コロナウイルスで外出自粛が続いていますが、自分で出来る対策はしていきたいところです。お店に入ると、アルコール消毒液が入り口に置かれていますが、あれはどの程度効果があるのでしょう。

ウイルス全般には効果があるとされてきましたが、実は新型コロナウイルスに対するデータはありませんでした。それが、つい最近になって確認されたのです。

アルコール濃度20%以下は効果無し

アメリカのCDC(疾病予防管理センター)に7月に掲載される論文を見てみましょう。

コロナウイルスに感染した細胞に、濃度0%から80%のエタノールを30秒間暴露させた後、ウイルスの活性を確認しています。その結果、アルコール濃度30%以上で、ウイルスを検出不可能なレベルにまで不活性化できていました。

厚生労働省は高濃度のアルコールは水で薄めて使用することを推奨しています。70~83vol%が推奨範囲で、60%台でも有効としています。市販のアルコール消毒薬も、概ねこの範囲に入っています。

なおアルコールの種類として、エタノールとプロパノールでは、エタノールの方が効果のある濃度範囲が広いことが示されています。手荒れも少なく、安全性の観点からもエタノールの使用がおすすめです。

<参考>

CDC:July 2020

Inactivation of Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2 by WHO-Recommended Hand Rub Formulations and Alcohols

国税庁酒税課

新型コロナウイルス感染症の発生に伴い酒類製造者が「高濃度エタノール製品」に該当する酒類を製造する場合の免許手続等の取扱いについて

アルコール消毒はしっかり行おう

アルコール消毒は、しっかり時間をとって消毒することがポイントです。論文は30秒間で実験を行い、不活性化できていました。濃度は30%から効果があります。

市販のアルコール消毒薬は、ものによっては15秒ほどで揮発します。論文と比べると時間が半分になりますが、濃度は30%の2倍の60%以上あります。相殺して同等の効果が得られるとよいところです。

より安心を求める方は、15秒のアルコール消毒を2回行うと確実でしょう。より長い時間手の上に残る、ジェルタイプもおすすめです。その場合、手のしわなどにもしっかり塗りましょう。

アルコール度数の高いお酒も消毒用に有効

先日、アルコール消毒薬が品薄となっていることから、アルコール度数の高いお酒をアルコール消毒薬の代替品として用いて差し支えない、と厚生労働省から事務連絡がありました。

これを受けて、酒造各社からアルコール度数の高いお酒が発売されています。アルコール度数は77%前後のものが多いですが、65%前後のものもあります。いずれもコロナウイルス不活性化に有効と考えられますので、入手しやすいものを使用するとよいでしょう。

アルコールを飲んだ場合は消毒効果はない

なおアルコールを飲んでも、消毒効果はありません。それどころか、産業用のアルコールを誤って飲んで、命を落とした方もいます。集団感染が起きているイランで、新型コロナウイルスに効くというデマから、メチルアルコールの入った密造酒を飲んだ27人が死亡する事故がありました。

アルコールには種類があり、お酒の成分であり飲んでも安全なエタノールと、飲むと危険なメタノール(メチルアルコール)があります。メチルアルコールは、飲むと失明する、「目が散るメチル」アルコールと昔覚えた方もいらっしゃるかと思います。眼だけではなく、命を落とすことにもなるので、メタノールは決して飲まないようにしてください。

手をしっかり洗おう

アルコール消毒薬は、汚れを落とす効果はありません。手が目に見えて汚れている場合は、先に石けんで手を洗いましょう。

石けんには、界面活性剤とよばれる成分が含まれています。油と水の両方に結び付く成分で、油汚れを分解して水に溶かします。

新型コロナウイルスは、エンベロープ(封筒)と呼ばれる二重膜で覆われています。この膜が、洗剤に含まれる界面活性剤により分解され、感染力を失います。このプロセスに時間が必要で、20秒間の手洗いが推奨されています。「ハッピーバースデー」の歌を2回歌うと、ちょうど20秒程度になりますよ。

<参考>

How soap kills the coronavirus

衣類の洗濯も効果あり

市販の洗剤について、北里大学の研究グループが、新型コロナウイルスの不活性化効果を確認しました。

洗濯用洗剤に10分間接触させ、7製品中6製品にてウイルス不活性化効果が確認されました。漂白剤やアタックZero(3000倍希釈)が効果ありとなっています。

アタックZeroは、3000倍に希釈しても効果があります。通常の使用量は約1000倍の希釈であり、それより薄めても効果があることになります。衣類もきれいにしたい方は、漂白剤やアタックZeroを使うと良いでしょう。

この研究では、拭き取りシートに対しても、1分間の接触試験を行っています。クイックルJoanシートやセイフキープなどで効果が見られています。

なお手指用洗剤に関しては、濃度が原液のままか3倍希釈での試験になり、通常の使用条件とは異なります。20秒間しっかり洗い流すという対策を続けましょう。

<参考>

毎日新聞:2020年4月22日

市販の洗剤にウイルス不活化効果

まとめ

最近、新型コロナウイルスに対するアルコール消毒の有効性が確認されました。

アルコールと接触する時間を長くとることがポイントです。アルコール消毒薬がない時は、度数の高いお酒も有効です。暖かい日が増えてきました。外出の後は20秒間手を洗うと安心です。

執筆

sakura15

 

サイエンスライター。大学院にて生物情報を研究後、半導体開発や遺伝子解析ベンチャー企業に携わりました。 趣味は海外トレッキングで、ネパールを横断するグレートヒマラヤトレイルを歩くのが夢。 生物から理学まで幅広く見ながら、分かりやすく書くことを心がけています。

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