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最近のSARS-CoV-2感染症に関連するニュースの中で「川崎病」という病名を聞くことが増えたのではないでしょうか。

イギリスやアメリカなどの欧米各国で、川崎病に似た症状がある子どもの数が増えていて、それらの重症の患者の一部にSARS-CoV-2感染症の患者が含まれているとの報道があります。

川崎病というあまり聞き慣れない病気であること、子どもが川崎病に似たような症状を起こしていること、しかもSARS-CoV-2の感染が確認されたという報道があると、同じような年齢の子どもを持つ親は不安に思うこともあるでしょう。

今回の記事ではとくに、子どもを持つ親世代に向けて、そもそも川崎病とは何か、子どもに現れる症状のどこをみて川崎病を疑うのか、SARS-CoV-2が川崎病を発症させる原因になるのかなど、現時点でわかっていることを解説します。

海外でみられる川崎病に似た症状の報告例とは

イギリス、アメリカ、フランス、イタリア、スペインなど欧米各国で「川崎病に似た症状」が出ている子どもがおり、その子どもたちの多くがSARS-CoV-2の感染症にかかっていたことが報告されています。

川崎病に似た症状というのは以下の通りです。

・発熱

・腹痛

・心臓周辺の炎症

・消化器症状

少数の子どもたちに、上記のような特異な症状が現れているのです。

イタリア・イギリス・アメリカの報告例

川崎病に似た症状が出た子どものイタリアでの報告例を見てみましょう。

イタリアでの感染拡大の中心となった都市ベルガモでは、川崎病に似た症状を呈した子どもが10人(男児7人、女児3人いずれも5歳〜7歳)報告されており、症例数はSARS-CoV-2感染症が広がる前に比べると、約30倍となっています。

さらに、川崎病に似た症状がある子ども10人のうち8人にSARS-CoV-2の抗体検査において陽性が出ました。

イギリスでは、多系統の炎症症状を呈している子どもたちがおり、その子どもたちの一部には川崎病の合併症状として見られる冠状動脈瘤があることが報告されています。

その後、この異常な疾患は4月下旬にはイギリスのNHS(National Health Service)に報告されて、警告が発せられました。

アメリカでは、ニューヨーク州において川崎病に似た症状の子どもが102人おり、そのうち71%が重症化となり集中治療室(ICU)で治療を受けていると発表があります。

しかも、102人のうち60%がSARS-CoV-2の検査が陽性となっており、40%に過去に感染を示す抗体があり、これまでのところ5歳、7歳、18歳の3人が死亡しています。

 

SARS-Cov-2感染症のパンデミックの中で、世界的に見てSARS-CoV0-2に感染する子どもの数は多くありません。

しかし、川崎病に似た症状のある子どもたちの増加とその子どもたちにSARS-CoV-2の感染例があることから、SARS-CoV-2の感染が川崎病に似た症状の原因となっている可能性も否定できないとして受け止められています。

川崎病とは何か

次に川崎病とは何か、万が一自分の子どもが川崎病を発症した場合に見られる特徴など解説します。

川崎病は日本人医師が初めに報告した疾患

川崎病とは、1967年に日本人医師である川崎富作博士がはじめに「急性熱性皮膚粘膜リンパ節症候群」として初めて報告した病気です。川崎病は日本のみに存在する病気ではなく、世界的にも患者が報告されています。

主に全身の血管に炎症を引き起こして多彩な症状が見られますが、原因はいまだわかっていません。細菌やウイルス感染などが発症のきっかけになるともいわれています。

川崎病は、5歳未満の乳幼児がかかることが多いのも特徴で、とくに2歳未満の発症が多いとされています。

日本における川崎病の患者数は、

・2017年:15,614人(男8,635人、女6,529人)

・2018年:17,364人(男9,964人、女7,400人)

となっており、2018年に報告された患者の中で4歳未満が約7割となり、男子に多いのも特徴です。

 

