普段から、たくさんの「問い」を使って仕事をしています。
1対1のカウンセリングの機会でも、一方的に心理学の知見を伝えたり、助言や提案するだけでなく、問いを大事にしていますし、講演でも同様で、解説したり、情報提供するだけではなく、さまざまな問いかけをしながら進めていきます。
そんな私ですが、最近、改めて「問い」のチカラ、そのパワフルさを実感しています。

どのような問いをたてるかで、私たちは、そのあと、どんな気持ちになって、どんな行動をとるのかが変わっていきます。
たとえば、仕事でうまくいかないことがあったときに、「なぜ失敗したのか?」と問われると、自分の欠点や苦手なことに注意が向き、気持ちは落ち込んでいくでしょう。
一方で、「今回の失敗を次に活かすとしたら?」、「どんな工夫をすれば、同じ失敗を防げるでしょう?」、「もっとよい結果につなげるには?」と問われたら、うまくいかなかったことを振り返りつつも、「次はこうしよう」と未来に向けた前向きなエネルギーが湧いてきます。

ここで、問いのチカラを実感していただくために、簡単なワークを試してみていただけたらと思います。
最近、もやっとしていることをひとつ選んでください。
大きな悩みごとでなくて、日常の小さなモヤモヤで構いません。
「最近、外食の機会が増えて食べ過ぎが気になる」とか、「何か新しい習い事を始めたいと思ってるけれど決めきれない」など。
そのモヤモヤについて、次の問いに答えてみてください。

✓そのことについて考えると、どんな気持ちになりますか?

✓本当は、どんな気持ちになれると嬉しいですか?

✓そんな気持ちになるために、どんなアイディアがありますか?

✓何から始めるとよさそうでしょうか?

どうでしょうか。
なんとなくモヤモヤのままにしていたことや、「これをどうにかするのは難しいな」と思って放っておいたことも、これらの簡潔な問いを自分に尋ねて、自分で答えていくだけでも、気づきや、次の行動のヒントが見えてきます。
私が、一方的なレクチャーではなく、「問い」を大切にしているのは、「答えは相手の中にある」と信じているからです。
専門家が答えを持っているように思えますが、日々どんな出来事を体験しているのか、どんなことで困っているのか、どんな人たちに囲まれて生活しているのかといった「自分のこと」に一番詳しいのはその人自身なのです。

問いのチカラを感じさせる好きなたとえがあります。
「水のあるところまで、どうやって行こうか?」という問いをたてると、遊牧民になるし、「水をここまでどうやって運んでこようか?」という問いをたてると、農耕民族になる、という話です。
どんな問いを立てるかで、私たちの生き方までもが変わってしまう可能性があります。
あなたは、自分に対して、どんな問いをたてますか?

執筆

博士(心理学),臨床心理士,公認心理師

関屋 裕希(せきや ゆき)

 

1985年福岡県生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、筑波大学大学院人間総合科学研究科にて博士課程を修了。東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野に就職し、研究員として、労働者から小さい子をもつ母親、ベトナムの看護師まで、幅広い対象に合わせて、ストレスマネジメントプログラムの開発と効果検討研究に携わる。 現在は「デザイン×心理学」など、心理学の可能性を模索中。ここ数年の取組みの中心は、「ネガティブ感情を味方につける」、これから数年は「自分や他者を責める以外の方法でモチベートする」に取り組みたいと考えている。 中小企業から大手企業、自治体、学会でのシンポジウムなど、これまでの講演・研修、コンサルティングの実績は、10,000名以上。著書に『感情の問題地図』(技術評論社)など。

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