2024年3月15日は、世界睡眠学会が定める世界睡眠デーです。
睡眠は、私たちが毎日必ずとるもののひとつ。
脳を休ませる大切な役割を担っています。
睡眠をささえる3種類のメカニズムを知って、今よりも質の高い睡眠を目指してみませんか?

睡眠をささえる3種類のメカニズム

メカニズム1.睡眠恒常性維持機構(疲れたときに眠くなるしくみ)

私たちは、覚醒し続けていると、脳の機能が少しずつ低下していきます。
睡眠不足が数日続いたあとに、ぐっすり深く眠れた、という経験はありませんか?
大脳皮質の疲れに応じて、これを回復させるのが睡眠恒常性維持機能です。

メカニズム2.体内時計機構(夜になると眠くなるしくみ)

私たちの体内時計は約25時間の周期で変動しており、普段生活している24時間のリズムとはズレがあります。
これを調整しているのが眠気と身体の深部体温の概日リズムです。
深部体温は午後から夜にかけての間に最も高くなり、夜になると低下、早朝に最低となり、そこから上昇するというリズムを示します。
眠気は、深部体温が低下する夜間から朝にかけて強くなり、日中、深部体温が上昇するのと並行して眠気は少なくなっていきます。

メカニズム3.覚醒保持機構(気持ちがたかぶると眠れなくなるしくみ)

睡眠と覚醒は、同時に起こりえないので、お互いに排他的です。
覚醒機構が活動している間は、睡眠は抑止され、覚醒機構の活動が低下すると、睡眠を促進します。
覚醒機構の活動は、情動的な興奮によって高まるため、不安や緊張、怒り、喜びなどの情動興奮があると、入眠が妨げられます。
プレッシャーのかかる仕事の前などに、寝つけなくなったり、睡眠の質が下がったりするのは、誰しも経験があることかもしれません。
一過性の不眠を引き起こすメカニズムともいえます。

入眠、中途睡眠(睡眠の質)、起床(覚醒)のポイント

これら、3つのメカニズムを踏まえて、「入眠」、「中途睡眠(睡眠の質)」、「起床(覚醒)」それぞれのポイントを紹介していきます。

入眠フェーズ

入眠フェーズのキーワードは「体温」です。
眠気と連動する深部体温にアプローチすることで、寝つきをよくします。
寝る1時間前までに入浴を済ませて、軽いストレッチなどをして、皮膚の温度が高まると、末梢血管が広がり、皮膚からの放熱がさかんになって、体温が低下して、自然な眠気をいざなうことができます。
その他に、気にかけられることとしては、カフェインが睡眠中枢に作用するアデノシンという物質の働きを妨害するため、夕方以降はカフェインをとらないことも大切です。

中途睡眠フェーズ(睡眠の質)

このフェーズのキーワードは「光」です。
起床して、目から光が取り込まれた時間から14~16時間後にメラトニンという物質が分泌されます。
このメラトニンが中途睡眠の質を高めてくれます。
ただ、夕方から夜の時間帯に強い光を浴びると、メラトニンの分泌量が低下してしまいます。
帰宅時に明るいスーパーやコンビニに寄ったり、お風呂場のライトが明るすぎたりすると、影響が出ます。
就寝前はダウンライトに切り替える、タブレットやスマホの照度を落とすなどの工夫がおすすめです。
また、寝る直前にお酒を飲むと、眠りが浅くなり、中途覚醒が増えてしまいまうの、お酒を楽しみなら、夕食のときに!

起床フェーズ

起床フェーズのキーワードは「タイミング」です。
起床時間を一定に保つことで、体内時計のリズムを整えやすくなります。
土日に2時間以上遅く起きると、月曜日の朝から時差ぼけ状態になり、その影響が水曜日まで残ることがわかっています。
しっかり休息をとって、週明けに備えるつもりが、月曜日、火曜日、水曜日とワークデーの半分以上を時差ぼけ状態で過ごすことになってしまいます。
起床時間は、休日でも2時間以上ずれないように気をつけましょう。
また、起きてすぐ明るい光をしっかり浴びることで目覚めがよくなり、体内時計が調節されるので、起きたらカーテンを開けて、光を取り込みましょう。

それぞれのフェーズに取り入れられそうなことはありましたか?
効果を実感できるまでには2週間ほど続けていただくことが大切なので、2,3日試して効果を感じられないからといって、やめてしまわずに、まずは2週間、続けてみてください。
 

【参考文献】

Borbely A, Achermann P. Sleep homeostasis and models of sleep regulation. In Kryger MH, Roth T, Dement WC. eds. Principles and Practice of Sleep Medicine, fifth edition. Else vier Saunders, Philadelphia, USA. pp.431–444, 2010.
Honma K, Hashimoto S, Nakao M, et al. Period and phase adjustments of human circadian rhythms in the real world. J Biol Rhythms 2003; 18: 261–270.

執筆

博士(心理学),臨床心理士,公認心理師

関屋 裕希(せきや ゆき)

 

1985年福岡県生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、筑波大学大学院人間総合科学研究科にて博士課程を修了。東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野に就職し、研究員として、労働者から小さい子をもつ母親、ベトナムの看護師まで、幅広い対象に合わせて、ストレスマネジメントプログラムの開発と効果検討研究に携わる。 現在は「デザイン×心理学」など、心理学の可能性を模索中。ここ数年の取組みの中心は、「ネガティブ感情を味方につける」、これから数年は「自分や他者を責める以外の方法でモチベートする」に取り組みたいと考えている。 中小企業から大手企業、自治体、学会でのシンポジウムなど、これまでの講演・研修、コンサルティングの実績は、10,000名以上。著書に『感情の問題地図』(技術評論社)など。

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