PERMA(パルマ)とは

ポジティブ心理学の創始者ともいえるセリグマンが提唱した「PERMA(パルマ)」という概念があります。

「PERMA」は、持続的にウェルビーイングの高い状態を維持するために必要な5つの要素の頭文字で、ポジティブ感情(Positive Emotion)、エンゲイジメント(Engagement)、人との関係(Relationship)、意味(Meaning)、達成(Accomplishment)のことを指します。
ウェルビーイングには、ヘドニックなウェルビーイング(快楽的で一時的な幸福感)とユーダイモニックなウェルビーイング(持続的な幸福感)の2つの側面がありますが、PERMAには、その両方が含まれています。

ウェルビーイングについて詳しく知りたい場合は、こちらの記事をご覧ください。

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PERMAを、職場という文脈でとらえる

このPERMAを、職場という文脈でとらえると、次のようになります。

Positive Emotion

仕事をしていて、楽しい、嬉しい、面白い、喜びといったポジティブ感情があること。
感謝する、希望を感じる、感動する、思いやりの気持ちをもつといったものも含まれます。

Engagement

仕事に対する思い入れや愛着があること。
熱意をもって取り組み、その仕事に誇りを感じて、活力が湧いてくる、といった状態を指します。

Relationship

他者の存在とポジティブな関係性のこと。
一緒に働く周りの人を信頼していて、周りの人からも信頼されている状態のことです。

Meaning

仕事や人生の意味、意義があること。
自分は何のために生きているのか、何のために働いているかが明確で、自分より大きいと信じる存在に属して仕える感覚のことも含みます。
自分のしていることが重要で価値があると感じられる状態をもたらします。

Accomplishment

達成(何かを成し遂げる)。
目標に向かって努力し、その目標を達成した結果もたらされるものです。

PERMAのどの要素でも、得点が高い人は仕事や家庭での満足度が高いこと、心理的ストレスの症状が少ない傾向にあり、仕事のパフォーマンスが高いことが示されています。

PERMA+4

では、ウェルビーイングのために必要な要素がこれで十分かというと、提唱者であるセリグマン自身が、これで網羅的というわけではなく、新たな構成要素を探すことを推奨しています。

現在、職場という文脈の中では、仕事に関連したウェルビーイングと持続可能なワークパフォーマンスに貢献する新しい構成要素として、①身体的健康、②マインドセット、③職場環境、④経済的安定の4つが提案され、PERMA+4として検討されています。

①身体的健康

ポジティブな身体的健康には、生物学的資産(体力、心拍変動、脈拍や血圧などの数値や、自身の健康習慣を振り返ること)、機能的資産(身体的職務を遂行するときに、どれくらい機能できるか)、主観的または心理的健康資産(身体活動をしているときにどれくらい活力を感じられるか)の3つが含まれるとされています。

②マインドセット

自分の才能は努力と意図的なトレーニングによって伸ばすことができるという信念(成長マインドセット)を持っている人は、自分の才能は生まれつきのもの、固定的だと考えている人よりも幸福度とパフォーマンスレベルが高いことが示されています。

③職場環境

物理的な職場環境は、身体的健康とウェルビーイングの両方に大きな影響を与えます。
建物の設計、空気の質、自然採光、物理的な安全性などはもちろん、職場環境は、他者とのつながりをつくり出す機能を備えることもできます。
(美意識も重要とされていて、美しい環境の中で働くことも、私たちのウェルビーイングやパフォーマンスに大切な要素というのが個人的には興味深い!)

④経済的安定

金銭的な事柄に対するコントロールは、ウェルビーイングの最も強い予測因子のひとつとされています。
健全な金銭的意思決定を行い、金銭的な問題をコントロールすることが、全体的なウェルビーイングに関連します。

PERMA+4で、自分の仕事生活を振り返ってみるのも面白いですし、「自分の組織やチームはどうかな?」と、組織的な観点からとらえて、ウェルビーイング経営や組織・チームづくりに役立てることもできそうです。
4月からの仕事や組織設計のヒントにしてみてはいかがでしょうか。

 
【参考文献】
Donaldson, S. I., Lee, J. Y., & Donaldson, S. I. (2019). Evaluating positive psychology interventions at work: A systematic review and meta-analysis. International Journal of Applied
Positive Psychology, 4(3), 113–134.

執筆

博士(心理学),臨床心理士,公認心理師

関屋 裕希(せきや ゆき)

 

1985年福岡県生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、筑波大学大学院人間総合科学研究科にて博士課程を修了。東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野に就職し、研究員として、労働者から小さい子をもつ母親、ベトナムの看護師まで、幅広い対象に合わせて、ストレスマネジメントプログラムの開発と効果検討研究に携わる。 現在は「デザイン×心理学」など、心理学の可能性を模索中。ここ数年の取組みの中心は、「ネガティブ感情を味方につける」、これから数年は「自分や他者を責める以外の方法でモチベートする」に取り組みたいと考えている。 中小企業から大手企業、自治体、学会でのシンポジウムなど、これまでの講演・研修、コンサルティングの実績は、10,000名以上。著書に『感情の問題地図』(技術評論社)など。

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