美味しいものを食べること、飲むことが大好きなので、いつかそんなお店をやれる日がきたら…と夢想することがあります。

夢想ながら、お店の名前を考えたりすることもあるのですが、第一候補は「てみたい」という名前です。

妙な名前だと思われたかもしれません。

 

食べてみたい

飲んでみたい

あの食べ物とこの飲み物を組み合わせてみたい

 

そんな人の好奇心を大事にするお店をいつかつくってみたい、というのが由来です。

「〇〇してみたい」と好奇心いっぱいの人の顔って、なんだかキラキラしていて素敵だなと思うのです。

 

心理学の世界では、好奇心は、「新奇な対象への接近と探索を動機づける本能」と定義されています。

私たちが新しいものに近づいて、もっと知りたくなる原動力のこと、と言えそうです。

しかも、どうやら好奇心は私たちにとって心理社会面でいいこともありそうなのです。

例えば、人生に意味を見出すことや、創造性、チャレンジ精神との関連がみられています。

学業達成に対しても、知能、勤勉さに続く3番目の影響力を持っていることが示されていて、私たちの学びにとっても好奇心は重要です。

さらには、私たちの幸福度を意味する「well-being」との関連も示されています。

(well-beingについては、こちらの記事(「しわせって、なんだっけ」)もご参照ください。)

 

もっと具体的な場面でいうと、好奇心は私たちが新しい環境に入るときや複雑で変化する環境への適応においても、私たちの助けになるようです。

新しい環境や変化のめまぐるしい環境の中で、私たちに様々な情報を集める原動力を与えてくれることで環境への適応をサポートしてくれます。

また、新しい環境や変化の中にもポジティブな側面を見出すことを促してくれ、私たちが環境に適応するエネルギーをもたらしてくれるのです。

 

自分の生活を振り返ってみても、好奇心に満ちているときは、自分も「いい状態」にいるなと感じます。

 

「面白そうだな」

「あれやってみたいな」

「試してみたいな」

 

好奇心のスイッチを押すには、どうしたらいいのでしょう。

具体的には、こんな方法がおすすめです。

 

✓昔やっていたことで楽しかったことを再開してみる(部活でも趣味でも!)

✓最近いきいきしている友人や家族をまねて、同じことをしてみる

✓これまで訪れたことのない街、店、場所に行ってみる

 

このところ、すっかり秋めいてきて、夜が長く感じられるようになりました。

秋の夜長に、好奇心スイッチを刺激して、あなたの「てみたい」を見つけてみませんか。

 

【参考文献】

Harrison, S.H., Sluss, D.M., & Ashforth, B. E. (2011). Curiosity adapted the cat: The role of trait curiosity in new comer adaptation. Journal of Applied Psychology, 96, 211-220.

Kashdan, T.B., & Yuen, M. (2007). Whether highly curious students thrive academically depends on persections about school learning environment: A study of Hong Kong adolescents. Motivation and Emotion, 31, 260-270.

Von Stumm, S., Hell., & Chamorro-Premuzic, T. (2011). The hungry mind: Intellectual curiosity is the third pillar of academic performance. Perspectives on Psychological Science, 6, 574-588.

 

執筆

博士(心理学),臨床心理士,公認心理師

関屋 裕希(せきや ゆき)

 

1985年福岡県生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、筑波大学大学院人間総合科学研究科にて博士課程を修了。東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野に就職し、研究員として、労働者から小さい子をもつ母親、ベトナムの看護師まで、幅広い対象に合わせて、ストレスマネジメントプログラムの開発と効果検討研究に携わる。 現在は「デザイン×心理学」など、心理学の可能性を模索中。ここ数年の取組みの中心は、「ネガティブ感情を味方につける」、これから数年は「自分や他者を責める以外の方法でモチベートする」に取り組みたいと考えている。 中小企業から大手企業、自治体、学会でのシンポジウムなど、これまでの講演・研修、コンサルティングの実績は、10,000名以上。著書に『感情の問題地図』(技術評論社)など。

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