、予防や治療が可能なことも特徴です。
日本人のフレイルを考えたとき75歳という年齢がポイントになります。なぜなら身体的フレイルは日本人男女ともに75歳を機転に上昇し、それに反して生活自立度も急激に低下するからです。
そこで老化を抑制するためにフレイルの予防や治療に注目するわけですが、日本人に関するポジティブなデータとして「通常歩行速度」が男女とも若返っていることも最近では分かっています。85歳以上では25年前と比べて男性は約10歳、女性は約20歳若い年代と同じになっているというのです。
実は日本人高齢者は昔に比べると体力的に若返っています。この背景からも加齢と老化は必ずしも一致しないこと、老化は必然ではないことを知り、一人ひとりが老化を抑制する行動をとることで健康寿命を延ばすことも可能であることを知る、それが重要といえるでしょう。
まとめ:最先端の老化研究結果が帝人やNOMONによって食卓へ届けられる
今回の講演では帝人グループの歩みや取り組みなどが紹介され、その中で老化を抑制するNMNや腸内から体を健康にする食物繊維であるスーパー大麦についても語られました。
そこで私たちが知るべきことは「老化を抑制する」未来は決して遠いものでなく、すでに身近にあるものだということです。
老化を抑制することで寿命が延びることが予測されます。しかし、いくら寿命が伸びても健康でいなければ幸福度は下がるため、健康でいられる期間の健康寿命をいかに延ばすかが今後のトレンドになっていく、それを改めて認識しなければなりません。
今後も世界中で老化研究が進み、帝人グループやNOMONが注目する食品や機能性素材による健康長寿への挑戦も目が離せないといえるでしょう。
まさに世界最先端の医療分野の老化研究の成果が、帝人グループやNOMONの取り組みによって私たちの普段の食卓に直接届く社会になりつつある、そんな明るい未来を描ける講演であったと思います。