著者は新型コロナウイルス (COVID-19) が流行する以前から今までニューヨーク州の郊外に小学生と幼稚園児の子どもと一緒に家族4人で住んでおります。感染爆発から現在までの推移と現状について報告します。
ニューヨーク州でのパンデミック発生は世界的に大きく報道され話題となりました。アメリカ全体での新型コロナウイルスの感染者は2020年の7月まで増加傾向のため、誤解されている方もいらっしゃるかもしれませんがニューヨーク州は第一波をほぼ封じ込め、今のところ (2020年8月) 第二波の兆候はありません。
現在のニューヨーク州の新規感染者数は概ね600人から700人 (1日あたり) 前後で検査数は5万から7万 (1日あたり) 、陽性率は1%前後に収まっています。
この状況は2020年6月の前半からほぼ変わらず、緩やかに減少しています。このような結果は多くの努力、州民の協力そして犠牲のもとに得られた結果です。そして今でも自粛というより、州政府により経済活動や教育などの一部が制限されています。
みなさんは、ニューヨークというとマンハッタン島の摩天楼、セントラルパークや自由の女神をイメージされると思います。ニューヨーク市は、これらマンハッタン島を含む5つの行政区からから構成されており約840万人が暮らしています。ニューヨーク州は62の郡からなっており、北部は自然が豊かな地域になります。州の人口は約1,950万人です。ニューヨーク市を中心とした都市圏はニュージャージー州、コネチカット州およびペンシルベニア州の一部の都市を含め約1,800万人にもなりアメリカ最大の都市圏を形成しています。
著者は日本人も比較的多く住んでいるニューヨーク州の郊外のウエストチェスター郡に住んでいますので、そこから感じたことをまとめております。
Index
ロックダウン中のニューヨークでの生活
ニューヨーク州の状況を一変させたのが、2020年3月に発生したニューロッシェルでの集団感染 (クラスター) です。ニューロッシェルは私が住んでいる町の隣町になります。
クラスターの発生を受けて3月10日にニューヨーク州のクオモ知事は半径1マイル(1・6キロ)のエリアを「封鎖」すると発表しました。州兵が導入され現場は物々しい雰囲気に包まれました。
この際は、ほぼ完全な封鎖で食料品は配給により届けられました。ニューロッシェルは郊外の町であり、多くの人がニューヨーク市に通勤や通学しているため市に感染が広がるのは、もはや時間の問題でした。感染者は爆発的に増え、ニューヨーク州全体にロックダウン措置が発令されることになります。そしてクオモ知事による毎日お昼のテレビ会見が行われるようになりました。クオモ知事は、ニューヨーク州という多人種、多民族、多国籍、多宗教、多言語そして大きな貧富の差を抱える街の舵取りを迫られることになりました。
皆が固唾を飲みながらお昼の中継に耳を傾けている中、クオモ知事は落ち着いた口調で、時折、家族の話を織り交ぜながら、一人一人に語りかけるように話をします。州民の状況に共感を示しながら、話の節々に協力への感謝そして医療関係者へのねぎらいの言葉を入れます。
クオモ知事の発表
クオモ知事は自分の決定に責任を持つこと、決定により知事の立場を奪われることを恐れず言葉を慎むことはありません。時期尚早に人々を仕事に戻したり、企業をオープンにしたりすることを「愚かなこと」とはっきりと意見を示しました。また過度な約束をせずに、統計で明らかになるひどい現状を隠したり、非現実的なプランを描こうとしたりしません。新型コロナウイルスとの戦いは、“マラソンであり短距離走ではない “ことを強調しました。
いくつか印象に残っている話があります。検査することの危険性なども騒がれる中、一貫して検査体制を拡充することを決めた知事は、検査を拡大しデータをとる、そして科学するという話です。
データから導き出された結果を分析し対策に活かすということを訴えかけました。そして陽性者を隔離し感染拡大を徹底的に防ぐことの重要性を訴えました。アメリカは多民族国家のため、それぞれの主張を聴いても上手くまとまりません。つまり決定には科学のお墨付き、すなわちエビデンス (科学的根拠) が非常に重要視されます。
例えば、マスクをする習慣がなかったニューヨーカーにマスクの着用の効果を訴えるのに、マスクによる科学的な予防効果を説明し、さらにマスクの着用を必須にしている医療従事者の方が、感染率が低いため効果があることを訴えます。
