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表と裏、赤と黒、良い悪い、などと同じく、音にも明るい悲しい、があります。

またそのいずれもその中間が存在しています。

 

 

コハルちゃんがピアノを弾きにやってきました。

 

今日は学校つまんなかったー

そっかー、そういう日もあるよねぇ

だからピアノも弾きたくない!

(きたきた…)まぁまぁそういわないで、せっかくだから今の気持ちをピアノで作ってみようよ

 

無理矢理感はありますが、ピアノに座ってもらえました。

 

今日はコハルちゃんの気分に合わせて悲しい感じの曲を作ってみようか。

 

 

 

明るい、暗いを響きで表現する

 

 

 

第4回目のコラムで12の調性のお話をしました。

前回はあまり触れませんでしたが、調性には明るい響きと悲しい響きの二種類があります。

 

明るい →  長調(メジャーMajor)

悲しい →  短調(マイナーMinor)

 

 

ここで以前コラムでご紹介した、「サークルオブ5th」の図をおさらいしましょう。

内側の円に位置するものが、「悲しい」調性です。明るい調の3度下の音が基本の音となります。

 

 

この2つの関係は、兄弟のようなもので、「平行調」と呼ばれます。

調号も共通となりますが、短調には決まった場所に臨時記号が必要です。

また、同じ音から始まる長調、短調のことは同主調と呼びます。こちらはそれぞれ調号が変化します。

 

 

 

 

 

 

長調と短調とは、曲のカラーのようなもので、その曲がどういった色をイメージしているのかを決定します。ビビッドなはっきりした色の曲もあれば、グレーがかったイエローのようにはっきりしない色合いの曲もたくさんあります。

 

 

 

 

悲しい和音の作り方(短三和音)

 

 

 

簡単に悲しい和音を作るやり方を教えちゃうよ!

ドミソの和音を弾いてみて!

うん。(ドミソ~♪)

真ん中の音をフラット(半音下げる)にしてみてごらん

わ!!悲しくなったよ!

 

どの和音も一緒だよ。例えばレファ♯ラ→レファラもそう。

ほかもやってみよう

 

コハルはしばらくの間、色々な和音を弾いてみました。

明るい、悲しい、と響きがくるくる変わります。

 

 

 

 

短調の和音を使って遊ぶ

 

 

色々試していくうちに、コハルは悲しい和音が大好きになりました。

悲しい和音から明るい和音に変化した時、光が差すような感じがします。

 

 

今の気分はEmかな!

 

 

さっそくメロディをつけて遊んでみることにしました。

 

 

マイナーコードを使った曲(作・演奏コハル)

 

 

すごくいい感じ!!Cが入るところ ( 0:13)、とてもいいよ。

コハルちゃんが弾いたコードはシンプルなマイナーとメジャーコードでしたが、メロディに選んだ音が、コードの構成音以外だったんだね。そのおかげで響きが変わって、セブンス(7th)という、三和音に7音目をプラスした響きになっていました。ちょっと雰囲気が大人だよね。

 

実は本人はその狙いもなく、単純に好きな音を選んでいた、ということが面白いです。

彼女が普段聴いている音楽や、私が弾くピアノに無意識に影響されているようです。

 

 

 

CからCm、GからGm、とコードの変化を入れた曲を作ってみました。

切ないイメージですが、最後は明るくDで終わります。

 

 

マミィのメジャー、マイナーのコードを交互に使った曲

 

 

 

ぜひみなさんもマイナーコードを鳴らしてみましょう。

コードの中央の音を半音低くすると簡単に短調の和音ができます。

 

Cのコードの鍵盤位置です。赤い丸はメジャーの和音です。

真ん中のミを青い枠の鍵盤にするとマイナーとなります。

 

 

 

私は長調でも短調でもないような、中間のムードが大好きです。今回のコハルちゃんの曲もそうですね。

短調であっても明るい音を入れてみたり、和音も音を追加していくと、ぐんとイメージが広がります。

 

 

 

コードを足し算してみると?!

