行動から気持ちの流れで変えてみませんか?

「にわとりが先か、卵が先か」という因果性のジレンマの話がありますが、「気持ち」と「行動」の関係にも言えることです。
「気持ち」が先か、「行動」が先か?
皆さんはどちらが先だと思いますか?
講演などで質問すると、「気持ちが先?」と返ってくることが多くあります。
たしかに、次のようなこと、ありますよね。

「なんとなく気力がわかなかったので、休日1日何もせずに過ごした」
「ちょっと憂うつな気分だったので、オンラインのヨガクラスに参加しなかった」

一方で、次のようなことはいかがでしょうか?

 

「花を買って飾ったら、家でも楽しい気分でいられた」
「オンラインで書道教室に参加したら、思いのほか達成感が得られた」

「行動」から「気持ち」の流れもありそうです。

では、私たちが自分で変えようと思って変えやすいのは、「気分」と「行動」のどちらでしょうか。
私たちが自分で変えやすいのは「行動」のほうだと言われています。
洗濯の例で説明してみたいと思います。
私は、家事の中で一番、洗濯が好きではありません。
干すのも、たたむのもあまり得意ではないので、どうしても洗濯物が溜まりがちになってしまいます。
このときの私の言い訳はこうです。
「やる気になったら、気分が変わったらやろうかな……」
どうなるかというと、洗濯物は、ただただ溜まり続ける一方です。
ですが、気持ちは全然変わっていない。
少しも「洗濯しよう」という気にはなっていない。
けれど、洗濯機のスイッチを「えいっ」と押すことは、私たちにはできるのです。
そして、洗濯してしまえたあとには、空になったかごを見て、ちょっとすっきりした達成感を感じられるのです。

もっとシンプルな例で言うと、こうです。
皆さん、立ち上がって、その場で10回ジャンプしてみてください。
どうでしょうか?
ジャンプする前と後で、ちょっとは気分が変わったのではないでしょうか。

 

このように、「行動から気持ち」の流れをうまく使って、行動を少し変えてみることで、私たちは気持ちにも変化をもたらすことができるのです。
心理学では、このような行動が気持ちに与える影響に注目したスキルを行動活性化と呼んでいます。
なんだか元気が出づらい、モヤモヤした気分のまま過ごしている、というときには、「行動→気持ち」の流れを活用して、いい気分で過ごせる時間を増やしてみませんか。

では、行動活性化には、どんな行動が向いているのでしょうか?
科学的には、「楽しさ」や「達成感」につながる行動に効果がある、と言われています。

【楽しさにつながる行動の例】
・家族や友人と電話やSNSでおしゃべり
・好きな本や映画を見る
・元気な音楽に合わせて踊ってみる
・コメディやお笑いを見る
・部屋に花を飾る

【達成感につながる行動の例】
・少し凝った料理をつくってみる
・筋トレやストレッチなど運動する
・花や野菜をプランターに植える
・部屋の片づけをする
・オンライン英会話のレッスンを受ける

個人的には、思わずくすっと笑ってしまうような、ユーモアのある行動もおすすめです。

 

・変装して1日過ごす
・家の中の移動はスキップで
・お笑い芸人の真似をしてみる
・普段なら絶対着ない色の組み合わせの服を着る(緑と赤!など)
・「はい」と言う代わりに「YES!」とジェスチャーつきで答える

バカらしいな、と思いましたか?
そんなことする気分になれないから元気が出ないのに、と。
そこにこそ、行動活性化の秘訣があります。
「そんなことする気になれない」行動こそ、私たちの気分を変えるきっかけをつくってくれるのです。
あなたは何から試してみますか?

 

【参考文献】

PLoS One . 2014 Jun 17:Behavioural Activation for Depression; An Update of Meta-Analysis of Effectiveness and Sub Group Analysis

執筆

博士(心理学),臨床心理士,公認心理師

関屋 裕希(せきや ゆき)

 

1985年福岡県生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、筑波大学大学院人間総合科学研究科にて博士課程を修了。東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野に就職し、研究員として、労働者から小さい子をもつ母親、ベトナムの看護師まで、幅広い対象に合わせて、ストレスマネジメントプログラムの開発と効果検討研究に携わる。 現在は「デザイン×心理学」など、心理学の可能性を模索中。ここ数年の取組みの中心は、「ネガティブ感情を味方につける」、これから数年は「自分や他者を責める以外の方法でモチベートする」に取り組みたいと考えている。 中小企業から大手企業、自治体、学会でのシンポジウムなど、これまでの講演・研修、コンサルティングの実績は、10,000名以上。著書に『感情の問題地図』(技術評論社)など。

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