2023年度の1日あたり所定労働時間の平均は、7時間48分。
私たちは、1日の約3分の1を職場で過ごしていることになります。
皆さんは、職場を自分の「居場所」だと感じられていますか?

居場所とは

「居場所」には、物理的な側面ももちろんありますが、心理的な側面にも注目があたっていて、心理学の研究では、「心のよりどころとなる関係性、および安心感があり、ありのままの自分を受容される場」と定義されています。

テレワークが導入され、オンラインという働き方が定着した今では、心理的な側面がより重視されるかもしれません。

職場を「居場所」と感じるための3つの要素

職場を「居場所」と感じるためには、次の3つの要素が備わっていることが大切です。

1.本来感

自分を見失わずにいられて、自分らしく行動できること。

2.役割感

人から頼りにされている、自分にしかできない役割があるなど、自分が職場のメンバーの役に立っていると思えること。

3.安心感

居心地世のよさを感じて、落ち着いた気持ちでいられること。

いかがでしょうか?
当てはまるもの、当てはまらないもの、セルフチェックしてみるのもおすすめです。

職場を「居場所」にするための行動

これら3つの要素に沿って考えると、職場を「居場所」にしていくために、次のような行動が役に立つ可能性があります。

✓会議で自分の考えや意見を話してみる(本来感)
✓自分の仕事以外の側面の話をして自分らしさを出してみる(本来感)
✓チームの中での自分の役割を振り返る(役割感)
✓自分の強みに目を向ける(役割感)
✓誰かに喜ばれた出来事を思い出す(役割感)
✓デスクに自分が好きなアイテムを置く(安心感)
✓職場のメンバーは、同じ目的に向かう仲間だということを思い出す(安心感)

職場をみんなにとっての「居場所」にする

それと同時に、職場を、自分だけではなく、みんなにとっての「居場所」にすることを目指す、という視点を転換させたアプローチもおすすめです。
次のような3つの問いが立てられます。

「相手が自分らしくいられるには?」
→相手の強みや得意分野を頼りにする
相手の話に好奇心をもって耳を傾け質問する

「やると、みんなが助かることは?」
→明確に誰がやる、と決まっていないけれど、やればみんなが助かることは率先してやる
自分の強みが活かせそうな場面でサポートを申し出る

「相手が『安心』できるような声かけは?」
→「ありがとう」「助かっています」など感謝を言葉にして伝える
オンラインミーティングでリアクションやフィードバックをする

自分の居場所をつくることは、職場をみんなにとっての「居場所」にしていくことでもあるのだと思います。
そして、それは決して大がかりなことをしなければいけないわけではなく、日々の小さな行動の積み重ねで作り上げられていくものです。
1日の3分の1の時間を「自分の居場所だ」と感じながら過ごすのか、疎外感や不安、孤独を感じながら過ごすのかには、大きな違いがあります。

職場を居場所にするために、何かひとつ行動してみませんか?

参考文献

中村准個・岡田昌穀(2016) 企業で働く人の職業生活における心理的居場所感に関する研究. 産業・組織心理学研究30(1)45-58.
則定百合子(2007) 青年版心理的居場所感尺度の作成 日本教育心理学会総会発表論文集, 49, 337.
2023年度労働時間総合調査.労務行政研究所.

執筆

博士(心理学),臨床心理士,公認心理師

関屋 裕希(せきや ゆき)

 

1985年福岡県生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、筑波大学大学院人間総合科学研究科にて博士課程を修了。東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野に就職し、研究員として、労働者から小さい子をもつ母親、ベトナムの看護師まで、幅広い対象に合わせて、ストレスマネジメントプログラムの開発と効果検討研究に携わる。 現在は「デザイン×心理学」など、心理学の可能性を模索中。ここ数年の取組みの中心は、「ネガティブ感情を味方につける」、これから数年は「自分や他者を責める以外の方法でモチベートする」に取り組みたいと考えている。 中小企業から大手企業、自治体、学会でのシンポジウムなど、これまでの講演・研修、コンサルティングの実績は、10,000名以上。著書に『感情の問題地図』(技術評論社)など。

この記事をシェア

編集部おすすめ記事

人気記事ランキング