職場のメンタルヘルスの領域にフルタイムで関わり始めて、今年で12年になります。
干支ひとまわり、産業領域で研究・実践活動をしてきて、この4~5年、ひしひしと感じているのは、マネージャー(管理職)層を取り巻く環境が厳しくなっているということです。
自分自身の業務をしながら部下の育成もしなければならない、部下に残業させられない分をマネージャーが抱え込む、といった様子をよく耳にします。

日本や韓国の管理職・専門職の死亡率がその他の職業階層より高くなっている

2019年に発表された、男性の職業階層別死亡率を検討した研究では、日本や韓国の上級熟練労働者(管理職・専門職)の死亡率がその他の職業階層より高くなっていることが示されており、健康リスクの高さが示されています。
その研究結果では、上級熟練労働者の死亡率が他の層に比べて最も低い欧州各国との傾向の違いも際立っていました。

これを読んでいるマネージャー層の皆さん(もちろんマネージャーの方以外も!)、最近1か月のご自身を振り返って、次のリストであてはまるものに、チェックを入れてみてください。

□ イライラする
□ 不安だ
□ 落ち着かない
□ ゆううつだ
□ よく眠れない
□ 身体の調子が悪い
□ 物事に集中できない
□ することに間違いが多い
□ 仕事中、強い眠気に襲われる
□ やる気が出ない
□ へとへとだ(1日働いたあとを除く)
□ 朝起きたとき、ぐったりした疲れを感じる
□ 以前と比べて疲れやすい
□ 食欲がないと感じる

自分では、なんとなく「ずっとこんな感じだし」を思っているような症状も、こうしてチェックを入れてみて、複数該当する場合などは、セルフケアしたほうがよいタイミングかもしれません。
このリストは、中央労働災害防止協会が2023年に改訂版を出した「労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト」の自覚症状についての項目です。
(チェックリストでは、労働時間などの勤務の状況とあわせて、セルフチェックができるので関心がある方は、お試しください。)

マネージャーの方におすすめのセルフケア

マネージャーの方におすすめのセルフケアは、「休む!」という観点に基づいた2つのアプローチです。
(研修などで、マネージャーの方に「健康面で実践していることありますか?」と尋ねると、多くの方が運動系のものを挙げますが、睡眠や休む系の回答は少数だったりします。)

毎日の「休む」に注目したアプローチ

ひとつは、毎日の「休む」に注目したアプローチで、終業後に自分をリラックスさせて、効率的に休むための方法です。
仕事をしている間は、私たちの身体は戦闘モード、緊張状態にありますが、それを引きずったままだと、しっかり休めません。
自分をリラックスモードに導くために、手軽に使うことができるのは「呼吸」です。
呼吸は、私たちが自分でペースをコントロールできる貴重な身体活動です。
3分ほど時間をとって、「ふーっ」と細く長く息を吐き切ることを意識していると、自然とゆったりとした呼吸になっていき、少しずつ身体がリラックスしていきます。
仕事終わりや就寝前などに試すと、質のよい睡眠をとることにもつながります。

毎週の「休む」に注目したアプローチ

もうひとつは、毎週の「休む」に注目したアプローチで、休日をどのように過ごすと、元気に次の就業を迎えられるのかという方法です。
以前、記事で書いたリカバリー経験の知見を役に立てていただけますが、マネージャーの皆さんには特に「心理的距離」と「コントロール(裁量度)」の2つを取り入れてほしいなと思います。
マネージャーというと、裁量度があるイメージですが、上には物を言いづらく、実際にはそこまでの裁量度がないというミドルマネージャーも多いのが現状です。
休日に1時間でも(難しい方は15分でも!)、仕事のことをすっかり忘れて(心理的距離)、思いっきり自分のやりたいように自由に過ごす(コントロール)時間をとってみるのはいかがでしょうか。
何をしていいかわからない、という方は、小さいころ好きだった遊びや学生時代の趣味、やめてしまったけど再開したいこと、いつかやってみたいと思っていたことなどがヒントになります。
心理的距離を保つため、できればスマホやタブレット、パソコンなどのデバイスを使わないでできることがおすすめです。
ふだん頑張っているマネージャーの皆さんにこそ、セルフケアのために、身体の休養と、心の休養と、両面からの「休む」を試してみてほしいなと思っています。

【参考文献】
中央労働災害防止協会. 2023. 疲労蓄積度チェックリスト.

執筆

博士(心理学),臨床心理士,公認心理師

関屋 裕希(せきや ゆき)

 

1985年福岡県生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、筑波大学大学院人間総合科学研究科にて博士課程を修了。東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野に就職し、研究員として、労働者から小さい子をもつ母親、ベトナムの看護師まで、幅広い対象に合わせて、ストレスマネジメントプログラムの開発と効果検討研究に携わる。 現在は「デザイン×心理学」など、心理学の可能性を模索中。ここ数年の取組みの中心は、「ネガティブ感情を味方につける」、これから数年は「自分や他者を責める以外の方法でモチベートする」に取り組みたいと考えている。 中小企業から大手企業、自治体、学会でのシンポジウムなど、これまでの講演・研修、コンサルティングの実績は、10,000名以上。著書に『感情の問題地図』(技術評論社)など。

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