普段温泉に入る際、温泉の種類や効果・効能など気にして入る方はあまり多くないのではないでしょうか?ここでは秘湯と呼ばれる温泉の種類とその魅力をお伝えし、湯治によって得られる効果・効能を解説していきます。
秘湯の効果・効能
・そもそも秘湯とは?
「秘湯」とは交通の便が悪い場所にある、山の中の静かな温泉(宿)のことをいいます。
1975年ごろに「日本秘湯を守る会」の設立を提唱した岩木一二三氏が考案した造語で、歓楽地と化していた温泉のイメージを、旅を通した温泉本来の良さを知ってもらおうという取り組みから生まれたものです。
秘湯に定義はなく、秘湯ブームをきっかけに秘湯を名乗る温泉宿は全国に数多く存在します。周りに商業施設や脱衣施設がなく、自然の中にある「野湯」とは別に区別されます。
温泉はもともと温泉旅行のような観光目的ではなく、日常の喧騒から離れて、心身の疲れをとり英気を養うのが目的でした。
・泉質と効果
温泉には含有成分の違いよってさまざまな種類があります。温泉の種類を「泉質」とよび、泉質によって病気やケガの症状に効果が期待できる温泉を「療養泉」といいます。
環境省が定めた「鉱泉分析法指針」の温度や成分を含んだもので、10種類に分類されます。また療養泉によってもたらされる効果や症状を「適応症」と呼びます。
【療養泉】
・療養泉は温泉の分類の1つで、環境省が定めた指針の基準(温度や成分)を満たしたものを言う。
・療養泉は10種類の泉質にいずれかに分けられる。
・10種類→単純温泉、塩化物泉、炭酸水素塩泉、硫酸塩泉、二酸化炭素泉、含鉄泉、酸性泉、含よう素泉、硫黄泉、放射能泉
【適応症】
・適応症は療養泉に浴用または飲用することで、治療に効果が期待できる病気やケガなどの症状を言う。
・適応症には「一般適応症」「泉質別適応症」の2つがある。
・「一般適応症」は上記に挙げた療養泉10種類すべてに共通して得られる効果・効能
・「泉質別適応症」は10種類の泉質ごとに得られる効果・効能
「療養泉」であれば、どの療養泉に入浴または飲用しても「一般適応症」にある効果・効能が期待でき、それにプラスして泉質ごとに「泉質別適応症」の効果・効能が期待できる。
下記に療養泉の10種類それぞれの特徴と適応症をまとめました。
・単純温泉・・・アルカリ性単純温泉はpH8.5以上。低刺激で肌が滑らかになるという特徴があります。
自律神経不安症、不眠症、うつ状態
・塩化物泉・・・塩分を多く含む泉質で、皮膚に付着した塩分には汗の蒸発を抑える効果あるため保湿と血行促進などの効果があります。
きりきず、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症
・炭酸水素塩泉・・・炭酸水素塩泉を多く含む泉質で皮膚の角質をやわらかくする作用があります。
きりきず、末梢循環障害、冷え性、皮膚乾燥症
・硫酸塩泉・・・硫酸を多く含む泉質で、飲んで胆のうを収縮させ、腸のぜん動を活発化します。
きりきず、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症
・二酸化炭素泉・・・遊離炭酸を多く含む泉質で、炭酸ガスが皮膚から吸収され、保温効果や循環効果があるのが特徴です。
きりきず、末梢循環障害、冷え性、自律神経不安定症
・含鉄泉・・・総鉄が多く含まれ、空気に触れると鉄分が酸化するため色が茶褐色なのが特徴です。
・酸性泉・・・水素を多く含む泉質でpHの低い酸性で、刺激が強いのが特徴です。
アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、表皮化膿症、糖尿病
・含よう素泉・・・ヨウ素を多く含む泉質で、強い抗菌作用があるのが特徴です。
・硫黄泉・・・硫黄を多く含む泉質で、殺菌力が強く、表皮の細菌やアトピー原因物質を取り除きます。
アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、慢性湿疹、表皮化膿症
・放射能泉・・・微量の放射性物質(主にラドン)を含み、炎症に効果的です。
痛風、関節リウマチ、強直性脊椎炎
参考:環境省 温泉療養のイ・ロ・ハ
現代版 湯治のすすめ