川崎病にみられる特徴

川崎病にみられる症状はさまざまですが、以下の6つの症状が特徴的で数日以内に症状が現れます。これらの症状を診て診断がおこなわれます。

 

・5日以上続く発熱

・両方の眼球結膜(白目の部分)の充血

・唇や舌が赤くなる(イチゴ舌など)

・発疹(紅斑・BCGあとが赤く腫脹する)

・手足先が赤くなったり、腫れたりする

・首のリンパ節の腫脹(痛みのために首が回せなくなる)

 

このうち症状が5つ以上ある場合や4つの症状にプラスして冠動脈(心臓の筋肉に受けて流れる血管)に病的な変化があった場合に「川崎病」と診断されます。

発症の原因はわからないものの、感染症が発端となり川崎病となる可能性も指摘されていました。なお、川崎病自体は人へうつる感染症ではないと考えられています。

 

川崎病の進行と治療

川崎病が発症すると約10日までに上述の症状が現れます。この発症して早期に全身に生じた炎症を抑えるための治療が行われます。

その後回復期となると、発症から1ヶ月のうちに解熱して他の症状も軽減しますが、およそ1割の患者に冠動脈瘤(冠動脈の炎症によってできる瘤)が見られます。冠動脈瘤ができると、血液の流れが悪くなって血栓ができ、心筋梗塞が起こりやすくなるといわれています。

川崎病のさまざまな症状が出現する早期に、炎症を抑えて冠動脈瘤が生じないような治療が行われることが治療のポイントになります。適切な治療によって熱は下がるものの、ときに心臓に後遺症が残る場合があります。

ここで押さえておくべきなのは、川崎病の治療法は確立されていること、早期に治療を行うことが重要であること、適切な治療によって日常生活に戻れるまでに治ることが多い病気であることだといえます。

そのため、川崎病としてどのような症状が現れるのかを把握して、子どもの体調変化に早く気づいて対処することが親にとっても大切だといえるでしょう。

 

日本で川崎病症状のあるSARS-CoV-2感染症患者はいるのか

現時点(2020年5月13日現在)の日本においては、川崎病症状を伴う子どものSARS-CoV-2感染症の発症はありません。

しかし、SARS-CoV-2の第2波は9月に訪れるとも言われており、今後も継続して海外の感染状況をチェックしておく必要があります。

これまでの海外で見られる川崎病に似た症状のある子どもたちの症例報告を鑑み、日本川崎病学会では5月1日〜2日の期間、学会運営委員56人に対してメール調査を実施しました。その結果、2020年2月〜4月の間は例年と比べて川崎病の発生状況は平年と同じか、もしくは減少したという報告が多く、増加の回答はありませんでした。

また、子どものSARS-CoV-2感染症の診察においても、すべてが軽症か、もしくは症状が見られず、川崎病と考えられる患者はいなかったとのことです。

ただし、欧米各国のSARS-CoV-2感染症患者の数と比べて、日本の患者数は少ないことから、これから川崎病に似た症状のある子どものSARS-CoV-2感染者がゼロであるとは言い切れないことも指摘されています。

 

SARS-CoV-2が川崎病の発症のきっかけになるのか?

SARS-CoV-2が川崎病の発症のきっかけになるのかは、現時点ではわかりません。

しかし、新型ウイルスであるSARS-CoV-2ではなく、これまでのコロナウイルスに関しては、川崎病を発症した子どもたちに陽性反応が出ることが多かったとの台湾の報告もあります。

そのため、SARS-CoV-2が川崎病の原因にはならないとは言い切れないともいえます。

もちろん、SARS-CoV-2に感染したから川崎病になる、もしくは反対に川崎病になったからSARS-CoV-2感染をすぐに疑うと考えるのではなく、それぞれの特異な症状を踏まえた上で、冷静に対処することが求められています。

 

