サウナにはさまざまな健康効果が期待されている一方で、「長時間耐えなければならない」「水風呂は絶対入るべき」などの誤解が根強くあります。しかし、実際は自分の体調や感覚に合わせた無理のない入り方でサウナを楽しむことが大切です。今回は、日本サウナ学会代表理事の加藤先生の実践的なアドバイスを交え、科学的根拠に基づいた正しいサウナの利用方法をご紹介します。

なお、本記事はYouTubeで公開されている「【加藤容崇先生 実演!】パフォーマンスを最大化する正しいサウナの入り方/サウナ・水風呂・休憩を解説!」 (2025年2月14日公開)の内容を基に作成されています。最新の情報や個別の状況については、専門家にご相談ください。※1

サウナの健康効果とよくある誤解

適切にサウナを利用して、いわゆる「整う」という状態になると、副交感神経と交感神経が活性化してマインドフルネスの効果が得られます。※2
その他にも、サウナにはさまざまな健康効果があります。

  • 自律神経の機能向上による冷え性の改善やメンタルの安定
  • 脳疲労の回復
  • 肩こり、腰痛、目の疲れの緩和、予防
  • 血行促進、新陳代謝の活発化による美肌効果や脂肪燃焼効果
  • HSP(ヒートショックプロテイン)の産生促進による老化抑制効果

サウナがもたらす健康効果や老化抑制効果について詳しく知りたい場合は、こちらの記事をご覧ください。

関連記事:サウナがもたらす老化抑制の可能性とAging Hallmarks

関連記事:冷え性にはサウナが効果的!冷え性の症状や原因、効果的なサウナの入り方を紹介

さまざまな健康効果が期待されている一方で、サウナに対する誤解も多く存在します。例えば、「サウナは我慢しなければならない」と誤解している人は少なくありませんが、実は「暑さに耐える=サウナの正しい入り方」というのは大きな間違いです。また、サウナ好きの人のなかには「水風呂は絶対入らなきゃダメ」という人もいますが、これも誤解であり、体質や体調によっては水風呂に漬かる必要はなく、水シャワーでも代用可能です。

加藤容崇先生によると、「サウナは無理をしても意味がない。自分のペースで自分の快適なように入るのが大原則」とのことです。

3つの工程を3セットが基本

サウナには、「サウナ室」「水風呂」「休憩」の3つの工程があります。これを1セットとし、3セット繰り返すのが最も一般的な入り方です。

正しいサウナの入り方

ただし、疲れているときは1セットに減らしたり、元気なときや時間があるときは4セットに増やしたりと、体調に合わせてセット数を調整するのがよいでしょう。体力や体調の限界を見極めながら、自分のペースで楽しむことが大切です。

サウナ前の準備:体調チェックと水分補給

サウナに入る前は必ず、体調のセルフチェックと水分補給を行いましょう。

体調のセルフチェック

体調や疲労度に応じてサウナの滞在時間やセット数を調整することが大切です。体が疲れている日は、1回の滞在時間を短くしたり1~2セットに留めたりしましょう。無理をせず、自分自身のコンディションを優先してください。

水分補給の徹底

サウナに入ることで汗をかき、体内の水分が不足すると、脱水症状を起こしたり、急激な温度変化によって体調を崩したりするリスクが高まります。特に、サウナに入る前にはしっかりと水分補給を行い、体を内側から準備しましょう。

水分補給の徹底

「サウナ室」の入り方:下段からスタートし段階的な温度調整が重要

最初の工程は「サウナ室」です。体調をチェックし、水分補給を十分に行った後、サウナ室に入りましょう。加藤先生によると、サウナ室の入り方には次の3つのポイントがあります。

  • 無理しない
  • 時計を見ない
  • 下段から入る

1セット目は下段からスタート

最初のセットでは、下段に座りましょう。いきなり上段など極端に高温の場所へ入るのは、準備運動なしに全力で走り出すようなものです。体が温度に慣れた後、2セット目から徐々に中段や上段に移行するのが安全です。体の負荷を段階的に高めることで、自律神経や心臓への過剰な負担を避けることができます。

滞在時間は時計ではなく体感で

サウナ室の滞在時間については、「何分が正解」という決まったルールは存在しません。加藤先生は「7分くらいが目安」としながらも、「7分を絶対に守らないといけないわけではない」「時計は見ないでください。気にするべからず」と解説します。

実際、同じ人でもその日の体調やサウナ室の環境によって、最適な滞在時間は変動します。時計に縛られるのではなく、呼吸や体感を頼りに、無理のない範囲でサウナを楽しむことがポイントです。

