前回のコラムに引き続き、体とピアノの演奏の関係について、もう少し掘り下げていきます。
やっぱり姿勢は大切ですよね。やっていただけてよかったです!
姿勢とバランス
ドクターKが感じたコツを掴む、ということは、演奏技術を格段に上げる秘密が隠れています。
その中で重要な点に3つの「バランス」があります。
体、椅子の位置(高さ、配置)、手の置き方と3つのポイントがきちんと合っていること。
これに前回お話しのでた体幹が備わって、安定した演奏ができます。
姿勢のバランスが悪いと視点も定まらず、結果どんなに指を鍛えてもほしい音がでません。
おすすめの練習方法
バランスが取れるようになってきたら、指のトレーニングです。
指が鍛えられていないと、たとえバランスが良くてもフレーズや個々の音にばらつきがでてしまいます。
それを防ぐために指が独立して動く必要があります。
まずは簡単な指のトレーニングをご紹介します。
① ドからソまで登って降りる
②ドから上のドまでスケール(音階)練習
ド、レ、ミ、、、上のドまでいって帰ってきます。(ミまでいったらファで親指にします)
・まずは片手ずつ、しっかり大きめに深みのある音を出します。
・片手ができたら両手でやってみます。
・滑らかに弾けるようになったら、スタッカートやタータタ、などリズムを入れてみます。
これらを何度か繰り返してから、メインの曲の練習を行なっていただけると良いかもしれません。
スポーツでいう、準備体操のイメージです。
守りたいのは、上記の姿勢やバランスを守った上で、
指を鍵盤に並べて、指を一本ずつ動かす意識で1音1音確認しながら指を動かしていきます。
この基本の動きをマスターしたら、教本を使って色々な動きに挑戦していきましょう。
トレーニングに特化した教本
トレーニングを目的としたピアノ教本は多くありますが、
代表的なものをあげると、ハノン、バーナム、ツェルニーなどなど。
また難易度は上がりますがショパンのエチュードなど楽曲としても優れたものが多数あります。
初心者の方は簡単な音である、バーナム、ハノンからやってみることがおすすめです。
バーナムは、1曲1曲が短く、お子さんはもちろん、大人の方にもしっくりくるユニークなイラストで、
タイトルも体の動き(歩こう、走ろう、など)をイメージしやすいです。
ハノンは、今でもおさらいしますが、指のトレーニング、スケール、アルペジオ、トレモロ、オクターブ、など調性の感覚もかなり鍛えられます。
後書きに書かれていますが、プロを目指す方は、全曲60分で通すようコメントされています。
とはいえ、これを全曲通すのは相当の忍耐力と、腕のバランスが必要です。
私はひたすら1番を様々な弾き方で繰り返して練習しています。
また、楽曲として素晴らしい練習曲があり、ショパン、ラフマニノフ、など様々な作曲家がエチュード(練習曲)を作曲しています。
例えばショパンのエチュードは、簡単ではありませんが、楽曲の美しさは抜群です。
今回はそのショパンのエチュードから、冒頭のメロディがとても有名な「別れの曲(Op-10-3)」の動画をご紹介します。
実は、これはショパンが練習曲として作曲したものの1つです。
2分30秒付近から激しさを増していき、高度な和音の移動テクニックが要求されます。
冒頭の有名なフレーズからの、激しさと柔らかさ、緊張と弛緩。
テクニック重視でなく、音楽性を保つことが重要な楽曲です。
仲道郁代さんの演奏です。
ピアノとスポーツは似てる?