また人口の1〜2% (主に高齢者で免疫不全) を犠牲にしてでも経済活動を再開させることは、国を不況に陥らせることを避けるために価値があるとの意見に対して、クオモ知事は“我々はニューヨーカーの1〜2%を犠牲にする気はない “そして“私は母を犠牲にしない“とツイートしました。このように連邦政府がロックダウンの再開を早めるように圧力をかけても、彼の政策はぶれませんでした。
ロックダウン中の生活は、エッセンシャルワーカーを除きすべて業種で在宅勤務になりました。エッセンシャルワーカーは14のカテゴリーがあり、医療、インフラ、必須な製造業、食料品やガソリンスタンドなどの必須な小売業、マスメディア、自動車整備などになります。さらに新型コロナウイルスの研究に関わる研究者もエッセンシャルワーカーとして認められ早々に研究が開始されました。
外出は基本的に食材の買物のみです。これまではマスクをしていると逆に怖がられるような文化のアメリカ人が律儀にマスクをし、6フィート間隔を空けるソーシャルディスタンシングを守るようになります。スーパーでは早い時間はシニアに限定して開放し、店内を一方通行にするなど、いろいろな対策がとられました。あの当時は、こちらでも品物の不足になりました。家族が多い地域というのもありスーパーの客は、ほとんどが父親でした。考えられないくらいの量を購入している人もしばしば見かけられました。
ロックダウンにはもちろん反発も多くありました。そんな中、州政府はロックダウン中に営業が見つかると店の経営権を没収するといった厳しい措置をとりました。ニュースでは病院の悲惨な状況が連日伝えられ、奮闘する医療関係者はヒーローと讃えられました。その当時は衛生用品の不足によりゴミ袋を代用したり、マスクを新しいものに変えることができないといった悲惨な状況は、世界でも屈指の裕福な都市として考えられませんでした。
家やアパートの庭や窓に感謝の気持ちを伝えるメッセージがたくさん見かけられました。その流れはエッセンシャルワーカー全体に広がりました。病院では急ピッチで仮の病室がいたるところに作られ、ホテルや公共施設が医療施設や検査施設として使用されました。そして病院にはさまざまな物資が民間企業だけでなく個人からも寄付され、企業により無料で食事が届けられたりします。車が寄付されたとニュースで伝えられたりしました。
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ロックダウンの効果が表れ、5月3日頃には1日1万件を超えていた感染者数は1千人を切るまでにもなり経済を段階的に再開させることを決定します。
<参考>
新型コロナウイルスCOVID-19 データ一覧 ニューヨーク市編
500人目の退院者を記念して病院の前でちょっとしたセレモニーが開かれたり、救急車などの車両でパレードが開催されたりしました。そして4月28日に米空軍と米海軍の飛行デモ隊が、COVID-19の最前線で活躍する医療関係者と我々の生活維持に携わる労働者を称えるためニューヨーク市の街を翔け抜けました。
検査体制の拡充と経済再開への指針
COVID-19のテストができる場所は今では700を超えており、基本的に無料で提供されています。ドライブスルー方式の検査も初期から導入されています。
また民間でも多くの場所で検査を行っており、例えば家の近くの薬局でも検査ができます。ちなみにアメリカでは薬局で薬剤師がインフルエンザ予防接種も行っています。さらにニューヨーク市はCOVID-19に関する情報を100カ国後以上に翻訳しており、ニューヨーク市が改めて国際都市であること、さらにすべての住民に漏れなく訴えていることを強く感じます。検査体制の拡充により検査数が人口比で世界1位になっただけでなく他の州と比較しても圧倒的に多くなりました。検査は、以前は感染拡大を抑えるために重要でしたが、経済社会活動の再開において感染率を監視するために重要な指標となりました。
5月15日から経済社会活動を再開する地域でのガイドラインがクオモ州知事より発表され、再開に向けて準備が進められました。再開に伴って州を10の地区に分けて、再開基準が設けられました。基準は主に感染状況、死亡率、病院の受け入れ能力および感染者のモニター体制です。具体的な基準は以下になります。これらの数値は毎日更新され、いつ頃に再開されるかの予想が示されました。
入院者数が14日(連続して)減少または新規入院が15件未満(3日平均)
14日間の病院での死亡者数の減少または新規死者数5人以下(3日平均)
住民10万人あたり新規入院者が2人未満(3日移動平均)
利用可能な病床数の割合(30%以上空きがある)
ICU(集中治療室)の利用可能な病床数の割合(30%以上空きがある)