「水風呂」の入り方:水シャワーもおすすめ

サウナ室の次は「水風呂」に入ります。サウナは好きでも水風呂は苦手という人もいるかもしれませんが、それはサウナ室で十分に体を温められていない可能性があります。

実は、温度の感じ方は体の部位によって差があります。人間の体のうち、顔は温度に対して敏感な一方で、足はあまり敏感ではありません。サウナ室では床に近い位置よりも天井に近い位置の方が温度が高く、足元と顔の付近では7~10℃ほど温度差がある場合もあります。そのため顔は火照りを感じやすく、体がまだ十分に温まっていないのにサウナ室を出てしまうのです。さらに、水風呂には足から漬かるため、より冷たく不快に感じやすいといえます。
水風呂の入り方と、水シャワーでの代用について解説します。

水風呂のメリットと注意点

十分に体の深部まで温まっていれば、水風呂は爽快感をもたらし、血行促進に効果的です。ただし、顔に直接冷水がかかると急激な自律神経反射が起こり、失神や転倒につながる危険性があります。水風呂に入る際は、まずは体の下部から水をかけ、ゆっくりと入るのが望ましいです。

水風呂が苦手な人は水シャワーで代用

サウナ初心者や水風呂が苦手な方は、水シャワーで代用するのもおすすめです。水シャワーを利用する際は、以下の3点に注意しましょう。

  • シャワーの水流が顔に直接当たらないように、まずは体の下部から浴びる
  • 立った状態でなく、可能であれば座った状態で水シャワーを浴びるとより安全
  • 温度を調節しながら、徐々に体全体をクールダウンさせるイメージで使用する

「休憩」の取り方:クールダウンと「整う」瞬間

サウナ室で体をしっかりと温め、水風呂または水シャワーで爽快感を得た後は、十分に休憩を取って体をクールダウンしましょう。サウナ室と水風呂または水シャワーを往復するだけ、あるいは椅子に座ってもわずかな時間だけだと、気持ちよく「整う」ことができない可能性があります。休憩の重要性と時間の目安について解説します。

休憩の重要性

サウナと水風呂または水シャワーの間にしっかりと休憩を取ることで、体がクールダウンし、次のセットに向けて準備が整います。サウナ室の周辺に設置されている椅子を利用し、リラックスできる姿勢で体を休めましょう。

なお、汗や水分が体についたままだと、気化熱によって体が冷えてしまうことがあります。気温が高い場合はあまり体を拭かなくても大丈夫ですが、気温が低い場合は軽く体を拭き、気化熱による急激な冷え込みを防ぐ工夫が必要です。

「整う」瞬間の魅力

休憩している間は手持無沙汰に感じるかもしれませんが、少なくともサウナ室に入っていた時間の半分程度は休憩するのがよいでしょう。大切なのは、次のセットに移る前に十分に体が落ち着く時間を確保することです。

特に、水風呂から休憩へ移動した最初の約2分間は、「整う」状態を感じられる最も心地よい瞬間といわれています。せっかちな気持ちを抑えて、焦らずゆったりと体を休ませることで、サウナの効果をより一層実感できるでしょう。

正しい休憩の仕方

正しいサウナの入り方まとめ

正しいサウナの入り方は、以下の3つの要素に集約されます。

準備と体調管理

サウナに入る前の準備として、十分な水分補給と体調チェックを行い、無理のないセットや滞在時間を設定すること。

段階的な温度調整

1セット目は下段からスタートし、徐々に温度負荷を高めること。時計は見ず、呼吸や体感を確認しながら無理なく実践すること。

適切なクールダウンと休憩

水風呂や水シャワーを上手に利用し、休憩時に体が「整う」時間を確保することで、次のセットへの準備を十分に行うこと。
自分の体力や体調に合わせながら、快適で安全なサウナライフを楽しんでください。

また、NOMON株式会社では2024年10月21日にオンラインセミナーを行い、加藤先生をお招きして「サウナと老化のつながり」をテーマにご講演いただきました。このオンラインセミナーのアーカイブ動画は現在配信中です。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

関連記事:【アーカイブ配信のご案内】10月21日開催『サウナで老化が抑えられる!?医学的に学ぶ、サウナと老化のつながり』オンラインセミナー

参考資料

※1 YouTube. NOMON研究所. 【加藤容崇先生 実演!】パフォーマンスを最大化する正しいサウナの入り方/サウナ・水風呂・休憩を解説!
※2 加藤 容崇(著). (2023). 医者が教える 究極にととのう サウナ大全 超絶リラックスとパフォーマンスアップに効く科学的な方法. ダイヤモンド社.

執筆

LIFE IS LONG JOURNAL編集部

 

LIFE IS LONG JOURNAL編集部。 ”LIFE IS LONG JOURNAL”は「人生100年時代」を迎え、すべての人が自分らしく充実した人生を歩んでいくための「健康寿命」を伸ばすために役立つ情報を発信するメディアです。

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