COVID-19の世界的パンデミックの中、世界中で516,210人(2020年7月3日現在)の方が亡くなられています。

アメリカ合衆国では、感染者数:2,686,582人 死亡者数:128,062人

ブラジルでは、感染者数:1,448,753人 死亡者数:60,632人

イギリスでは、感染者数:314,992人 死亡死者数:43,991人

日本でも感染者数:18,850人 死亡者数:976人と非常に多くの方が亡くなられてます。

そんな中、同じアジア圏のベトナムの感染者数は355人(2020年7月3日時点)で未だ死亡者数は0人ということをご存知でしょうか。

感染拡大の阻止に成功した背景には、政府の早期の対応や感染者が出たマンションなどの住居施設の隔離など、徹底した対策が取られてきたことが挙げられます。

2020年のベトナムの人口は約9,730万人、在留している日本人は2018年10月1日時点で22,125人です。在留日本人の人口伸び率は前年に比べて28.1%増加となっており、アジアで最大の伸び率を示しています。

引用:https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/page22_000043.html

 

日本人が多く在留している国の1つであるベトナムだからこそ、COVID-19による影響をベトナムで受けた日本人も少なくありません。今回、ベトナムに在住する日本人男性の体験を紹介します。ベトナムに住む彼のマンションでCOVID-19感染者が出たためにマンション住民全員が隔離され、2 週間の隔離生活を送りました。

ベトナムの感染症状況や政府の対策やベトナムで自宅隔離を経験した日本人の貴重な生の声をお届けします。

<参考>

https://www.populationpyramid.net/ja/ベトナム/2020/

https://vitjp.vietnhat.tv/e47982.html

 

ベトナムのCOVID-19感染状況・政府の対策

ジョンス・ホプキンス大学のホームページによると、2020年6月25日時点でのベトナムでの合計感染者数は355人、うち回復者が329人となっています。未だ(2020年7月3日時点)COVID-19による死者数はゼロとなっています。

<参考>

https://gisanddata.maps.arcgis.com/apps/opsdashboard/index.html#/bda7594740fd40299423467b48e9ecf6

最初の感染報告後、1日最大感染者数は24人のみ

最初に感染者が報告されたのは2020年1月23日の2人、その後、3月初めまでは1日の感染者数は10人台に止まっていましたが、3月8日に1日の感染者数が30人になったあとは徐々に感染者数は増えていきました。しかし、現在の合計感染者数は352人に止まっており、1日感染者数が最も多かったのが5月14日の24人、次に3月22日の19人であり、そのほかの日では1日感染者数は無し、もしくは多くても10人台までに抑えられています。

政府は早期対策施行も徐々に感染防止措置を緩和

ベトナム国内で初めて感染が確認された人が中国・武漢出身であったことから、政府は中国人へのビザ発給を停止します。その後も中国人労働者の隔離を企業に要請したり、入国者はほぼ強制的に14日間施設に滞在させるなど矢継ぎ早に対策を講じていきました。

2020年4月1月から外出制限として「社会隔離」を国民に要請し、警察なども動員されて比較的厳しく社会隔離が運用されました。また感染者や感染者と接触者がいる住居アパートやマンションも隔離されるなど徹底した対策が取られてもきましたが、現在では徐々に感染防止措置を緩和してきています。

<参考>

外務省 海外安全ホームーページ

https://www.anzen.mofa.go.jp/od/ryojiMail.html?countryCd=0084

 

2週間マンション隔離となった日本人の体験談

上述のようにCOVID-19感染拡大に対して早い対応が目を引くベトナム政府の対応ですが、そんな中、実際にベトナムで居住するマンションが隔離の対象となり、約2週間隔離となった在留日本人男性がいました。その時の体験談や意見などをテーマ別にQ&A方式でご紹介していきます。

自己紹介と当時の状況について

ベトナムでの在住歴と隔離された時の状況について教えてください。


ベトナム・ホーチミン市在住約10年です。ベトナムでのCOVID-19感染拡大の中、2020年3月23日~4月5日までの約2週間、住んでいたマンション1棟が隔離処分となりました。隔離中は一切、外部に出ることができない生活となりました。

隔離の理由は、マンション住民に3人の感染者が発生したためです。ホーチミン市で唯一クラスターが発生した外国人向けのバーから近い場所にマンションがあり、そのバーを利用していた外国人住民が感染してしまったようです。

Bar

クラスターが発生したバー:インタビュアー提供

隔離された当事者として

2週間の自宅隔離が始まった時と終わった時はどんな思いでしたか?