人口1,000人あたり30人/月(1日あたりの新規検査の7日間の平均値)
住民10万人あたり30人の接触追跡者 (感染した人に連絡を入れて、その人が接触した他の人たちに連絡を取って、注意を呼びかける者) を確保する。
さらに、4つのフェーズに分けられ段階的に再開され、ニューヨーク市が最後の再開になりました。
基本的な考え方は、マスクをし、ソーシャルディスタンシングをとることそして換気です。
フェーズ1では、建設業、製造業、卸売業が再開され、小売店が路上では購入商品の車への積み込みのみが許可されました。他にも農林業、漁業やガーデニング業なども再開されました。またドライブインの映画館 (車から見る映画館) もリスクが低いため再開されました。公園の遊具は使用できませんでしたが、テニスなどのスポーツは再開されました。距離をおいて少人数でできるためリスクが低いから問題ないという判断です。この時はテニスもシングルス (1対1のゲーム) のみの再開に限るという徹底ぶりです。そしてゴルフも再開されました。バスケットボールや野球などのスポーツは参加人数が多くコンタクトがある理由で、この当時は行うことができませんでした。
フェーズ2では、オフィス業は収容人数を制限して再開されました (収容率25%)。また屋外での飲食など幅広い業種のビジネスの再開が可能になりました。サロンや美容室も、限られた容量で再オープンすることができました。それまでおよそ3ヶ月髪を切ることができずにボサボサになったニューヨーカーは予約制で収容人数の制限はありましたが、美容室に通うことができました。
そしてフェーズ3とフェーズ4と段階が進みました。今では(2020年8月10日)ニューヨーク州のすべての地域は第フェーズ4になっています。ニューヨーク市は7月20日にフェーズ4を開始しましたが、現在再開されたものと、まだ再開されていないものがあります
まだニューヨーク市では屋内での飲食はできません。屋内での食事は第三段階で開始するように当初設定されていましたが、より多くの屋内活動が許可されている州で新規の感染者が急増したことにともない、追加の通知がでるまで停止することを発表しました。
その代わりに市は、縁石沿いの道路や駐車場、そして一部の道路の車の通行を禁止し、歩行者などに道路を開放し、これらスペースは食事だけでなく子どもたちが遊ぶ場所としても活用されています。また食事をせずに外で飲酒することが制限されおり、これら規制に違反した場合の3ストライクルールが設けられており、違反が3回見つかった場合は営業権が剥奪される可能性があります。特に重大な違反を犯した会場は、それまでの経緯に関わらず、自動的に閉鎖されます。
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ニューヨーク市の4つの動物園とニューヨーク植物園も再開されましたが、収容人数を制限しており予約制になっています。また屋内展示は基本的に閉鎖されています。
このように室内での感染が懸念されており、モールや博物館、ブロードウェイの劇場は未だに閉鎖されております。少なくとも2021年1月3日まではブロードウェイの公演を中止すると発表しました。
屋外レクリエーションは、第三段階からほとんどのアウトドアスポーツが再開されました。ジムでの屋内エクササイズは行っておらず、駐車場や公園で行っている風景を見かけます。
ニューヨーク州の就労状況
ニューヨークの州立公園、ビーチはすべて再開しています。基本的に利用者がソーシャルディスタンシングを守れるように収容人数を減らして再開しています。またビーチでは人が集まったりスポーツをしたりすることはできません。ロングアイランドのいくつかのビーチは、その郡に住んでいる住民にのみに制限されています。私達が行ったビーチも住んでいる郡の人に制限してはいますがオープンしています。基本的に6フィート以上離れて場所をとることが求められますが海に入るときにはマスクの必要はありません。ライフセーバーもおり一見していつもの変わらないような雰囲気です。このように屋外で距離がとれるレジャーに関しては、ルールはあるもの楽しんで過ごしています。またキャンプ場も州内で再開されています。
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企業での活動は収容人数、ソーシャルディスタンス、マスクの着用、共有部位及び機器の消毒、会議、通路の双方向の往来の制限、必須でない施設の封鎖など事細かなガイドラインが設定されていますが、今のところ義務化はされておりません。収容人数の制限にともない在宅勤務が推奨されています。スタンフォード大学の調査研究により現在のアメリカの勤務状況が報告されています。
