「人生100年時代」といわれる現代、長生きするだけでなく「どう健康に生きるか」が重要です。2020年に刊行された書籍『老化はこうして制御する「100年ライフ」のサイエンス』(日経BP社)は、老化に関する最新の科学と実践的なヒントを詰め込んだ一冊です。

今回は、この本で紹介された重要なポイントを掘り下げ、日常生活に役立つアイデアをお伝えします。この動画をきっかけに、科学に基づいた健康習慣を取り入れてみませんか?

なお、本記事はYouTubeで公開されている「【10分解説】老化研究者兼CEOが語る老化制御 1章「100年ライフを生きる基礎」」 (2021年2月19日公開)の内容を基に作成されています。最新の情報や個別の状況については、専門家にご相談ください。※1

老化と健康寿命をめぐる科学的知見

『老化はこうして制御する「100年ライフ」のサイエンス』は、人生100年時代の「解老新書」というキャッチコピーがつけられており、健康寿命延伸のヒントとなる情報をエビデンスに基づいて解説した、老化のFACTFULLNESSとなっています。※2

動画のなかで紹介されていたトピックスからさらに厳選し、ここでは5つのポイントをご紹介します。

健康寿命の延伸に必要なマインドセット

「長寿=幸せとは限らない」と感じる方も多いでしょう。しかし、近年の研究では、幸福感や前向きな姿勢が長寿に直結することが示されています。例えば、Science誌で話題となった論文「Happy People Live Longer」では、楽観的な人ほど健康寿命が長いという結果が得られました。※3

ポジティブなマインドで日々の小さな成功に目を向けることが、心身の健康に大きく寄与するということです。『老化はこうして制御する「100年ライフ」のサイエンス』のなかでは「プロダクティブ・エイジング」と表現されており、前を向いて歳を重ねることで健康寿命の延伸や長寿につながるといわれています。※2

老化は遺伝だけで決まらない

さまざまな研究において、遺伝が老化に与える影響は25%程度といわれています。残りの75%は生活習慣や環境で決まります。運動、食事、睡眠、そしてストレス管理などを少しずつ整えていくことで、老化をコントロールすることが可能となります。

フレイルを防ぐ秘訣

「フレイル」という言葉は、本書も含め、近年よく取り上げられるようになってきました。フレイルとは、身体的・精神的・社会的な活力が低下する状態を指します。身体的フレイルの定義としては、以下の5つのうち、3つ以上に該当することが挙げられます。

  1. 体重減少(6か月で2~3kgの減少)
  2. 疲労感(ここ2週間、わけもなく疲れる)
  3. 筋力低下(握力:男性25kg未満、女性18kg未満)
  4. 歩行速度低下(1m/秒未満)
  5. 身体活動量低下(週に1度も運動しない)

また、一般的にフレイルの人をイメージするなら、信号が青の間に横断歩道を渡りきれないような状態の人が当てはまります。

がんと認知症予防の共通点

本書で特に興味深いのが、がん予防と認知症予防の方法が驚くほど似ている点です。

国立がんセンターが公開している「日本人のためのがん予防法(5+1)」では、禁煙、節酒、食生活、身体活動、適正体重の維持という改善可能な5つの生活習慣に「感染」を加えた6つの要因が紹介されています。※4

一方、世界保健機関(WHO)が2019年にまとめた認知症予防ガイドライン(Risk reduction of cognitive decline and dementia:認知機能低下および認知症のリスク低減)には、認知症予防に関する12の項目が推奨されています。この12項目のガイドラインをある程度守ることで、認知症の発症率が40%も低下するといわれています。なお、禁煙による介入、アルコール使用障害への介入(節酒)、栄養的介入(健康的な食習慣)、身体活動による介入(運動)、体重管理の5項目が、前述のがん予防と共通しています。※5

私たちの日々の生活習慣に直接結びついている5つの共通点について、具体的に解説します。

  • 禁煙: タバコを吸わないこと、受動喫煙を避けることで、がんや認知症のリスクを大幅に低下させます。
  • 節酒: 飲酒量を減らすことで、さまざまながんや認知症のリスクを低減させます。
  • 適度な運動: 散歩や軽い運動でも、血流を促進し脳や体の健康を保ちます。
  • 健康的な食事: 野菜中心のバランスの取れた食事は、身体全体の機能を高めます。
  • 適切な体重管理: 肥満や極端な低体重を防ぐことで、全身の健康が守られます。

これらの当たり前の生活習慣を実践することが、健康寿命の延伸において大きな成果を生むのです。

見た目と老化の意外な関係

見た目の老化が気になる方も多いかもしれませんが、実際に「見た目」と「身体の老化」には相関があるとされています。ニュージーランド南島のダニーデン市で1972年から73年に生まれた約1,000人を対象に20年間追跡した研究(ダニーデン研究)では、外見が老けて見える人ほど、体内の老化指標についても老化が進んでいる傾向が確認されました。※6

その他の複数の研究からも、見た目と老化には相関関係があることが明らかとなっています。

健康寿命を延ばし、豊かな人生を楽しもう

『老化はこうして制御する「100年ライフ」のサイエンス』は、老化に関する知識を深めると同時に、日常生活に役立つ具体的なアドバイスを提供してくれる書籍です。本書で紹介されている科学的知識と実践法を取り入れ、健康寿命を延ばし、豊かな人生を楽しむための第一歩を始めてみましょう。

参考資料

※1 YouTube. NOMON研究所. 【10分解説】老化研究者兼CEOが語る老化制御 1章「100年ライフを生きる基礎」
※2 樂木 宏実 (監修). (2020). 老化はこうして制御する 「100年ライフ」のサイエンス. 日経BP社
※3 Bruno S. Frey. (2011) Happy People Live Longer: The pursuit of happiness can have concrete benefits for well-being. Science, 331(6017), 542-543.
※4 国立研究開発法人国立がん研究センター. がん情報センター. 科学的根拠に基づくがん予防 がんになるリスクを減らすために.
※5 WHOガイドライン『認知機能低下および認知症のリスク低減』邦訳検討委員会. (2020). 日本語版「認知機能低下および認知症のリスク低減 WHOガイドライン」
※6 Maxwell L. Elliott, et al. (2021) Disparities in the pace of biological aging among midlife adults of the same chronological age have implications for future frailty risk and policy. Nat Aging, 1(3), 295-308.

執筆

LIFE IS LONG JOURNAL編集部

 

LIFE IS LONG JOURNAL編集部。 ”LIFE IS LONG JOURNAL”は「人生100年時代」を迎え、すべての人が自分らしく充実した人生を歩んでいくための「健康寿命」を伸ばすために役立つ情報を発信するメディアです。

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