NOMON株式会社は、“イノチってなに?”という素朴な疑問を持つ子どもと宇宙人と博士の対話を通して、自分なりに考え、探求し、検証することを楽しみながら学んでいただく『イノチのカガク』を本サイト内のコンテンツとして公開しています。

 

そして、世の中にあふれる情報に科学的マインドをもって、親子で自然に接していただく『イノチのカガク』リアル版として、2023年3月19日(日)に平野邸 Hayama(神奈川県三浦郡葉山町)にてイベントを開催いたしました。

 

ランドスケープ・プランナーである滝澤 恭平氏のガイドのもと、在来種のクロメダカ観察とミニビオトープづくりを体験。また、自然環境が持つ多様な機能や仕組みを活用したグリーンインフラについても学び、イノチとカガクを身近に感じる体験型ワークショップを行いました。

 

実施日:2023年 3月 19日

講師:滝澤恭平

ランドスケープ・プランナー。博士(工学)

日本の風土を巡る『ハビタ・ランドスケープ』著者

ハビタ代表、水辺総研取締役、ミズベリングプロジェクト・ディレクター。水辺・ランドスケープの計画、自然再生、市民協働、グリーンインフラを専門とする。九州大学大学院博士課程修了。葉山町在住。

 

 

 

協力:熊谷倫太郎(葉山メダカ 店主)、平野邸Hayama

 

今回のワークショップは、神奈川県葉山町にある一棟貸しの宿泊施設『平野邸 Hayama』という古民家で行いました。雨水を貯水して池に流すグリーンインフラの仕組みを取り入れた庭に、小学校低学年から中学生まで6組の親子、総勢13名が参加しました。

ワークショップでは、平野邸でのミニビオトープ作りと、平野邸近くの「花の木公園」にあるレインガーデン見学をします。レインガーデンとは、雨水を浸透させて災害を防ぐグリーンインフラの手法のひとつです。

一見、関係のなさそうなミニビオトープ作りとレインガーデンですが、自らの手で動植物が安定して生活できる生息空間(ビオトープ)を作ることと、雨水がどのように土へ浸透するのかを知り、暮らしのなかの治水や災害予防などのグリーンインフラを理解することには密接な関係があります。

 

まずは、平野邸でのグリーンインフラ紹介です。

雨樋(あまどい)に貯まった雨水を庭にある池に流す仕組みについて、本日の講師、滝澤氏が構造を解説します。水道水を使って、実際にどのように雨水が池まで流れていくのかを見聞きして、大人も子どもも興味津々です。

 

雨樋からの水は防火用水の枡に一旦貯めておき、そこから溢れた雨水は竹樋を通って、植裁に散水させます。それと同時に、庭にある池にも流し込まれ、メダカを始めとする生き物が生息している池の水を循環させて水質改善を促します。常に新鮮な水の池は、生き物にとって暮らしやすい環境です。

 

また、雨樋の水が池へ流れ込む一連の仕組みがビオトープのひとつとなり、水場があることで、鳥が来ることもありますし、暮らしのなかでの多様な生物共存を可能にしています。さらに、雨水を貯めることで、洪水を抑制することにもつながります。

 

例えば、住まいがマンションであっても、ミニビオトープをベランダに作ることで、雨水を生かして多様な生き物が共存する様子を身近で観察できることがわかりました。

 

 

ミニビオトープ作りをしてみよう

 

では、雨水でイノチが循環していることについて理解したところで、いちばんのお楽しみのミニビオトープ作りを始めます。

今回作るミニビオトープで必要なものは以下の5点です。

 

1)桶: ミニビオトープとして使えるもの

2)植物:水生の多年草

3)土:粘土質が強く重い荒木田土

4)メダカ:4,5匹

5)水:まずはカルキを抜いた水道水。ゆくゆくは雨水を利用

 

※作業に伴うシャベルやメダカを入れる容器、メダカを飼育しつづけるための道具なども必要です

 

それでは、ミニビオトープづくりの様子を順を追って解説します。

 

 

1.桶に土を敷く

桶に植物の根が張れる程度の厚さに土を敷きます。

あまり薄すぎても根が張れませんが、逆に多すぎると入れられる水量が少なくなるので、浅い桶よりも深めの桶のほうが作りやすいでしょう。  

2.レイアウトをする

 

次にレイアウトです。水生植物をどのようにレイアウトするのかを考えます。

今回用意した水生植物は以下の6種類です。

 

・マルバキカシグサ:多年草

・フトイ: 水質を浄化し、白い花が咲く

・デンジソウ:多年草で、葉が浮く

・黄斑ヒメアシ:屋外で越冬でき育てやすい

・ミゾカクシ:多年草で、繁殖力が強い

・ガガブタ:多年草で、浮葉植物

 

