「仕事をしたい」からする。
「仕事をせずにはいられない」からする。
皆さんは、どちらの側面が強いでしょうか。
この「仕事をせずにはいられない」ために、多くの時間を仕事に割く状態のことを「ワーカホリズム」と呼びます。
アルコール依存を指す言葉であるalcoholism(アルコホリズム)を参考につくられたことばだといわれています。
仕事中毒、仕事依存の状態を指しているともいえます。
ワーカホリズムの特徴
ワーカホリズムの特徴はさまざまにあり、働くことへの衝動性を制御できないこと(これがまさに「仕事をせずにはいられない」)、過度の完全主義、自尊心の低さの補償、非終業時の罪悪感、就業することによる不安の低減などが挙げられます。
中でも、わかりやすいのでは?と思うのは、仕事をしていないと落ち着かない、休んでいるとなんとなく悪いことをしている気になる、仕事をしていると不安感が減って、ほっとする(安心感が得られる)という特徴です。
私自身も心当たりがあり、特に、大学院を修了してから就職したあと3年ほどは、ワーカホリズム状態にあったと思います。
もちろん、望んだ仕事に就いたので、単純に仕事が面白かったからのめりこんでいた、という側面もありましたが、研究室を離れると落ち着かない、友人と出かけても、「楽しんでいいのかな?」という気持ちになるなど、振り返ってみると、休むのが下手だったなと思います。
ワーカホリズムの傾向のある労働者は、仕事に多くの時間を費やすために心身の疲弊を起こしやすく、心理的ストレス反応の高さや身体愁訴の多さと関連があることがわかっています。
また、それだけ仕事に打ち込めば、高いパフォーマンスを発揮できるのかというと、そういうわけではなく、完全主義や非現実的で高すぎる目標設定、他者への権限移譲の少なさ、思考や行動の柔軟性の乏しさにより、仕事のパフォーマンスや職務満足感などが低いことも報告されています。
仕事に多くの時間とエネルギーを使っているのにも関わらず、報われません。
ワーカホリズムから抜け出すには?
では、ワーカホリズムから抜け出すには、どうすればいいのでしょうか。
ワーカホリズムは「働きすぎる」という行動的な側面(例:友人と会ったり趣味や余暇活動に費やす時間よりも,仕事に費やす時間の方が多い)と、「強迫的な働き方」の認知的な側面(例:楽しくないときでさえ,一生懸命働くことが義務だと感じる)の2つの側面に分けてとらえられます。
これをもとに、認知行動療法をベースにした認知行動的アプローチが有効だと考えられますが、私の場合は、「行動」にフォーカスしたアプローチが有効でした。
研究室を離れると落ち着かない、なんとなく不安になる、遊んでいても楽しめない(なので、安心感を得るために休日も研究室に行く)、という状態だったので、強制的に「休む」「遊ぶ」予定を入れ続けました。
最初は、落ち着かなくて、遊んだ帰りに研究室に寄りたくなるのですが、我慢。
それを繰り返しているうちに、仕事場から離れていても、徐々に不安を感じずに落ち着いて過ごせるようになっていきました。
曝露療法(エクスポージャー)
専門的には曝露療法やエクスポージャーと呼ばれる方法(不安の原因になる刺激に段階的に触れることで、不安を消していく手法)ですが、功を奏して、3年ほど経つと、休日にも、仕事のことを思い出さずに思いっきり楽しむことができるようになりました。
そんな簡単なこと?と思われるかもしれませんが、いてもたってもいられず研究室に行きたい気持ちをこらえるのは、最初は大変なものでした。
シンプルだけれど、意思が必要で、けれど効果のある方法です。
すぐに不安感が下がるわけではないのが難しいところですが、自分の働き方を変えたい!と考えている方には、ぜひ試してみてもらえたらと思います。
【参考文献】
Schaufeli, Wilmar B., Shimazu, Akihito and Taris, Toon W. 2009. “Being Driven to Work Excessively Hard: The Evaluation of A Two-factor Measure of Workaholism in the Netherlands and Japan” Cross-Cultural Research, 43, 4 320- 348.