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皆さんは、「レジリエンス」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

レジリエンスとは「回復力」や「弾力」という意味の言葉で、ストレスなどの困難な状況からの回復力のことを指しています。

私は、レジリエンスについての講演資料に、竹林の写真をよく使っています。

竹は、強い風や嵐が吹いたときに、ぽきっと折れてしまうのではなく、風によってしなるけれど、また元のように空に向かって伸びていける、そんなしなやかさを持っています。

レジリエンスも同じで、ストレスや困難なライフイベントによって影響を受けるけれど、乗り越え、回復していくための力といえます。

レジリエンスは、何かひとつのストレス対処スキルを指すのではなく、困難からしなやかに回復するためのいろんな要素が組み合わさった総合力のようなものだと思います。

アメリカ心理学会(American Psychology Association: APA)は、レジリエンスを育成するための10の要因を次のように挙げています。

 

①他者との関係を築くこと

②危機を乗り越えられない問題であるとは捉えないこと

③変化を生活における一部として受容すること

④目標に向かって進むこと

⑤行動をとり続けること

⑥自己発見の機会を設けること

⑦自分に対してポジティブな認知をもつこと

⑧事実を全体像の中で捉えること

⑨希望に満ちた見方をもつこと

⑩自分自身を大切にすること

眺めてみると、一番多く含まれているのは、この世界や自分をどのように捉えるかという要素のように思えます。

たとえば、②は危機にぶつかってもそれを「乗り越えられない問題」と捉えるのではなく、「乗り越えられる」という捉え方をもつことを意味しています。

③は生きていれば、変化が起きることを自然なことだと捉えることといえます。

⑦は、自分に対して、「ストレスに弱い」とか「〇〇が苦手」とか「誰にも相手にされない」とネガティブに捉えるのではなく、ポジティブな捉え方をすることを指しています。

⑧は、起きた出来事をその出来事だけをみて捉えるのではなく、置かれている環境や、関係者の状況、社会的な状況なども含めた全体像の中で捉えることを指しています(例えば、職場で自分の企画が採用されなかったときに、その出来事だけを注視するのではなく、会社全体や部署の状況、社会のニーズや他の企画や時機など、全体像の中でその出来事を捉えるといった具合です)。

⑨は自分の置かれている状況やこれからについて、希望に満ちた捉え方をすることを指しています。

⑩は自分を「大切な存在」と捉えることを意味します。

⑥も間接的にではありますが、「自分は〇〇」と決めつけるのではなく、自分のいろんな面について気づいていく機会をもつことを指していて、自分に対する捉え方に影響する要素だといえます。

 

もちろん、①他者との関係を築くことや④や⑤の目標をもつことや行動することと組み合わせられることでレジリエンスが育っていくのだと思いますが、自分はこの世界を、そして自分をどんな捉え方で見ているかな?と振り返ることも、自分のレジリエンスを育てるうえで、大事なことだと感じています。

 

困難〇〇(乗り越えられるor乗り越えられない)

自分は〇〇

この世界は〇〇

自分が困ったときに他の人は〇〇

未来は〇〇

 

ぱっと浮かんでくるフレーズが、今の自分の捉え方を表しているのかもしれません。

レジリエンスを育てる、ひとつのヒントに振り返ってみるのもおすすめです。

 

【参考文献】

小塩真司・平野真理・上野雄己.2022. レジリエンスの心理学.金子書房.

執筆

博士(心理学),臨床心理士,公認心理師

関屋 裕希(せきや ゆき)

 

1985年福岡県生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、筑波大学大学院人間総合科学研究科にて博士課程を修了。東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野に就職し、研究員として、労働者から小さい子をもつ母親、ベトナムの看護師まで、幅広い対象に合わせて、ストレスマネジメントプログラムの開発と効果検討研究に携わる。 現在は「デザイン×心理学」など、心理学の可能性を模索中。ここ数年の取組みの中心は、「ネガティブ感情を味方につける」、これから数年は「自分や他者を責める以外の方法でモチベートする」に取り組みたいと考えている。 中小企業から大手企業、自治体、学会でのシンポジウムなど、これまでの講演・研修、コンサルティングの実績は、10,000名以上。著書に『感情の問題地図』(技術評論社)など。

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