今まで仕事や、家事などのストレスからお腹が痛くなった経験はありませんか?

ストレスによるお腹の痛みと、骨がもろくなる危険性に関係性がある事が発表されました。

この記事は薬剤師の視点から、症例を用いてストレスからのお腹の痛みの原因の一つである過敏性腸症候群(IBS)と骨の脆さの関係、そして骨が脆くならないために気をつける習慣を解説します。

ストレスでお腹が痛くなるひとは注意!過敏性腸症候群が原因かも?

過敏性腸症候群(以下IBS)は心・身体からのストレス、家庭環境・職場環境による環境ストレスによって小腸や大腸を含めた消化管全体が敏感な状態になる病気です。

小腸や大腸が敏感になることで、腸の運動が激しくなり、お腹の痛みを感じやすい状態になります。お腹の痛みを伴う下痢や便秘が数ヶ月間続くことで受診し、IBSと診断に至るケースが多いのです。

IBSは基本的に以下の4つの型に分類されます。

  • 便秘型ー硬い便やコロコロした便が多い
  • 下痢型ー軟らかい便や水の様な便が多い
  • 混在型ー便秘と下痢が同じ様な頻度で起きる
  • 分類不能型ー上記3つに該当しないが便の形状が異常

有病率は女性の方が男性に比べ高く、年齢とともに下がります。
女性は便秘型が多く、男性は下痢型が多いのも特徴的です。

過敏性腸症候群と骨の関係

骨が脆いかどうかの指標は骨密度の測定により知ることができます。
ストレスからのお腹の痛みがあり病院を受診した結果、IBSと診断され、骨密度の低下を指摘されたケースを紹介します。

1.症例からみる腹痛と骨の関係

  • Aさん 46歳女性
  • 30歳頃より度々下痢、軟便がある
  • 月経時以外でのお腹の痛みがあったので婦人科を受診

Aさんは健康診断で消化管に関して異常について指摘されたことはなく、普段は市販の整腸剤や下痢止めで対処していました。また、お腹の痛みがあることから食事は乳製品や脂肪分を避けるようにしていたようです。

考えられるストレス要因は職場での能力以上の要求や、失敗に対する不安です。受診時には涙ぐんだり、急に多弁になったりなどの情動不安があり、ストレスにより朝早く目がさめるなどの睡眠障害もみられました。

Aさんは診断の結果、IBSの下痢型と診断。さらに骨密度を測定した結果、骨密度の低下が指摘されました。

2.脳腸相関関係

Aさんの症例に見られるように、環境ストレスや仕事のプレッシャーなどの心身ストレスから小腸や大腸の機能障害につながることが報告されています。

これは脳腸相関と言われ、脳が自律神経を介して腸にストレスからの刺激を与えることによってお腹の痛みが起こるという関係です。

3.食事と栄養

IBSの患者さんに多い特徴として、乳製品を減らす傾向が見られました。

乳製品を減らすことにより、カルシウムの摂取量が減少し骨の骨密度に影響が出ます。
またカルシウムの吸収を助ける役割を持つビタミンDの欠乏も見られる傾向がありました。

骨が脆くならないために気をつける3つの習慣

IBSの患者を調べた結果、骨密度が低下している患者が多いことが確認されました。骨は体を支えるだけでなく、内臓を守り、筋肉と協力し運動機能に関わる重要な体の期間の一つです。骨を強くすることで、病気の予防などにも繋がります。

ここでは私たちの体に必要不可欠な骨が脆くならないための3つの習慣を紹介いたします。

1.ストレスを溜めない

IBSの原因となるストレスを減らすことが第一です。
職場の悩みであれば、周りの人に相談する、職場環境を変えてみるなどの原因を取り除くことを考えてみましょう。対人関係であれば、第3の場所に人間関係を構築するのも一つの方法です。

ウォーキングなどの軽めの運動、音楽を聴いたり、呼吸を整えたりすることもストレスの解消に繋がります。

2.カルシウムを積極的に摂る

日本人の食事摂取基準(2015年版)では30〜49歳の男女では1日の推奨量650mgとされています。しかし実際には、日本人の平均カルシウムの摂取量は1日の推奨量を満たしていません。

ぜひ、1日の推奨量のカルシウムを積極的に摂るように心がけましょう。カルシウムは骨の材料になるだけでなく、歯を作る材料にもなる重要な栄養素だからです。

お腹が痛くなったり、下痢になったりするのではと乳製品を避けたい人には、カルシウムのサプリメントがあります。他に魚の骨スナックやいわし、ごまなどからものカルシウム摂取もおすすめです。

<参考>

日本人の食事摂取基準(2015 年版)の概要

3.ビタミンDも重要

IBS患者を検査したところ、ビタミンDの摂取量も少ないことがわかりました。

ビタミンDは、カルシウムを骨まで運ぶ働きによりカルシウムの骨への吸収を促す作用があります。カルシウムは吸収されにくい性質をもつ栄養素なので、ビタミンDと一緒に摂ることで骨を作る働きを促します。

ビタミンDは日光に当たることにより皮膚で合成されるので、日光浴は効果的です。食事からでは魚やきのこ類から摂取したり、サプリメントから摂ったりすることをおすすめします。

<参考>

Increased Risk of Osteoporosis-Related Fractures in Patients With Irritable Bowel Syndrome

 

まとめ

ストレスによるIBSの発症と骨密度の低下には関係があります。しかし、普段の食生活に気をつけることで骨が脆くなるリスクを減らすことができることも分かっています。

特に女性は閉経後に骨密度が減少する病気である骨粗しょう症になるリスクが高いので、今から骨を丈夫にする心がけが大切です。

現在ではIBSの原因であるストレスへの早期対応や心身へのダメージの軽減が、重要視されています。ストレスをできるだけ溜めず、食生活を見直すことで健康的な生活を目指しましょう。

<参考>

ストレスによる過敏性腸症候群から骨密度の低下を来した3症例について

執筆

森本 夏子

 

webライター 薬剤師 医療ボランティアとして4カ国で活動経験あり

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