まとめ

日本川崎病学会が行った調査では、欧米各国で見られるようなSARS-CoV-2感染症に関連するに川崎病に似た症状のある患者は、日本の現時点では認められていません。

しかし、日本と欧米ではSARS-CoV-2の感染者数も違うことなどから、これから日本において同じような患者が現れないとは言い切れない現状であるといえるでしょう。

SARS-CoV-2感染症と川崎病の関連の報道に対して、過剰に不安になる必要はありませんが、川崎病の特徴を念頭に置きながら、今後の動向を注意深く追っていく必要があります。

 

<参考文献>

追記5/19/2020

Russell M Viner, Elizabeth Whittaker;Kawasaki-like disease: emerging complication during the COVID-19 pandemic,Published online May 13, 2020 

https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)31129-6/fulltext

毎日新聞「新型コロナ 川崎病に似た症状102人 米NY州の子どもら 7割、ICUに」

https://mainichi.jp/articles/20200515/ddm/012/040/122000c

——–

日経メディカル「川崎病症状を伴うCOVID-19、日本では認めず」

https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/report/t344/202005/565460.html

朝日新聞DIGITAL「コロナ感染歴ある子どもに「川崎病」症状 欧米で相次ぐ」

https://www.asahi.com/articles/ASN563RVMN55UHBI03L.html

株式会社クリエイティヴ・リンク AFPBB News「コロナ関連の奇病で男児死亡 米NY、川崎病似の症状73人」

https://www.afpbb.com/articles/-/3282241

株式会社クリエイティヴ・リンク AFPBB News「英国が警戒するまれなウイルス性症候群、フランスなどでも発生」

https://www.afpbb.com/articles/-/3280985?cx_part=search

日本川崎病学会「川崎病診断の手引き 改訂第6版」

http://www.jskd.jp/info/pdf/tebiki201906.pdf

一般社団法人日本血液製剤機構 「川崎病 免疫グロブリン療法を受ける患者さんと保護者の方へ」

https://www.jbpo.or.jp/kd/

公益財団法人日本医療機能評価機構Mindsガイドラインライブラリ「川崎病Minds版やさしい解説」

https://minds.jcqhc.or.jp/n/pub/3/pub0164/G0000756/0005

国立循環器病研究センター「川崎病の診断と治療法」

http://www.ncvc.go.jp/hospital/section/ppc/cardiology/pro05.html

特定非営利活動法人日本川崎病研究センター 川崎病全国調査担当グループ「第25回川崎病全国調査成績」

https://www.jichi.ac.jp/dph/wp-dph/wp-content/uploads/2019/09/1bb34be7b6c9f852c1df45cc2ac4152c-1.pdf

日本川崎病学会「川崎病とCOVID-19に関する報道について」

http://www.jskd.jp/pdf/20200506COVID-19_and_KD.pdf

Yahoo!ニュース「新型コロナウイルスと、子どもに多い川崎病は関係しますか?」

https://news.yahoo.co.jp/byline/horimukaikenta/20200501-00176368/

Yahoo!ニュース「新型コロナと「川崎病類似の重症の病気」を、現状でどのように理解すればいいか?小児科医が解説」

https://news.yahoo.co.jp/byline/horimukaikenta/20200510-00177844/

ブログ:小児アレルギー科医の備忘録「コロナウイルス感染と川崎病は関連するか?」

https://pediatric-allergy.com/2020/05/01/kawasaki-disease/

執筆

Writer M

 

群馬県在住。看護師、健康・医療ライター。大学文学部卒業後、看護大学編入を経て看護師・助産師・保健師の資格を取得する。産科・精神科・不妊クリニック・婦人科・訪問看護などで働き15年の臨床経験あり。不妊クリニック勤務時は不妊症に悩む多くの女性の悩みや不妊治療の実情に触れ、女性の健康や不妊・生殖医療に強い関心を持つ。現在は看護業務に携わりながら、主に健康・医療に関するライターとしても活躍している。

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