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ストレスや悩みがあるとき、睡眠に影響が出る、という方は少なくありません。

私自身もそのひとり。

仕事で気がかりなことがあると、寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったり、朝早く目が覚めたり、その影響がさまざまな形で表れます。

まだ心理学を学んでいなかった高校時代や、学び始めたばかりの学生時代には、睡眠にまつわる「こうあるべき」という考えによって、さらに眠れなくなる悪循環に入り込んでしまうこともしばしばでした。

今回は、私がもともと持っていた睡眠にまつわる考えと、それをどう手放していったかを紹介してみたいと思います。

 

考え①「今日も眠れなかったらどうしよう」

まずひとつめの考えは「今日も眠れなかったらどうしよう」というものです。

「今日も眠れなかったときみたいに、〇時頃まで眠れないんじゃないか」、「寝てもすぐに目が覚めて、そのあと寝つけなくなるんじゃないか」、「朝早く目が覚めて、目が冴えてそのまま朝になるんじゃないか」こんな考えが浮かんでくるのです。

 

考え②「眠れないと、昼間の活動に支障が出る」

考え①に連動して出てくるのが、この考えです。

「明日、日中に眠くなってしまうかも」、「授業(仕事)に集中できないかも」、「仕事や試験でミスしたらどうしよう」など、眠れないことで昼間の活動に悪影響が出るイメージが次々と浮かんできていました。

 

考え③「最低でも6時間寝ないとダメ(欲を言えば7時間)」

みっつ目の考えは、「6時間寝ないとダメ」というものでした。

健康を保つには、6~7時間以上は寝るべき、という健康情報をもとに、それより少ない睡眠時間だと、体調を崩しやすくなったり、集中力や注意力が落ちたり、自分がうまく機能しなくなると考えていました。

寝つけないときに何度も時計を見て、「あぁ、今寝られたとしても、もうあと〇時間しか寝られない」と計算したり、途中で目が覚めたときに「このままだと〇時間しか寝られていないことになる」と考えたりしていました。

こういった心配の数々がさらに私の目を冴えさせて、「眠れない、どうしよう」と焦る気持ちを呼び、さらに目を冴えさせて……と悪循環を引き起こしていました。

言ってみれば、「不眠恐怖」的思考のようなものがさらに状況を悪くしていたのです。

私がこの「不眠恐」的思考を手放すことができるようになったのは、心理学の授業で、断眠実験の話を聞いたことがきっかけのひとつでした。

断眠実験とは、無理やりずっと対象者を起こし続けて睡眠を妨げる実験のことです。

その実験の話から学んだのは、人は無理やり起こされ続けていたら、身体の方に限界がきて最後は強制終了的に眠ってしまうものなんだな、ということ、本人は「寝ていない」と認識していても、脳波などのデータでは「寝ている」ということも多く、自覚があてにならないのだな、ということでした。

 

それ以降、悩みやストレスが頭に浮かんできて、「眠れないかも」という考えが頭にちらついても、「今日眠れなかったら明日ぐっすり寝られるな」、「横になっているだけで身体の疲れは回復するのだからそれだけでも十分」、「身体がどうしても睡眠を欲するくらいになったら眠れるんだから放っておいても大丈夫」という考えに少しずつ切り替わっていきました。

こうして眠ることにこだわる考えを手放していくと、悪循環に入り込まずに済んで、翌朝「なんだ、あのあと気づいたら寝られてたな」ということがほとんどになりました。

 

もし、同じように「不眠恐怖」的思考が悪循環を引き起こして寝られないという方がいたら、その考えを手放してみるのも快眠への道のひとつとして、おすすめです。

執筆

博士(心理学),臨床心理士,公認心理師

関屋 裕希(せきや ゆき)

 

1985年福岡県生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、筑波大学大学院人間総合科学研究科にて博士課程を修了。東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野に就職し、研究員として、労働者から小さい子をもつ母親、ベトナムの看護師まで、幅広い対象に合わせて、ストレスマネジメントプログラムの開発と効果検討研究に携わる。 現在は「デザイン×心理学」など、心理学の可能性を模索中。ここ数年の取組みの中心は、「ネガティブ感情を味方につける」、これから数年は「自分や他者を責める以外の方法でモチベートする」に取り組みたいと考えている。 中小企業から大手企業、自治体、学会でのシンポジウムなど、これまでの講演・研修、コンサルティングの実績は、10,000名以上。著書に『感情の問題地図』(技術評論社)など。

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