湯治は病気やケガの本格的な治療を目的とし、長期間温泉地に滞在することをいいますが、
最近では2~3日間滞在する「プチ湯治」といった短期間の現代湯治が話題になっています。
・温泉療養
上記に10種類の泉質ごとに主な「適応症」を挙げましたが、適応症には2種類あります。
療養泉すべてに共通する「一般的適応症」と泉質ごとに定められた「泉質別適応症」です。
「一般的適応症」の効果にプラスして、療養泉ごとに「泉質別適応症」の効果が期待できるということです。
自身がもつ病気の症状やケガなどに適した療養泉を選ぶことで、温泉による効能・効果をより一層高められます。
下記に「一般的適応症」の特徴をまとめました。
・筋肉、関節の慢性的痛み、こわばり
(関節リウマチ、変形性関節症、腰痛症、神経痛、五十肩、打撲、捻挫などの慢性期)
・運動麻痺による筋肉のこわばり
・胃腸機能の低下(胃腸がもたれる、ガスがたまるなど)
・耐糖能異常(糖尿病)
・軽症高血圧
・軽い高コレステロール血症
・自律神経不安定症やストレスによる諸症状(睡眠障害、うつ状態など)
・軽い喘息・肺気腫
・痔の痛み
・冷え性、末梢循環障害
・病後回復期
・疲労回復、健康増進(生活習慣病改善など)
一般的適応症だけ見ても、かなりの症状の改善と苦痛の軽減が期待できることが分かります。
参考:環境省 温泉療養のイ・ロ・ハ
・【湯治で行きたい】おすすめの温泉3選
全国に湯治宿は多数ありますが、その中でも代表的なものを3つご紹介します。
・草津温泉
引用:草津温泉ポータルサイト
日本三大薬泉と日本三名泉の一つとして数えられ、自然湧出量としては日本一。
【所在地】群馬県吾妻郡草津町
【泉質と効能】
泉質:酸性・含硫黄-アルミニウム-硫酸塩・塩化物温泉(硫化水素型)(酸性低張性高温泉)※湯畑源泉
効能:一般的には神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺、関節の強張り、打ち身、挫き、慢性消化器病、痔疾、冷え性、病後回復、疲労回復、健康増進、慢性皮膚病、動脈硬化症、切り傷、火傷、虚弱児童、慢性婦人病、糖尿病・高血圧症など
参考:湯Love草津 草津温泉観光協会サイト
(https://www.kusatsu-onsen.ne.jp/)
・板室温泉
温泉の効能から「下野の薬湯」と呼ばれ、古くから「湯治の里」として親しまれている名湯。
【所在地】栃木県那須塩原市板室
【泉質と効能】
泉質:37~45℃の無色透明アルカリ性単純温泉
効能:神経痛・筋肉痛・関節痛・五十肩・うちみ・くじき・運動器傷害・冷え性・疲労回復・慢性消化器症・病後回復期・健康増進・高血圧など
引用元:黒磯観光協会公式HP
(https://www.kuroiso-kankou.org/)
・玉川温泉
日本一の強酸性の温泉水と日本で唯一の天然岩盤浴
【所在地】秋田県仙北市
【泉質と効果】
泉質:pH1.2と極めて酸性が強く、硫黄臭と微量のラジウム放射線が含まれる
効能:〈浴治〉リウマチを含む神経系統の疾患、血圧等循環器系統の疾患、脊髄性並びに脳性小児麻痺、貧血症並びに白血球減少症、皮膚病、生体の免疫力・抗菌力の増強、健康増進に対する効果、肝機能の活発化に対する効果、疲労回復に対する効果、細胞の活性化と若返りに対する効果
〈蒸気吸入〉蒸気に含まれる微量の硫化水素ガスの吸入により、気管支炎や風邪、喘息に効果あり。
参考:秋田県田沢湖効能溢れる癒しの湯治宿
(tamagawa-onsen.jp)
まとめ
今回は温泉の泉質とその効果を解説してきました。
療養泉による湯治は短期間でも日々のストレス解消や疲労回復となり、健康増進にもつながります。
しかし泉質によっては肌質が弱くデリケートな方や「禁忌症」といわれる温泉に入浴・飲用することで体に悪影響を及ぼす可能性のある病気・病態がある方にとっては温泉を選ぶ際注意が必要です。
温泉を上手に活用することで免疫機能を高め、病気予防と療養の一助になればと思います。
【参考資料】
日本秘湯を守る会公式Webサイト
日本温泉協会 温泉名人
暮らしあと押しeo健康 温泉で体が良くなるのは本当?温泉療法医に聞く湯治の効果
あんしん・あんぜんな温泉利用のいろは 環境省