私たちは、時々、ネガティブ思考のループにはまってしまうことがあります。

考えたくて考えているわけではなく、勝手にどんどん浮かんできてしまう感じ。

この「勝手にどんどん浮かんでくる」特徴から、心理学研究の中では、「ネガティブな自動思考(Automatic Negative Thoughts)」と呼ばれています。

ネガティブ思考の始まりは、人間関係のいざこざ、仕事でうまくいかないとき、落ち込むことがあったときなど、きっかけはさまざまです。

私の場合は、睡眠不足がネガティブ思考を呼び起こすこともあります。

寝不足の日々が続くと、これといったきっかけがあったわけではないのに、ネガティブなことを思い出したり、現実以上にネガティブに受け止めたり、ふと気づくとネガティブ思考のループの中にいることがあります。

 

ネガティブ思考の中身もさまざまにあるかと思いますが、ループが止まらなくなる代表的な思考は次の3つでしょうか。

まず1つ目は、過去のことを後悔するような考えです。

すでに起きた出来事を思い出して、「ああすればよかった」、「こうすればよかった」と繰り返し考え続けてしまうのです。

頭の中では、その出来事がリピート再生されて、どうにも止まらなくなってしまいます。

2つ目は、自分を責めるような考えです。

自分の足りないところ、できないこと、うまくいかないことなどばかりが強調されて見えて、「なんで自分はこうなんだろう…」、「うまくいかないのは自分のせいだ」、「自分が悪い」と自分を責め続けてしまいます。

他の人のうまくいっていることや優れていること、よいところなどを思い浮かべて比べると、気分はますます下がっていきます。

3つ目は、未来のことを悲観するような考えです。

「こんな悪いことが起きるんじゃないか」、「うまくいかないんじゃないか」、「失敗するんじゃないか」とまだ起きていない未来のことについて悪い想像ばかりするのです。

考えれば考えるほど、不安な気持ちが強くなり、前向きな行動がとりづらくなってしまいます。


多くの場合、これらのネガティブ思考のループは、振り返ってみれば、「なんであんなにネガティブに考えていたんだろう」と自分でも首をかしげるような内容なのですが、渦中にいるときは、それがすべて、真実のように思えて、とても苦しいのです。

そんな「ネガティブ思考が止まらなくてつらい・苦しい!」状況から抜け出すために役立つ3つの問いを紹介します。

1つ目の問いは、「その出来事・状況をありえないレベルでポジティブにとらえるとどうなるか?」というものです。

現実以上にネガティブに考えてしまっているのだとしたら、突き抜けてその逆をいってみよう!という問いです。

起きた出来事がよくないものだったとしても、それをポジティブに解釈してみる方法です。

悪い未来予想を描いているならば、逆に、ものすごくハッピーな未来予想を描いてみてもいいはず。

いったんポジティブに突き抜けてみると、もともと浮かんでいた考えに対して、「ネガティブすぎたかな?」と我に返ることができたり、ポジティブとネガティブを照らし合わせて、現実的な落としどころはこのあたり?と受け止め方を修正できたりします。

 

2つ目の問いは、「別の見方はできないかな?」というものです。

たとえば、「仕事がうまく進んでいないのは自分のせいだ」と考えていたとして、それ以外の見方・とらえ方はできないかな、と問いかけてみるのです。

市場価格の変動のような環境要因だったり、取引先の状況が変わったなど相手側の要因だったり、別の可能性も浮かんできます。

 

3つ目の問いは、「尊敬する〇〇さんが自分と同じ状況にいたら、どう考えるか?」というものです。

〇〇さんは、自分の知っている同僚や友人や家族でも、俳優やミュージシャン、経営者などの著名人でも、小説やマンガに出てくる登場人物、歴史上の人物でも構いません。

例えば、「織田信長が自分と同じ状況にいたら、どう考えるか?」、「徳川家康なら?」、「豊臣秀吉なら?」と考えてみるだけで、三者三様のまったく異なる考え方をしそうで、自分の考え方も、さまざまなとらえ方ができるうちのひとつなんだな、と少し距離がとれます。

 

ネガティブ思考のループに入って抜けられない!というときには、この3つの問いを試してみてください。

1つ問いかけるごとに、少しずつネガティブループから抜け出していけるはずです。

執筆

博士(心理学),臨床心理士,公認心理師

関屋 裕希(せきや ゆき)

 

1985年福岡県生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、筑波大学大学院人間総合科学研究科にて博士課程を修了。東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野に就職し、研究員として、労働者から小さい子をもつ母親、ベトナムの看護師まで、幅広い対象に合わせて、ストレスマネジメントプログラムの開発と効果検討研究に携わる。 現在は「デザイン×心理学」など、心理学の可能性を模索中。ここ数年の取組みの中心は、「ネガティブ感情を味方につける」、これから数年は「自分や他者を責める以外の方法でモチベートする」に取り組みたいと考えている。 中小企業から大手企業、自治体、学会でのシンポジウムなど、これまでの講演・研修、コンサルティングの実績は、10,000名以上。著書に『感情の問題地図』(技術評論社)など。

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