産経のWebニュースで面白い記事がありました。
プロゴルフプレイヤー、ベン・ホーガン氏の言葉です。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58234880Y0A410C2000000/
この記事によると、ピアノの練習とゴルフのスイングはとても似ている、とのことです。
頭で考えて音を出すのではない、頭で理屈をいくら覚えていたとしても、体が覚えていなければできないのだ。
この点で、ゴルフのスイング同様、と記事には書かれています。
なるほど、と思いました。
どんな技術にもつながるお話です。
ではこの記事に書かれている、体が覚えるまで、とは一体どのくらい練習をする必要があるのか、
考えてみます。
初めのうちは、誰もが手探りです。
恐る恐る触れてみたり、音を出します。
知っている曲のメロディを探して遊んでみたり、なんとなくできたような気持ちになっていきます。
それがやがて、難しい曲やプレーに取りかかった途端、壁にぶつかります。
その時に諦めてしまう方も多いかもしれません。
ですが、一度やると決めたら、
繰り返し繰り返し体に覚え込ませ、考えなくても体が自然に動く、フレーズを弾くことができる、
難しかった曲や、プレーができるようになっていく。
この「繰り返し」がないまま、すごい技術が身につくような魔法はありません。
繰り返しの回数は無限です。10、20回やれば良い、という世界ではありません。
どのくらい練習をする必要があるか、その答えは「感覚的にできるようになったと感じる」くらいの量です。
まさに、ホーガン氏がいう通り、毎朝必ずスイングの練習を行う、なのです。
プロであったとしても、です。
いえ、むしろプロの方ほど基礎の練習が結果を生むのでしょう。
一部の天才と言われる方の中には、脳で考えたことと体の動きがピッタリ一致してしまう、
すごい能力がある方もいます。つまり勘や筋が良い、という方々。
とはいってもその方々も、幼少期など過去に何かしらのトレーニングをしているはずです。
どうしても何かを極めるためには繰り返しの練習、訓練が必要です。
先ほどご紹介した、指の練習法で考えると、
彼の言う「頭で考えずにできる」とは、意識せず、指を見なくても、しっかりとした確実なタッチができること、
そしてバランスが取れた弾き方ができる、ということを示していると思います。
体は一度覚えた動きや感覚を忘れません。
一度勘所を掴んでしまえば、これまでうまくいかなかったことができていく。
そして一段、また一段とレベルを上げていくもの、と考えます。
やめないメンタル
昔から数多くある人気の漫画やアニメたち、
スポーツ系(巨人の星、キャプテン翼、スラムダンク)、戦闘系(ドラゴンボール、ワンピース)などなど。
次々と敵と戦うストーリーの裏には、必ずといっていいほど、ものすごい練習、修行、
そして人間としての葛藤や気づきなどドラマに満ち溢れています。
そんな漫画を見て、励まされる方も多いと思います。
大抵のドラマには挫折があり、それを乗り越える過程を見守ります。
そしてその挫折に打ち勝った後の戦いで、主人公は何かを掴むわけです。
誰もが面倒になったり、諦めてしまうことはたくさんあります。
やめてしまえばそれまでですが、諦めない心、続けるパワー、努力は確実に人を成長させます。
そしてコツコツと努力をした後には、飛躍的な戦闘力(=演奏力、技術力)が備わっていきます。
そこまでの壮大なドラマがなくても、努力とは日々の自分との戦いであり、比較対象は自分です。
昨日の自分よりもうまくなった!明日は今日よりもっとうまくなる!
こういった自分主体の目標は、自分を大切に考えることにつながります。
人と比較してしまうと、妬みや嫉妬のようなマイナス感情となり、
隣の芝を羨んだり、環境の責任にしがちです。
例えば、あの人は〇〇だからできるんだ、自分には〇〇がないから無理だ、といったこと。
どなたにも少なからず覚えがないでしょうか。
あくまでも自分の環境、テリトリーの中で比較し、
努力した結果が少しでも出た時には、大いに自分を誉めてあげましょう。
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今日は演奏とスポーツの観点で、練習とは、努力とは何なのかをテーマにしました。
みなさんは今日からどんな練習をしてみますか?
最近ダンスとかイラスト書くのに忙しくて、ピアノほとんど弾かなくなってきちゃったけど…また始めてみようかな
ワンワン(応援してるよー)!!
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今日の1曲は、強い心をイメージした曲です。
よかったらお聴きください。
自分に負けず、頑張りましょう!
前回のレッスンで椅子を後ろにすると聞いてから俄然コツを掴みやすくなりました!