ドクターKのピアノレッスンがはじまりました。
音符の長さを示しているためですね。
長くのばす音符から始まって、短い音になった時にテンポが速くなったように感じる。マミィが弾いてるのを聴いても。
テンポは変えてないのですが、音数が増えて動きが多くなるとそう感じるのかも??拍子を取りながら弾くといいかも。
今日は拍子や、音符の種類の話をしてみましょう。実は音符は数字で溢れてるんですよ。
音符の種類と長さ
よく見慣れている黒玉に棒がついたもの、尻尾のあるもの、など音符にはさまざまな種類がありますよね。種類が多い理由は、音の長さ(音価)を示すためです。
皆さんは下の図の音符を全部ご存知ですか?
拍、というのは音符の長さの単位です。
四分音符を「1」拍として表現しています。
これら音符の名前につく数字には、共通点があります。
それは全て2、4、8、16、いずれも偶数だというところです。音符の名前に奇数が出てきません。
全て割り切れる数になっていますね。
音符の名前について、もう一つ特徴があります。
音の長さが短くなるほど、音名の数字が2倍に増えていくという点です。
名前 長さ(全音符を1とした場合)
全音符 →1
2部音符→1/2
4分音符 →1/4
8部音符 →1/8
16部音符 →1/16、、、、この後も音符名の数字は倍に増えていきます。
数字は増えていくのに、長さは短くなる、音の長さを多く刻んでいく、という考えのためです。数の大きさ=音の長さではないということです。
偶数しかない、とお話しましたが、
では奇数の長さを伸ばしたいときはどうしたら良いでしょう。
例えば5つ伸ばしたい時は、下記の図のように「付点(黒い点、音符の半分の長さを追加)」や「タイ(同じ音同士を伸ばす線)」を使います。
例;2+1=3、3+2=5
知れば知るほど、音符は算数ですね!
ところで、やっぱり気になることが…音符の名前ってどうして偶数だけが使われてるのかな?9部音符とか、1部音符がない理由は?
もしも1分音符や5分音符があったら、、
と、その前に
奇数音符がない理由
そもそも全ての音符の基準となった長さ、それは1番長い全音符と1拍を示す四分音符ではないかと思うのです。
我々ピアノの講師は音符の長さを説明するのに、りんごやケーキなどをよく例に出します。
りんご全部 → 全音符
りんごを半分→二分音符
りんごを4等分→四分音符
…つまり、りんごを幾つに割ったかを音符の名称とする考え方です。
ここに奇数が入った途端、サイズが割り切れなくなります。
例えば、りんごを7等分したら?それはとても分けにくい(弾きにくい)音符となります。
長さの基準を測りやすくするため、分けやすくするために音符には偶数(整数)のみ使われているのです。
拍子のこと
1小節の中にいくつの「拍」が入るか。
それを決定するのが、音部記号の横にある分数のようなもの、これが拍子記号です。
その曲が3拍子なのか、4拍子なのかがここで決まります。
赤い丸の4は、4分音符の4を指します。この分母側で、音符の種類を指示しています。
青い丸の4は、4拍子の曲ということです。分子は拍子の数(1小節に4拍分入る)を指示します。
3/4なら3拍子(4分音符3個)です。
6/8 なら6拍子ですが、小さい3拍子が2回あるイメージです。
拍子がない音楽もあるの?
現代の音楽だとあるけど、それはとっても特殊だね。
誰かと演奏を行うためには、どうしても拍子の感覚が必要です。
それなしでは、感覚が合う人とでもピッタリと息のあったアンサンブルは困難です。
拍子がない音楽だった場合、それは果てのない時間のように感じ、不安感が生まれます。
もし仮に長い拍子があった場合も同様です。たとえば10拍子だったら、4+4+2拍子のように、細かく刻んで記載されることが多いです。
いずれにしても、一般的に安定感を感じる拍子は2~6拍程度です。
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音楽なのに数の話ばっかり。歌うとき算数なんて考えてない!どうしてこんなふうに決めたの??
算数が嫌だとちょっと悲しいかな?音楽と数字の関係がこんな風に決まったのには、昔の人の音楽への気持ちが入っているからだよ。
音符と数字の出会い
音楽に数字を用いたきっかけは、西洋音楽のルーツ、ギリシャ時代の思想や概念が影響していると言われています。
ギリシャ時代に「リベラルアーツ」といわれる、音楽を含む7つの教育が行われていたことをご存じでしょうか?