<参考>
Stanford,Jun 2020
https://siepr.stanford.edu/research/publications/how-working-home-works-out
2020年の7月の状況で42%がフルタイムで在宅勤務しており、約33%は仕事をしていません。
これはパンデミックの猛烈な影響を物語っています。そして残りの26% (主に必要不可欠なサービス労働者) は、事業所の敷地内で働いています。この数字を見る限りほぼ2倍の数の従業員が自宅で仕事をしており、現在のアメリカは在宅勤務型経済であることがわかります。
特筆すべきことは、在宅勤務の収益に基づいての貢献度を考えると、アメリカの経済活動の3分の2以上を占めているということです。さらに在宅勤務の割合は経済が完全に再開されてもCOVID-19以前の5%から20%へと4倍に増加すると予想されています。現在、多くの企業では社員は週に1〜3日は自宅で仕事をし、残りの時間はオフィスに出社するというのが一般的なプランのようです。しかし、誰もが効率的に在宅勤務ができるわけではありません。調査回答者のうち、コンピュータを使って仕事ができる管理職、専門職、金融関係者を中心に、80%以上の効率で在宅勤務ができると答えたのはわずか51%にすぎませんでした。
教育機関の対応
教育ですが、我が家には幼稚園と小学生の子どもがおりますので、幼稚園と小学校の対応について解説します。ニューロッシェルでのクラスターの発生から、程なくすべての教育機関では登校ができなくなりました。まず幼稚園についてですが、Zoomを使っての遠隔授業になりました。画面越しですがみんなで歌を歌ったり、体操をしたり工作やお絵かき、担任の先生と会話したり、また勉強する機会も設けられました。
慣れると楽しそうにやっていました。また医療従事者などのエッセンシャルワーカーに対しては別に保育施設が設けられました。
現地の公立小学校の対応ですが、まず家庭のインターネットやパソコン環境の調査が行われました。インターネット環境が整っていない家庭向けに電気通信事業者からサービスもあったようです。再開にあたってまず、校長先生からのメッセージ動画がYoutubeにアップされました。小学校はGoogle classというサービスを使い担任の先生より平日は課題が出され、ほぼ毎日インターネット上で提出することになりました。課題は結構あり朝から夕方まで勉強に追わるようになりました。他にも数多くのインターネットでの教材が無料で開放され、教材が不足することはありませんでした。
さらにGoogle Meetというサービスで授業が行われるようになりました。授業は算数や国語、理科、社会だけでなく美術やテクノロジー、音楽などほとんどの教科が受けられました。家で教室の風景が分かるので毎日がさながら授業参観のようです。またスピーキングの練習のための課題では、動画をアップしたりとやることは盛りだくさんでした。先生たちは提出された課題にコメントし、生徒たちを励まします。また生徒同士も制作した作品を見せ合いコメントしたりしていました。子どもはすっかりコンピュータの使い方を覚え、タイピングが早くなりました。
またヴァーチャルで遠足も開かれ、動物の飼育員さんから画面越しで説明を聞いたり、質問したりすることもできました。さらに保護者間でもZoomを使ってクラスメイトと話をする機会を作ったりとさまざまな取り組みが行われました。テクノロジーの先生は4月の時点で3Dプリンターを使って1,300ものフェイスシールドを作成し、病院に寄付したことを動画で報告すると、生徒たちが称賛のコメントしていました。
このような取り組みにより遠隔授業ではありましたが、規定通りの授業が行われたという判断で6月の末に学年が修了し、夏休みは通常通りの日程で始まりました。夏休みは子どもたちが楽しみにしているサマーキャンプが例年開催されます。アメリカでのサマーキャンプは、さまざまなプログラムが主に民間で用意されています。名の如く本格的なキャンプを何日にも渡り行われるプログラムもありますが、共働きも多いので夏休み中に子どもたちを預ける意味合いもあります。基本的には朝から夕方までさまざまなスポーツを楽しんだり、屋内でアートやサイエンス教室などが行われます。今回のサマーキャンプではインドアは基本的になく、アウトドアでソーシャルディスタンスが保てるようなものに変更されました。我が子はテニスのサマーキャンプに参加しました。ネックゲイター型のマスクが配られ、集合したり話をしたりする場面に使用していたようです。また参加の前に健康状態や患者への接触や感染が多い地域への渡航がなかったかなどを毎日チェックされ、開始の前に非接触型の検温計で体温を必ず確認していました。他にもインドアでのサマーキャンプはオンラインで開催されています。