 

 

 

長調、短調をはっきりと区分けする和音は3つの和音(三和音)ですが、

音を追加すると、7thコード、9thコードなどジャズ的なハーモニーに変化します。

メジャー、マイナー2つの要素を合わせている、といえます。

 

 

悲しいと楽しいの足し算だね。

そうだね~。こうやって和音と和音を合体していくと、色々な響きに出会えるよ。

 

音が足されるほどに、響きが複雑になっていき、複雑な分大人っぽい響きとなります。

 

 

 

中間の面白さ

 

 

例えば、ドミソのミを抜くと、ドとソ。これだけ鳴らすと長調か単調かわからない、中間のムードが出ます。

先ほど、真ん中の音によって、明るい、悲しいの印象が変化することを逆手にとってみるわけです。

 

これが、まさに中間のあたりです。長短をはっきりさせず、メロディもどこか不安定と感じるかもしれません。

ところどころに長短が混じると、心の揺れだったり、迷いのような部分を突いてくると思います。

 

晴れでも曇りでもない天気や、嬉しいような悲しいような複雑な心の状態があるように、

音楽でもその中間をいったりきたりすることは、ポピュラーでもよく使われています。

 

 

社会生活を行っていると、白黒の選択を迫られる場面にたくさん遭遇します。

やるかやらないか、行くか行かないか、どちらを食べるか、などなど、日常は選択の嵐です。

スパッと即決できる場合はとても気持ちがいいですが、

迷う時は、相手が待っている場合、じっくり選べず後で後悔したりします。

 

そんな毎日だからこそ、音楽や芸術の世界くらい、中間を行ったり来たりしてみるのもよいのではないでしょうか。

自分のメロディがさまよっても誰も困らないし、行ったり来たりしている音や自分を許してあげたい、

そんな気持ちになります。

 

 

エリックサティの楽曲で「サラバンド」というピアノの曲があります。

 

まさにこの曲は、私のイメージの行ったり来たりを表現しています。

止まったり歩いたり、迷いながらもしっかりと自分を見つめているような曲です。

メロディもハーモニーも行きつ戻りつ、唐突に聞こえるハーモニーも、不思議と溶けていきます。

 

調性としては変ホ長調(E♭)と、長調ですが、もはやこの曲が明るいのか、悲しいのかなかなか難しいところです。

一言で言うならば、とてもとても切ない調と私は感じます。

 

 

エリック・サティ サラバンドNo.1

 

 

音楽の世界は多様であり、白か黒か、0か100かの世界だけではありません。

だからこそ、行き着く先が見えない曲もたくさんあります。

正解は一つではないのです。

 

音楽の世界で、たまにはじっくり迷ってみましょう。

そんな迷いの中から、ある日新しい選択肢が生まれるかもしれません。

 

 

 

 

参考文献

・楽典 理論と実習 石桁 真礼生, 末吉 保雄, 丸田 昭三, 飯田 隆, 金光 威和雄, 飯沼 信義 著

執筆

ピアノ講師、ピアニスト、作曲家

東 真未

 

7才よりピアノを始める。洗足学園大学ピアノ学科卒業 。 ドビュッシー、サティ、バルトークなどの作曲家に影響を受け、幼少の頃より即興演奏に親しむ。 近現代の作品を多く演奏し、卒業後はピアノ講師として5才から80才まで幅広く講師を行う。 自身がリーダーを務めるグループにて即興音楽を行い、数多くのセッション、バンドにキーボード として参加。作曲、アレンジ、ライブ活動、劇団や創作童話への楽曲提供及び演奏を行っている。 世代を問わず、たくさんの方と本気で音楽を楽しむ!をモットーに講師や演奏ををおこなっており、今後のテーマはピアノを使った老化予防や効果的な練習法について、さらに取り組んでいきたい。

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