水生植物について記載された資料を見ながら、いずれ背が伸びるものや花が咲くものなど、それぞれの特徴を知り、これらの植物が成長した姿をイメージしてレイアウトを考えます。

 

 

植物は、生き物にとって隠れ家になったり、餌を供給したり、重要な役割を担っています。

レイアウトを考えて配置したら、ビニールポットを外して植え込みましょう。

 

 

3.水を入れる

いよいよ水を注ぎます。

勢いよく注ぐとレイアウトが崩れたり、土が舞って水が濁ったりするので、ゆっくりと注ぎましょう。

  

 

メダカを入れる場合で、水道水を使用する場合は、カルキを抜く必要があります。カルキ抜き薬剤または太陽光(紫外線)に長時間当てることでカルキを抜くのですが、今回はカルキ抜き薬剤を使用しました。

 

 

5.メダカを入れる

 

まずは「水合わせ」をします。

 

「水合わせ」とは、これまでメダカがいた水温と、桶の水温を馴染ませることです。水温が異なると急激な環境変化のショックで、メダカが死んでしまうことも…。

 

そうならないために、桶の上にメダカを入れた袋や小さい入れ物を浮かしておくなどして、同じ環境下(気温や日照具合)に置いて水温を合わせます。より丁寧に行うなら、時間を置きながら桶の水を少しずつ追加するなどして、水温や水質を同じ状態にすると良いでしょう。

 

今回、葉山の原種の葉山メダカ(黒メダカ)と、観賞用のメダカを提供していただきました。

背中のきらめきが美しい観賞用のメダカ。

葉山メダカ店主の熊谷さんからは、メダカの生態、育て方のほか、観賞用のメダカは外来種のため、絶対に放流してはいけないというお話をお伺いしました。

 

また、参加者からたくさんの質問が飛び出し、丁寧に回答してもらいました。

 

 

作ったビオトープは、小さいながらもいずれは湿地として楽しむことができます。根が水に浸かり、葉や茎が水面の上にたなびく抽水植物が茂る姿を見られる日が楽しみですね。

 

 

レインガーデンの見学

 

ミニビオトープ作りのあとは、平野邸から歩いて5分ほどの場所にある花の木公園に向かいます。雨水を敷地で貯めて浸透させることで、洪水を抑制するレインガーデン(「あまにわ」とも呼びます )を構成している様子を見学しました。

レインガーデン用に掘り起こした場所は、実験中として囲いがされています。 レインガーデン用に掘り起こした場所は、実験中として囲いがされています。

 

公園など、人がよく歩く場所の土は踏み固まりすぎて、雨水が浸透しません。浸透しない雨水は地表を流れてしまい、浸水被害の原因のひとつにもなります。

 

そこで、地面の一部を掘り下げ、砕石を充填し、石の空隙に雨水を貯留すると同時に浸透するように工夫しています。

レインガーデンに水が流れにくい場合は、水が流れる経路を作って水を呼び込む工夫をします。

レインガーデンに水が流れにくい場合は、水が流れる経路を作って水を呼び込む工夫をします。

 

暮らしのなかで雨水を意識してみよう

 

普段の暮らしのなかでは、雨水について関心を持つことはなかなかありません。

 

関心を持ったとしても、「雨水を利用する」というよりは、「いかに雨水には濡れずに快適に過ごせるのか」という観点で、生活や過ごし方について考え、取り入れるほうが多いですよね。

 

しかし、自然のバランスを考えないまま「人間だけの快適」を追求し、社会が発展した結果、災害、水害が増えているのは残念ながら事実です。

だからこそ、これからの私たちは、動植物との共存を前提としたグリーンインフラを意識した暮らし方を取り入れ、地域の治水や災害防止について考えていく必要があるのではないでしょうか。

 

身近にある水について意識するには、生き物を飼育したり、植物を育てたりすること、またそのための材料となる水や土、植物などに目を向けてみることが第一歩になります。

 

今回の体験で、“ふむふむ”と理解したり、納得したり、イノチとカガクを身近に感じたことをきっかけとして、未来の科学者が生まれるかもしれないと思うととても楽しみです。 

 

 

 

【ご参加いただいたお子さまの感想】

 

執筆

LIFE IS LONG JOURNAL編集部

 

LIFE IS LONG JOURNAL編集部。 ”LIFE IS LONG JOURNAL”は「人生100年時代」を迎え、すべての人が自分らしく充実した人生を歩んでいくための「健康寿命」を伸ばすために役立つ情報を発信するメディアです。

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