9月からニューヨーク市では新しい学年が始まります。再開にあたって基本方針が示されています。まず再開の基準ですが14日間の平均で1日の感染率が5%以下であれば、その地域の学校では対面授業を行うことができます。1日の感染率が7日間の平均で9%を超えた場合は、閉鎖しすべて遠隔授業に切り替わります。
私たちが住んでいる地域は、学校への登校と遠隔授業のハイブリッドモデルと呼ばれる形体になるようです。学校やスクールバスの密度を下げるために生徒を名前の順でAとBグループ分けて、週の5日のうちそれぞれのグループが交互に2日間登校します。残りの1日は全員で遠隔授業となります。この間に徹底した清掃を行ったり、先生たちのトレーニングなどの時間に使われるようです。また登校することが不安な家庭や生徒に対してはすべて遠隔授業にするオプションも用意されています。
人種間の死亡率の差 (アメリカでの調査研究)
アメリカは、多人種国家ということもあり人種間での死亡率のデータが示されています。年齢調整後のCOVID-19死亡率は黒人が最も高く、黒人と白人の死亡率の差は3.7倍にもなります。ラテン系および太平洋諸島の人々の死亡率も、それぞれ白人の3.1倍、2.8倍です。アジア人の死亡率は白人と比較すると1.4倍になります。
https://www.apmresearchlab.org/covid/deaths-by-race
黒人やその他の有色人種で死亡率が高いのは地域にもよりますが、多くの要因によってウイルスの感染リスクを高めていると考えられています。例えば、在宅勤務ができない、感染リスクの高い職場で働いていること、感染の可能性が高い集合住宅などに住んでいること、または公共交通機関を多く利用しているなどが挙げられます。さらにCOVID-19の死亡率を高めている原因として、糖尿病や高血圧、喘息など基礎疾患を抱えている人が多いことや医療保険に加入していない(そのため、高額な医療を受けられない)こと、これまで劣悪な医療を受けた経験により医療への不信感があることなどが原因となっています。
これまでのデータでは東アジアの国々では、死亡率が低い統計結果がでていますが、アメリカではアジア系の人種がとりわけ死亡率が低いわけではありません。
✳︎注意 食事や基礎疾患の罹患率などが影響している可能性はありますが、 遺伝的な背景の違いが大きな要因と言うわけではない可能性があります。
✳︎注意 :国内の7つの国立大学での共同研究では、HLA遺伝子多型の違いにより、症状が違うのではないかという仮説に基づいてSNPや全ゲノム解析の研究を行なっております。ハーバード大学のラボでは、ACE2(アンジオテンシン変換酵素2)が症状の重篤度に関連していると、仮説を立てて研究されています。
また、NatureでメモリーT細胞の保有の有無が、症状の重篤度に関連していると報告もされていますので、一概に遺伝的な背景とは現段階では明言ができません。
<参考>
Nature,15 July 2020
SARS-CoV-2-specific T cell immunity in cases of COVID-19 and SARS, and uninfected controls
今では、ニューヨーク州は新型コロナウイルスをほぼ抑え込めているため、感染が広がっているアメリカの30州以上を対象に旅行などで訪れた人は、帰って来た際に14日間の自宅待機が命じられています。違反すると罰金が課せられます。そして、この措置は渡航の自由を奪うものではなく、感染の広がりを抑えるためであると述べられています。
ニューヨーク州はパンデミックにより多くの死者を出しました。しかし現在では新型コロナウイルスを封じ込めるため世界でも類まれなる検査体制を確立し、感染者の隔離そして得られたデータを生かして第二波を抑えつつも、可能な範囲で経済を再開しています。そしてインターネットをフルに活用し多くの新しい生活スタイルを作り出しました。
ニューヨーク州でのCOVID-19への対応として、科学的エビデンスに基づいたクオモ知事の強力なリーダーシップとスピーディーな政策の実行に我々日本人も学ぶことが多いと現地で痛感しております。
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