あなたの「強み」は何ですか?
こう聞かれたら、どんな答えを返すでしょうか。
改めて、私の場合は何だろう……と考えてみると、新しい場面や初めての出来事にぶつかったときに、心配よりもワクワクする気持ちの方が強くなること、というのが一番に浮かんできます。
名前をつけるとすれば、好奇心のようなものでしょうか。
これまでに「好奇心を持てるように頑張ろう」とか「自分の好奇心を育てるために本を読んだり、セミナーに行こう」と考えたことはなく、自然に湧きおこってくるものなので、親に感謝なのか、遺伝子に感謝なのか、人という種の営みに感謝なのかわかりませんが、有難いなぁという気持ちになります。
そもそも、「強み」は何かというと、自分が力を入れずとも自然に発揮できて、自分らしさを感じることができ、発揮していると活力を感じることができるもの、とされています。
多くの人にとって、自分の強みを立ち止まって考えるのは、就職活動や転職活動など、キャリアの転機のタイミングかと思います。
エントリーシートによく、「あなたの長所は何ですか?」という欄があるので、自己分析のひとつとして考えたという方も多いのではないでしょうか。
自己分析のために、ギャラップ社が提供する「ストレングス・ファインダー」という強みを発見するためのWEBサービスツールを使ったことがある方もいるかもしれません。

強みには2種類の捉え方がある

心理学では、強みに関する捉え方が2種類あります。
ひとつは、強みを「徳性」という切り口から捉える見方で、もうひとつは、強みを「能力」として捉える見方です。
前者は、例えば「好奇心」のように、それによって何かが得られるとか、結果に意味があるというより、持っているだけで価値のある性質を指します。
代表的なVIA-ISという分類では、「知恵と知識」、「勇気」、「人間性」、「正義」、「節度」、「超越性」といった6領域があります(図1)。
後者は、最適なパフォーマンスを生むための個人的な能力やコンピテンシーのことで、先ほど名前を出したストレングス・ファインダーは、能力・コンピテンシーの強みを分析するツールです。
こちらは、「思考力」、「人間関係力」、「影響力」、「実行力」の4領域があります(図2)。

 


図1.VIA-ISによる強みの6領域(大竹他, 2005より抜粋)

図2.ストレングス・ファインダーによる強みの4領域
(ギャラップ社のホームページを参考に作図)

強みを知るだけでなく、活用できているかが幸福感と関連

VIA-ISは無料で、ストレングス・ファインダーは有料で、それぞれWEBから項目に回答することで、自分の強みを知ることができます(参考文献を参照)。
こういったツールを使って自分の強みを自覚すること・認識することも大事なのですが、知って終わりではなく、強みを仕事や普段の生活の中で実際に活用しているかどうかが私たちの幸福にとって重要だ、という指摘があります。
こんな心理学の実験があります。
VIA-ISで測定した強みのうち、その人の上位5つの強みを、ただフィードバックされた群と、その5つの強みを1週間毎日、それまで試したことのない新しい方法で活用するように求められた群とに分かれて行われた実験です。
その結果、強みをフィードバックされただけの群では、フィードバック後の一時的な効果にとどまりましたが、強みを活用した群では、実験から6カ月後の時点でも、幸福感と抑うつに対する長期的な効果がみられました。
強みを活用できているかどうかは、幸福感のほかにも、Well-beingや自尊感情、自己効力感などと関連がみられています。

新しい仕事を任されたり、新しいチームに入って働く、チームに新メンバーが入ってきた……など環境変化の多いタイミングです。
もし、現状に難しさを感じていたり、頑張りすぎてエネルギーが切れてるな、やる気が出ないなと感じたら、一度立ち止まって、自分の強みに注目してみるのはどうでしょうか。

自分の強みって、何だろう。
目の前の仕事に、自分の強みをもっと活かせないか。
自分の強みを使う頻度や時間を増やせないか。

強みには、私たちのエネルギーを引き出して、自分らしさを取り戻させてくれるエネルギーがあります。
元気が出てきたら、一緒に働くメンバーの強みにも注目してみるのも面白いかもしれません。

【参考文献】
・大竹恵子・島井哲志・池見陽・宇津木成介・ピーターソン クリストファー・セリグマン マーティン EP(2005).日本版生き方の原則調査票(VIA-IS: Values in Action Inventory of Strengths)作成の試み, 心理学研究,76,461-467.
・Seligman, M. E., Steen, T. A., Park, N., & Peterson, C. (2005). Positive psychology progress: Empirical validation of interventions. American Psychologist, 60,410-421.
・Govindji, R., & Linley, P. A. (2007). Strengths use, self-concordance and well-being: Implications for strengths coaching and coaching psychologists. International Coaching Psychology Review, 2,143-153.
・The VIA Character Strengths Survey
Personality Test, Personality Assessment: VIA Survey | VIA Institute (viacharacter.org)
・Clifton Strength Finder
ストレングス・ファインダー 2.0 | JA – ギャラップ (gallup.com)

執筆

博士(心理学),臨床心理士,公認心理師

関屋 裕希(せきや ゆき)

 

1985年福岡県生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、筑波大学大学院人間総合科学研究科にて博士課程を修了。東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野に就職し、研究員として、労働者から小さい子をもつ母親、ベトナムの看護師まで、幅広い対象に合わせて、ストレスマネジメントプログラムの開発と効果検討研究に携わる。 現在は「デザイン×心理学」など、心理学の可能性を模索中。ここ数年の取組みの中心は、「ネガティブ感情を味方につける」、これから数年は「自分や他者を責める以外の方法でモチベートする」に取り組みたいと考えている。 中小企業から大手企業、自治体、学会でのシンポジウムなど、これまでの講演・研修、コンサルティングの実績は、10,000名以上。著書に『感情の問題地図』(技術評論社)など。

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