日本は、世界でも類を見ない超高齢社会(高齢化率21%)に突入しています。

さらに高齢化率は今後も上昇することが見込まれており、2025年に認知症患者数は700万人となり、高齢者の5人に1人が認知症患者となると推計されています (内閣府, 2017)。

そのためメディアでも認知症にならないためには○○が有効だった!○○な人は認知症になりやすい!

などよく認知症に関する話題を目にしますね。主に食事や運動などが取り上げることが多いですが今回は認知症とその周りの環境について調べてみました。

内閣府 (2017). 平成29年度版高齢社会白書 日経印刷

認知症とは?

そもそも認知症とはどのようなものなのでしょうか?改めて考えてみましょう。認知症と聞くと「物事をすぐに忘れてしまう」という印象があると思います。

確かに認知症になると中心的な症状として記憶力が低下します。さらに言葉の理解が出来ない、段取りよく作業が出来なくなり料理が出来なくなるなど多岐に渡ります。

なぜ認知症になるのかについては様々な説がありますが、原因はいまだに不明です。しかし多くの研究によって認知症の予防や進行を遅らせることが出来ると報告されています。

厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/kokoro/index.html

孤独を感じるほど認知症になりやすい?

孤独感を強く感じる高齢者はアルツハイマー型認知症になるリスクが高いことが報告されています。

約800名の高齢者を対象とした研究で、4年間の追跡研究を行った結果、76名がアルツハイマー型認知症となりました。さらに統計分析を行うと、孤独感の強い高齢者は、そうでない高齢者と比較して2倍以上のリスクがあることが明らかになりました。現在日本では1人暮らしの高齢者が増加傾向にあります。

しかし1人暮らしをしつつ地域との関わり、家族との関わりを楽しみに元気に生活する高齢者も多くいるのではないでしょうか。それは周囲の人と関わりを持つことで孤独感が少ないことが関係しているのかもしれませんね。

loneliness and risk of alzheimer disease (Krueger et al. 2007)

学歴が低いほど認知症になりやすい?

この見出しを付けると批判を買うかもしれませんが、頭が悪いほど認知症になりやすいというわけではありません。認知的な活動が不足していると認知症になるリスクが高くなると言われており、この研究では数ある認知症へ悪影響を及ぼす要因(高血圧、糖尿病、肥満、抑鬱、身体的活動など)の中も特に認知的活動の不足及び低学歴であることが明らかになっています。

その理由としては認知的活動を行なうことが脳の神経を強化し、多少の脳の萎縮が起こったとしても、その分をカバー出来るからだとされています。ノーベル賞を受賞される方はお若い方が多いとも限りませんよね。

私はむしろこの年齢で研究されていてすごいなと思うことが多い気がします。またお話の仕方も若々しく感心させられることが多いです。また音楽活動はされている方も若々しい方が多いですよね。学び続けること、刺激を受けることが認知症のなりにくさに影響しているのかもしれませんね。

The projected impact of risk factor reduction on Alzheimer’s disease prevalence (Barnes et al. 2011)

都会に住むと認知症になりやすい?

自然風景と認知機能の関係を実験的に明らかにした研究があり、1つの群には美しい自然の風景を、もう一方の群には殺風景な都市の風景を眺めるように指示しました。

その前後に持続的な注意力を測定する課題(表示される数字に出来るだけ早く反応する)を行った結果として、自然の風景を見た群では、持続的注意を要する課題の正答数と反応時間が有意に改善したことを報告されています。別の研究では被験者に数字を逆唱する課題を実施しその後、1つの群には植物園を50~55分歩いてもらい、もう一方には交通量の多い通りを同じ時間歩いてもらいました。

その後数字逆唱課題を再度実施した結果、植物園を歩いた群では、課題の成績が有意に向上したと報告されています。自然環境においては注意力を働かせることを強いられることが少ないため、短期記憶や注意機能等の認知機能に影響を及ぼすと述べられています。

都会の喧騒の中で過ごすよりも、自然の中で暮らす方が科学的に認知機能に良いことが証明された論文でもあると思います。老後の生活の拠点として、地方や田舎でゆっくり生活するのもいいかもしれませんね。

The restorative benefits of nature toward an integrative framework (Kaplan. 1995)
The cognitive benefits of Interacting with nature (Berman et al. 2008)

まとめ

今回は冒頭で認知症と周囲の環境との関係を紹介していくと述べましたが、細かく分けると人間関係、教育との関係、自然環境との関係を取り上げました。これらの論文の中ではより知的で適度な刺激のある環境であるほど、認知症の予防が出来るとされています。

まずは家族に電話をかける習慣を作る、少しの時間でも外に出て散歩をするなど今日から出来ることがたくさんあると思います。皆さまの生活を振り返ってみてはいかがでしょうか。

執筆

LIFE IS LONG JOURNAL編集部

 

LIFE IS LONG JOURNAL編集部。 ”LIFE IS LONG JOURNAL”は「人生100年時代」を迎え、すべての人が自分らしく充実した人生を歩んでいくための「健康寿命」を伸ばすために役立つ情報を発信するメディアです。

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