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人間は加齢と共に脳の構造は変化していく。では、脳のどの部分に影響が出るのだろうか?今回は脳の約80%を占める大脳に焦点をあてたいと思う。

大脳とは

大脳は、思考し、行動をする機能を司る前頭葉、知覚や感覚を司る頭頂葉、聴覚や記憶を司る側頭葉の4つの領域から成り立っている。この中の前頭葉は若年層と高齢者層では大きな違いがみられる。

大脳は加齢と共に萎縮していくが、この萎縮には生理的萎縮と病的萎縮の2種類がある。生理的萎縮とは、大脳全体がバランスよく萎縮していき、情報の入力と出力の機能は衰えてはくるものの、日常生活に支障を与えることは少ない。

 

他方で、病的萎縮とは、特定の部位で神経細胞が大きく欠落している状態である。

萎縮としては別物であるものの、生理的萎縮の後で病的萎縮と段階を踏んでいくと考えられる。では、なぜ、そのような状況に陥ってしまうのだろうか。

人間の体とは、とても賢いもので厳しい環境に置かれると、それに耐えうる体を作ろうとするし、不要となればその機能は衰えていく、またはなくなっていくのだ。

一例を挙げると、原始時代に人間の耳は捕食者や獲物の気配を感じ取るために耳を自身で動かすことが出来たが、現在では90%以上の人間には備わっていない。完全に破綻することがなくとも、脳の機能も退化していく可能性は十分にある。

 

長生きした人の脳の形成

では、長寿の方の脳とはどういったプロセスによって形成されているのだろうか。例えば、肉体的な観点からの話になるが筋肉トレーニングによる超回復とはご存じだろうか。

一般に筋肉トレーニングを行うことで、筋線維の損傷により肉体には大きなストレスがかかる。しかし、筋肉はそのストレスに耐えうる強さを48~72時間をかけて作り出す。

これを繰り返すことによって身体機能の向上が保たれる。脳に関しても同様のことが当てはまる。

神経細胞は全て加齢と共に減少していくだけでなく、むしろ増えるものがあることが最近分かってきた。それは海馬の歯状回を構成する顆粒細胞である。

顆粒細胞が増えることは、海馬にインプットされる情報の容量が増えて記憶力は良くなるし、その実現には脳への適度なストレスをかけることが機能維持に重要である。

適度なストレスとは、日常生活での変化、つまり新しい刺激へどれくらい触れるかが重要であると思われる。

例えば、学生時代は、小学校、中学校と3~6年のスパンで自分の周囲の人間など環境が大きく変化する。そして、新しい人間関係を構築したり、講義を受けて試験があったりなど常に変化と課題に追われながら過ごすものだ。

しかし、社会人になると、特に考えるということもなく、職場と自宅を往復し、型通りの仕事をこなす人も少なくはない。加えて、趣味もないとなれば、尚更であるだろう。いかに脳を使わせる状況に追い込むかが重要になると考えられる。

重ねて、脳の活性化には有酸素運動が良いと言われているが、体内の血液循環を活発化し、脳内への血流量を増大させることが理由だろう。

脳の糖代謝と運動の関係

だが、詳細なメカニズムをみていくと脳における糖代謝能が関わっているかもしれない。実際のところ、脳の糖代謝と運動の関係には報告があり、その内容を紹介したい。

脳にはグリコーゲンが唯一、糖として蓄えられているが、ラットへこのグリコーゲンの分解と乳酸輸送の阻害薬を投与したところ、ラットの運動を評価する走行時間の減少と脳ATP濃度低下に相関がみられたようだ。

ATPは糖代謝の過程で作られるもので、グリコーゲンが乳酸の産生、供給を通じて運動能力をサポートしているといえる。加えて、一般的に骨格筋は激しい運動をした後で、より多くのグリコーゲンを再生させるが、脳でも同じことが起こっていた。他方で2型糖尿病のラットに同様の実験を行ったところ、高血糖状態とは独立して改善された。

特に大脳、海馬で多く見られていることから、運動は脳の糖代謝能を上げると言えよう。

以上のことから、運動で心肺機能を上げ、脳への血流量を活発にし、血液脳関門を通過するインスリンがより作用することで糖代謝が促進され、脳の機能は維持されると考えられる。

また、昨今では認知症の初期症状として鼻づまりを訴える方が増えている。かつて風邪またはアレルギー症状に罹患した時に意識がはっきりしなかったことはないだろうか?これには、脳と嗅覚神経の構造的な観点から理由がある。

嗅覚神経は、脳の一部である海馬へ直結している。嗅覚神経への刺激がないことは、海馬への適度なストレスがなくなり、衰えを引き起こすかもしれない。その結果、物忘れがひどくなり、身の回りのことができなくなると運動することもままならなくなる。運動が間接的とすれば、嗅覚は直接的と言えるだろう。

まとめ

日本は全世界的に見て、平均寿命が高く、長寿の国であるが、老老介護という言葉がよく耳にするようになったこともあり、健康寿命が延びたとは言えないかもしれない。

医療の進歩によって、様々な疾患が治療できるようになった反面、運動、言語、感覚そして意識などあらゆる活動を司る脳に関してはまだまだ不明な点が多い。実際、脳の疾患が原因とされている認知症については特効薬が未だ開発されていないが、日常生活のちょっとした取り組みによって防ぐことが出来る内容は多数報告されている。

これは自然治癒力という人間が本来備わっている機能をフルに活用することであり、普段から運動、他者とのコミュニケーションなどを心がけ、毎日自分の体へ刺激を与えることが長寿につながるのではないだろうか。

 

参考資料

認知症疾患の神経病理

Acute stress enhances adult rat hippocampal neurogenesis and activation of newborn neurons via secreted astrocytic FGF2

認知機能と環境ストレス

高齢者における認知機能と身体機能の関連性の検討

執筆

LIFE IS LONG JOURNAL編集部

 

LIFE IS LONG JOURNAL編集部。 ”LIFE IS LONG JOURNAL”は「人生100年時代」を迎え、すべての人が自分らしく充実した人生を歩んでいくための「健康寿命」を伸ばすために役立つ情報を発信するメディアです。

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