隔離を発表された時は、何日間隔離されるのか伝えられなかったため「数日程度で終わるのでは?」とやや甘いことを考えながら過ごしていました。


しかし、数日経っても隔離が終わる気配はなったくなく、最後の方は「1日も早く隔離が終わってほしい」と願いながら過ごしていました。隔離解除された時は「自由というのはこんなにありがたいものなのか」と心から思ったのを覚えています。

自宅隔離で困ったことは何ですか?生活では何に気をつけていましたか?

自宅隔離で困ったことは、運動不足となり腰痛が生じてしまったことです。隔離中はマンション部屋内と、一部のマンション共有部でしか移動ができませんでした。

近隣マンション:インタビュアー提供

なるべく運動不足にならないよう、ビデオなどを観ながらエクササイズなどをしましたが、それでも運動量は全く足りませんでした。

他に個人的に困ったこととして、外食ができないということがありました。ただ普段使っている店もデリバリー対応してくれたので「いつもより少し不便かな」という程度ではありました。

生活で気をつけていたことは、生活リズムをなるべく一定に保つということです。生活リズムがどうしても乱れやすい状態だったので、自宅ですべき仕事があったこともあり、起床の時間だけは隔離前の生活と同じ時間とし、他はいつもと変わらずに過ごしました。

ベトナム政府の対応について

ベトナムでSARS-CoV-2の封じ込めに成功した一番の要因は何だと思われますか?

私自身は、医療関係者ではないのであくまで、個人的な意見ですが、政府による水際対策の素早さと感染拡大防止のための徹底的な対応だと思います。

実際、2020年1月末には中国人の入国停止を行い、中国と隣接しているにもかかわらず中国からの感染を最小限に食い止めました。

さらに欧米からの第2波があった時も2020年3月20日過ぎには入国者を全て14日間隔離としたため、市中への拡大を最小限に食い止めることができています。

私自身が経験したような政府による隔離対策はピーク時には8万人近くに行われ、2次・3次感染が起きないよう、感染拡大期に徹底的に封じ込めのための措置が実行されました。これらの対策により、経路不明感染がほぼ出ない段階で感染拡大が食い止められたため、早期封じ込めに成功したのだと思います。

COVID-19が疑われた場合どう行動するよう呼びかけられましたか?

ネット上のアプリを通じてなどして保健省関連のサイトに相談する、受診する指定病院がいくつかあり、そこに相談にするように連絡先などが公表されていました。

PCR検査が受けられる対象は決まっていましたか?

詳細は不明ですが、感染者が出た場合の濃厚接触者や濃厚接触者との接触者、外国からの帰国者(隔離施設にて14日間で数回)、診療時に疑われた場合には直ちにPCR検査が行われているようです。

日常生活について

COVID-19感染拡大が過ぎたあとの日常生活の中で変わったことは何ですか?

政府によるCOVID-19封じ込め政策が完了したあとは元通りの生活が戻りました。

ただ周囲には潰れた店もたくさんありました。とくに外国人観光客向けエリアの状況は悲惨です。外国人観光客がゼロになった影響が大きかったのだと思います。私自身の仕事でも日本からの来客がなくなり会食の回数などはかなり減りました。

日本では「コロナうつ」と呼ばれる症状が出る人も多かったが、ベトナムではどうでしょうか?今後気をつけなければならない問題はありますか?

ベトナムでは精神状態の問題はなかったと思います。しかし今回の件で失業者は140万人以上にもなるといわれており、経済的な影響を受けている人は少なくありません。

その影響による犯罪の増加が懸念されており「しばらくはいつも以上に犯罪に巻き込まれないよう警戒しないといけない」ということをベトナム人もよく話しています。

ベトナムでも食料の買い占めやマスクなどの価格変動はありましたか?

