最近ちょっと白髪が気になってきた。そんな方もいらっしゃるかと思います。どうして白髪になるのか、その原因と対策を見てみましょう。

白髪の生えるメカニズム

メラニン色素が髪の毛を黒くしている

髪の毛の構造は、3層になっています。一番外側をキューティクル、中間部をコルテックス、中心部をメデュラといいます。のり巻きをイメージした時の、ご飯の部分がコルテックスで、ここに髪の毛を黒くするメラニン色素が含まれています。

髪の毛は最初は白髪で生まれてくる

髪の毛は、毛根の奥にある毛母細胞から作られています。毛母細胞の周りには色素細胞(メラノサイト)があり、メラニン色素を作っています。毛母細胞で作られた髪は、最初は白く、周囲のメラニン色素を取り入れて、黒い髪として伸びてくるのです。

メラニン色素はチロシナーゼが作る

メラニン色素は、アミノ酸の一種であるチロシンを原料として、色素細胞でチロシナーゼ(メラニン合成酵素)の働きにより作り出されます。このチロシナーゼの機能が低下すると、メラニン色素が作られず、白髪のまま生えてくることになります。また、色素細胞自体が加齢などにより無くなってしまうと、同様に白髪になります。

白髪の起きる要因と対処法

要因1、白髪は加齢により進む – 50-50-50の法則

白髪は加齢により進むものです。欧米では「50-50-50の法則」と呼ばれており、白人の50%の人は、50才で、白髪が頭部の50%あるそうです。

要因2、白髪には遺伝要因もある

白髪には遺伝要因があり、人種レベルで違いがあります。白人は30代半ば、アジア人は30代後半、アフリカ人は40代半ばから白髪になります。また、両親のどちらかが30代で完全な白髪になっていたら、子供もそうなる確率が高いです。

要因3、メラニン色素

メラニン色素はチロシンから作られます。リンゴを切って置いておくと、茶色く変色しますが、これはリンゴの中のチロシンがチロシナーゼの働きによりメラニン色素に変わるためです。

黒い髪の毛を保つために、チロシンを摂っておきたいですね。そんなチロシンを豊富に含む食品は以下になります。

  • クロマグロ 100g 860mg
  • 豚ロース赤身 100g 810mg
  • 凍り豆腐 乾燥15g 330mg

またチロシンは、身体の中でフェニルアラニンからも作られます。フェニルアラニンを摂るのもよいでしょう。食品中のフェニルアラニン量は以下です。

  • 牛レバー 100g 1100mg
  • クロマグロ 100g 970mg
  • 鶏むね肉 100g 930mg

要因4、ビタミンB12不足

白髪には、ビタミンB12も関係しています。インドの研究で、若白髪になっている人は、ビタミンB12葉酸が不足していたそうです。

ビタミンB12が多い食品はこちらです。

  • 牛レバー 100g 53mg
  • あさり 40g 26mg

葉酸の多い食品はこちらです。

  • 鶏レバー 100g 1300μg
  • 菜の花 70g 238μg
  • 枝豆 50g 130μg

レバーや赤身を料理に取り入れていきたいですね。

要因5、喫煙習慣

タバコも、白髪と関係があります。喫煙者は非喫煙者より、30才までに白髪になる確率が2.5倍高くなっています。白髪が気になる方は、例えばコーヒーなど、タバコ以外で気分転換できると良いですね。

<参考>

Indian Dermatol Online J. 2013 Apr-Jun

Smokers’ hair: Does smoking cause premature hair graying?

要因6、酸化ストレス

過酸化水素が白髪を引き起こすことを示す研究もあります。過酸化水素が、チロシナーゼの機能を制限し、メラニン色素の合成を妨げるのです。

白髪が増えると、白髪染めも選択肢の一つです。ここで一つ注意点があります。普通のヘアカラーと白髪染めは、成分のバランスが異なります。普通のヘアカラーは、黒い髪を脱色して明るく仕上げるために、過酸化水素によるブリーチ力が強くなっています。それに対して白髪染めは、白髪を黒く染めるために、染色力が強くなっています。白髪が気になる方は、白髪染めを使うようにしましょう。

<参考>

FASEB JOURNAL 23 February 2009

Senile hair graying: H2O2‐mediated oxidative stress affects human hair color by blunting methionine sulfoxide repair

要因7、ストレス要因

最近、ストレスにより白髪が起こるメカニズムも明らかになりました。マウスに対してストレスを与えたところ、交感神経が活性化して、ノルアドレナリンの放出が起こり、色素幹細胞が枯渇しました。ストレスにより白髪が起きたのです。

自律神経のバランスを整えるには、生活リズムを整えることがポイントです。昼間によく動き、副交感神経が優位になる夜には良質な睡眠をとりましょう。就寝と起床、食事の時刻を一定に保ち、適度な運動をすることも自律神経の調整につながります。

自分なりのリフレッシュ方法や運動などにより、ストレスをこまめに発散する習慣もつけましょう。仕事以外の生きがいを持ったり、心に余裕をもって暮らしたりすることも効果的です。

<参考>

AASJ 2020年1月26日

1月26日 ストレスで白髪が増えるメカニズム(1月23日 Nature オンライン掲載論文)

まとめ – 白髪と上手く付き合おう

最近、ストレスが白髪を引き起こすことが分かってきました。白髪について悩むことがストレスとなってしまっては、もったいないですね。気になる方は、白髪染めを活用してみましょう。

その際は、ヘアカラーよりも白髪染めを使います。普段の食事にチロシンやビタミンB12の豊富な食品を取り入れてみるのもよいでしょう。多くの文化で、白髪は知恵の証と見られています。白髪と上手く付き合って、心に余裕をもって暮らしたいですね。

執筆

sakura15

 

サイエンスライター。大学院にて生物情報を研究後、半導体開発や遺伝子解析ベンチャー企業に携わりました。 趣味は海外トレッキングで、ネパールを横断するグレートヒマラヤトレイルを歩くのが夢。 生物から理学まで幅広く見ながら、分かりやすく書くことを心がけています。

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