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こんなタイトルの記事をHUFFPOSTで見かけました。

 

「注文時の『礼儀正しさ』によって値段が変わる。イギリスのカフェ、斬新な取り組みが話題」

 

飲み物を注文するときに、ただ商品の名前を言うだけでなく、丁寧に注文すると500円以上安く買えると話題になっているイギリスのカフェの話です。

記事によると、お店の黒板には、ドリンクの名前だけを告げて注文したときには5ポンド(約834円)のところが、「チャイをお願いします」と言うと3ポンド(約498円)に、さらに「こんにちは、チャイをお願いします」と注文すると1.9ポンド(約317円)になると書かれているのです。

オーナーの意図としては、自分のカフェでは友好的な雰囲気を大事にしたいと考えて取り入れた方針とのことで、この方針を導入してから、カフェを訪れる人がより親切に接してくれるようになったといいます。

 

この「礼儀正しさ」ですが、ワーク・エンゲイジメントを高める取り組みとして、職場のメンタルヘルス領域でも注目されています。

英語では「Civility」と呼ばれ、礼儀正しさや礼節を重んじることを指します。

Civilityを高めるCREWというプログラムも開発されています。

CREWは、Civility(礼節、丁寧さ),Respect(敬意),and Engagement(エンゲイジメント) in the Workplace(職場)(CREW)の略です。

お互いを知り、お互いに丁寧に敬意をもって接するような関係性をつくることで、働きやすい職場風土の醸成を目指すというものです。

もともとは、米国の退役軍人省の組織開発センターで開発されたのが始まりで、主に医療従事者を対象に発展してきましたが、医療職に限らず、チームで仕事を進める業種に活用できます。

少人数グループによる定期的なワークショップ(1~2週間に1回の頻度で30分~1時間)を約6ヶ月間開催して、尊重しあう職場環境づくりに影響をおよぼす内容について、職場のメンバーみんなで話し合っていきます。

プログラムは、大きく分けて、①キックオフ→②お互いを知る→③敬意・尊敬について考える→④今後の職場を考える→⑤クロージングという5つのステップに分かれています。

②のお互いを知るステップでは、「言われて嬉しい言葉」、「ストレス解消法は?」、「自分を動物に例えると?」、「チームで仕事をするうえで大切にしていること」、「なぜこの仕事を選んだのか?」など、さまざまなことをテーマにしながら、お互いを知っていきます。

お互いをよりよく知ることで、尊重し合う職場づくりへとつながっていきます。

③の敬意・尊敬について考えるステップでは、「自分が大切にされていると思う場面」、「敬意をもって接するとは?」、「尊敬するってどんなこと?」、「相手に敬意を伝える方法は?」などをテーマに話し合い、お互いを大切な存在として認識して、それを行動にうつすにはどうしたらいいかを考えていきます。

 

一緒に働く相手を知る・尊重すると言うと、当たり前のことのように聞こえますが、日々の行動ひとつひとつに行きわたっているかと問われると、慌ただしい日々の中では、つい忘れられているかもしれません。

また、これまでは時間の経過とともに自然とできていた「相手を知る」ことも、テレワークやハイブリッドという働き方が定着する中で、あえて場をつくらなければ、その機会が失われたままになることもあります。

毎週のチームのミーティングにプラス15分時間を使うだけでも始められる取り組み、試してみませんか?

 

【参考文献】

Michael Leiter et al. 2011. The Impact of Civility Interventions on Employee Social Behavior, Distress, and Attitudes. Journal of Applied Psychology 96(6):1258-74.

執筆

博士(心理学),臨床心理士,公認心理師

関屋 裕希(せきや ゆき)

 

1985年福岡県生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、筑波大学大学院人間総合科学研究科にて博士課程を修了。東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野に就職し、研究員として、労働者から小さい子をもつ母親、ベトナムの看護師まで、幅広い対象に合わせて、ストレスマネジメントプログラムの開発と効果検討研究に携わる。 現在は「デザイン×心理学」など、心理学の可能性を模索中。ここ数年の取組みの中心は、「ネガティブ感情を味方につける」、これから数年は「自分や他者を責める以外の方法でモチベートする」に取り組みたいと考えている。 中小企業から大手企業、自治体、学会でのシンポジウムなど、これまでの講演・研修、コンサルティングの実績は、10,000名以上。著書に『感情の問題地図』(技術評論社)など。

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