実際に一部のスーパーなどで食料品や日用品の買占めはありました。しかし政府やスーパー側もそれを見越して、徹底的に商品を供給し続けたので買い占めなどは数日程度でおさまりました。

マスクは外出時に着用が義務付けられたこともあり、市中での購入が一時期不可能になりました。しかしベトナム人特有の助け合いで皆それぞれマスクを手に入れていたようで、それほど大きな価格変動は見られませんでした。

ベトナムの世論について

COVID-19に関連し外国人や医療者に対する差別などは問題になりましたか?

ベトナム人のあいだでは一時期「外国人は怖い」という感覚がありました。とくにクラスターとなった店に多かった欧米人に向けての感情があったように思います。

しかし現在はそうした感覚もなく元通りになっています。医療者に対しては政府をあげて彼らの功績に感謝しようと呼びかけているくらいです。医療者に対する差別どころか尊敬の念を持って接しられています。

約3週間の社会隔離に対するベトナム社会の反応はいかがですか?

ベトナム国民は社会隔離に対して「仕方が無いことだ」というように受け入れました。むしろ政府が早期に対策をとりCOVID-19感染拡大を封じ込めたことで、政府に対する信頼はかなり上がったと思います。

ベトナムの今後について

今回のCOVID-19収束後、ベトナムはどう変わっていくと思いますか?

ベトナムでは比較的早期にCOVID-19の封じ込めができたので、今後社会が大きく変わる可能性は少ないとは思います。しかしインターネット通販などECでの買物増加など生活習慣は多少変わっていくとは思います。

ベトナム在住の日本人としてCOVID-19関連の事象を経験したことから、ベトナム移住を考えている人や今後海外で生活をしてみようと思っている人へ伝えたいことは何ですか?

ベトナムは政府の早期対応によりCOVID-19の封じ込めに成功しました。しかし今後いつどんな形で第2波が発生するかは分かりません。第2波がきたときには今回と同様に早期に封じ込めができる保証はどこにもありません。

実際ベトナムで働き始めて1年以内の方の中には、今回のCOVID-19関連のことがあったタイミングで日本へ帰国された方もいます。まだ生活に慣れない国で社会隔離などの環境下には耐えられないと判断したようです。

ベトナムに限らず今後数年のあいだ日本人が海外で生活する場合には、これまで以上に困難が発生する可能性が高いといえます。

言葉の壁を含め外国で暮らすというのは、とくに初期の頃にはストレスを感じることが高くなります。そのような環境の中で過ごすことを考えると、個人的にはこの1,2年はあまり外国移住をおすすめしにくい時期なのかなと思います。

まとめ

ベトナムはいまだCOVID-19の感染者数は各国と比較して少なく、死亡者数も0人のまま(2020年7月3日時点)です。

その結果にベトナム政府の対応がうまくいったことが如実に現れているといえます。社会隔離もかなり徹底して行われた様子があったものの、実際に自宅隔離となった今回の日本人男性のインタビューからも分かるようにベトナム社会はそれを当然のものとして受け止めた様子が伝わってきます。

今回のCOVID-19に対する政府の対策は各国それぞれ異なります。

しかしこの特殊な状況の中で、各国がどう対応していたのか、政府の対策を国民や在留外国人がどう捉え受け止めたのか、それを知ることは今後の日本でのあり様を学ぶ非常に有用な機会になります。今回の在ベトナムの日本人男性の体験談がその大切さを学ぶよいきっかけとなるに違いありません。

執筆

Writer M

 

群馬県在住。看護師、健康・医療ライター。大学文学部卒業後、看護大学編入を経て看護師・助産師・保健師の資格を取得する。産科・精神科・不妊クリニック・婦人科・訪問看護などで働き15年の臨床経験あり。不妊クリニック勤務時は不妊症に悩む多くの女性の悩みや不妊治療の実情に触れ、女性の健康や不妊・生殖医療に強い関心を持つ。現在は看護業務に携わりながら、主に健康・医療に関するライターとしても活躍している。

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