Wikipediaによると、「人が持つ必要がある技芸(学芸・技術)の基本」と見なされた自由七科・自由学芸のことである。
具体的には、文法学・修辞学・論理学の三学(トリウィウム)、および算術・幾何学・天文学・音楽の四科(クワドリウィウム(英語版))のこと」と記載されています。
算術や天文学と同等に音楽も学びます。
これら7つの学問をバランスよく学び、広い視野と感性を持った人こそ、独立し自由になれる、という考えです。
第2回目のコラムで、音部記号の始まりの時にピタゴラスが音程(調律)を決定した、とお話しましたが、
その後、記譜法のルールが定められ、数字に溢れた音の世界が生まれました。
残念ながら、この考えは日本にはありません。
文系、理系とで進路が分かれ、理系に進学した方が音楽を学ぶ場合、趣味として行うことがほとんどです。また文系、理系の区分けも大きく異なっています。
アメリカの大学ではグローバルな人材を育てるためには、その基礎として「リベラルアーツ」が必要と言われ、
実際、アメリカのマサチューセッツ工科大学、ハーバード大学など数多くの有名大学で、主専攻でロボット工学を学ぶ人が、
副専攻(またはその逆も)として音楽を履修し学位を得る、ということが行われています。
音楽を学ぶということが、音楽以外の専門分野のベースとなり、生かされるという考えです。
ということは、音楽のクラスに心理学やプログラミング専攻の方が一緒に学んでいるのです。
これは日本では夢のような環境です。実際アメリカの授業においても、お互いに刺激を与えていて、プラスになっているようです。
ぜひ日本にもこんな大学制度が生まれたら、と夢見てしまいます。
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かつて音楽は、歌い演奏しながら、人から人へ引き継がれた文化でした。
そこに数字の概念を加えたルールを伝え、共通化したことで、確実に同じメロディが再現できるようになりました。
また音楽のルールに数字を用いて基準化することは、伝達していく画期的な方法だったのです。
数字の概念と音の概念、相反する要素のようで繋がりがある、と思うとなんだかワクワクしますよね。
こんなに数字や計算が入ってたなんて、面白い!!あと、僕もそんな大学に通いたいなあ。
数字だけでは割り切れない感情を表現する
音楽は割り切れる世界ばかりではありません。ちょっとはみ出たり、寄せたり、という表現も当然必要です。
まただんだんゆっくりする、早くしていく、急にテンポを変える、なんていう人の感覚に近いものです。
数字ばかりのデジタルなものでなく、そのアナログな部分が、私が音楽が大好きな理由の一つでもあります。
曖昧さも含めて美しいものなんですよね。
これは算数で言うところの円周率みたいなものです。
永久に続く数字を程よく四捨五入してどこかでつじつまを合わせる、フィーリングの妙が必要な部分と考えています。
そんな時にどんな記譜法を使うかというと、割り切れない音符には下記の図のように「連譜」をいうものを使います。
3個の8分音符を括って、3連符と呼びます。3つまとめて1拍分とする、という意味です。5連符、7連符も同様に、それぞれ拍の中に奇数を詰め込みます。
揺らぐ感じに演奏するイメージです。
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リズムのテスト
さて、ここまでお知らせした、音符の長さについてテストします!
音符の算数問題です。長さを数字に変更してトライしてみてください。
(正解はコラム下)
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今日は、ご紹介した音符たちを使った曲を作ってみました。
長い音符(全音符)から16分音符、連符たちも登場させました。
ぜひ4拍子の拍を取りながら、聞いてみてください。
また、細かいフレーズの16分音符や5連符のところは早く感じるでしょうか?確認してみてくださいね。
お!早く感じなかったぞ。拍子をとる意味がわかった。
ぼくのさんぽのきょくにピッタリ!(ゆっくりからだんだんはやくあるいたり、くるくるしたり!)
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<リズム足し算の正解>
- 3
- 4
- 8
- 8
- 5
- 5
- 4
- 3
- 7
- 3
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<参考文献>
・数と音楽 美しさの源への旅 坂口博樹 著
・楽典 理論と実習 石桁 真礼生, 末吉 保雄, 丸田 昭三, 飯田 隆, 金光 威和雄, 飯沼 信義 著
・ハーバード大学は「音楽」で人を育てる 菅野恵理子著
<参考>
本物のリベラルアーツを日本人は知らない 東洋経済ONLINE
https://toyokeizai.net/articles/-/13769
あらためて見ると、音符って色々な種類があるんだなあ。