ドクターKのピアノレッスンが始まりました。
エリックサティの「ジムノペティ」です。
音の間隔がうまく掴めないですね。飛ぶし同じ和音はないし、手強い!
マミィは、左手のみで、手を見ずに間隔を覚えることをしばらく薦めました。
ですが、なかなかコツが掴めないようです。
そして何回めかのレッスンで、気づいたのです。
そうか、目線と肩の動きにヒントがあるのかも。あとマミィは体幹がしっかりしてる気がします。
確かにその通りです!スポーツの考え方と似ているかもしれません。今日は身体目線で、ピアノを弾くために必要な体の置き方、考え方について考えてみましょう。
体幹の重要性
ピアノに限らず楽器を演奏するときに、見落とされがちですが重要なこと、それが体幹です。
みなさん、割と手先で弾くものと思いがちですが、実は体感がばっちり決まっていないと、
バランスの取れた両手の動き、音のコントロールができないのです。
第15回目のコラムでご紹介したピアニスト、ユジャ・ワンも体幹が完璧に鍛えられている一人です。
ピアノを習うときに初めから体幹の話まで行くことは少ないと思いますが、
音域が広くなってきたら、ぜひ取り入れるべきテーマです。
重心の移動について
ここで、体幹を感じる上で重要な、重心の移動を意識した練習方法をご紹介します。
まずは座り方の基本から。
- 椅子の位置:ピアノの中央に腰掛けられる位置。必ず鍵盤と水平にする。また座った時に鍵盤との間隔はこぶし二つ分程度距離を取ること。
- 座り方:椅子に浅く腰掛けます。(すっと立ち上がれるくらい)
- 足はちょっと開き気味にして、重心をしっかりと乗せてやや前傾姿勢を保つこと。
上記の姿勢を保ちつつ、3の指でまず左手で下のドから弾いていきます。
1オクターブずつ上げていき、中央で右に交代して、さらに高音のドまで。
88鍵のピアノであれば、8個のドがあります。
ゆっくり、左から中央、右へ、と手の位置に合わせて重心を移していくのを感じてやってみます。
低音を弾く時には、自然に上半身が左に傾きます。
上半身を寄せすぎないように。お尻は椅子につけておきます。
慣れてきたら徐々にテンポを上げて、滑らかに重心の移動ができるようになるまでやります。
この練習をする時の注意ですが、肩や腕に力を入れないようにしましょう。無駄に力が腕の途中で止まらないように。
また、どの位置の鍵盤を弾くときも、常に手首が真っ直ぐになっているのが理想です。
重心をどこに置くのか
ピアノを弾く時に自分の重心がどこにあるべきか。
答えは、音の高低に合わせて変える、です。
高音から始まるから、と椅子を高い音域の方に置く方がいらっしゃいましたが、
それは小さいお子さんの場合のみです。
足が下につく大人の方は、重心でコントロールしてみてください。
ゆっくりと音数が少ない場合はまだ良いのですが、
早い動きの多いフレーズを弾く際に、重心、体幹の使い方が悪いと、フレーズの流れをキープできなかったり、
音の跳躍で外してしまったり、と問題が生じます。
まずは基本の座り方、そして水平を保つために、腰から上を自由に動けるようにしておく必要があります。
基本ができていないと、実際長時間の練習の結果、腰痛や腱鞘炎などの原因になります。
何事にも通じることですが、悪い姿勢で長時間過ごすことは無駄に疲れてしまい、体のバランスにも影響が出てしまいます。
プロや上級者のみならず、初心者であっても同様です。
悪い姿勢のまま、楽しくなって無理な姿勢や無駄な力をかけて弾き続けた場合、
疲労から腱鞘炎になってしまうこともあり得ます。
スポーツとピアノ
スポーツのトレーニングで思いつく言葉をあげてみると、
筋肉の強化、メンタルの強化、俊敏性、その他諸々、
それらは、ピアノを弾く時にも連想できるキーワードです。
スポーツのトレーニングとピアノを弾くためのトレーニングは、使う筋肉に差はありますが、近い関係にある、と感じています。
意識的に必要な筋肉や、早い動きに対応するための動きを鍛える必要があります。
私のレッスンでも生徒さんに技術、特に手の置き方や、指使い、力の掛け方を説明するときには、
体の動きでイメージしていただくように心がけています。
言葉で色々と説明するよりも、よりわかりやすいようです。
スポーツのコーチングも同様ではないでしょうか。
例えばボールなど道具の使い方、体はどのように固定すべきか、などなど。
お手本を見るだけではわからない体の動きも、体の具体的な動かし方や置き場所を理解すると、
無理なくスムーズに目的の動きがイメージできます。
ピアノを弾くときに、上手な方の動作をよくみてみることも重要です。
実際マミィの弾いているのをみていると、肩が内側に向いてることに気づいた!自分は外に向かってたから、動きがぶれちゃうのかもな。
なるほど、そういった見方もありますね。さすが、スポーツをやられている方の視点は的を得てますね。ピアノの場合、肩を開くよりも閉めた方が、動きをコントロールできるためかと思います。
視点について
体幹と並んで、ピアノを弾く際に重要な部分は、どこに視点を置くか、です。
例えば野球、ゴルフ、サッカーなどの球技スポーツの場合も、視点は重要だと思います。
ボールがこの先どこに落ちるのか、ある程度予測をしてプレーヤーは動きます。
それと似た話で、次の音が2オクターブ離れたソの音であり、しかも休符がない。
弾くべきタイミングに間に合うように、腕や手に素早く動くよう、脳が指示を出します。
それに見合った動きが同時に行われるわけです。
その時に、視点が定まっていないと、的を外してしまいかねません。
行く先にスッと目線が動いて、行く先を予測することが必要となります。
実際、エリック・サティのジムノペティを弾く場合、左が大きく(2オクターブ)跳躍しています。
我々のような経験者は、楽譜をみて、手を見ないで弾くことができるようにトレーニングしているため、手元を見ずに移動をすることができますが、それをするためには、鍵盤全体の間隔をざっくり掴んでいること、また全体がなんとなく見渡せていることが前提なのです。
1つの鍵盤ごとの単位で視点を捉えていると、視野が狭く、音のジャンプは難しいので、
可能な限り、広く視界に入れながら狙いをつけて弾くことをおすすめします。
ジムノペティは、低音の音から、スピーディに中央の和音に手が移動しなければなりません。
どこに向かうのか、明確に位置を確認しながらでは間に合わないです。
私は親指の位置、それと手の形、これである程度和音はきちんと掴める、と考えています。
まず何の和音に向かうか、左手を移動させる場合、シンプルに親指にどの音がくるかを認識しておくと、外枠が決まります。あとは、和音の並びに対してどの手の型を使うか、です。
なかなか難しいことではありますが、
三和音の型は三種類です。つまり、三つの型を手に叩き込めば、押さえることができます。
88もの鍵盤から、自分が弾きたい音に移動するためには、
まず目標を一瞬で捉えることが必要なのです。
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今日はピアノを弾く時の体の置き方、考え方に触れました。
もしや全ての動きにもリンクすることなのかもしれません。
本日の音は、左手の跳躍をジムノペティ風に入れた曲にしてみました。
跳躍の多い曲は、テクニック的には大変かもしれませんが、やはり華やかになりますね。
ぜひお聴きください!
今日の曲は、左手がかなり飛びますね。