国土交通省が2021年3月19日に発表した2020年度の「テレワーク人口実態調査」の結果によると、2020年度は緊急事態宣言の影響もあり、雇用型就業者のうちテレワークを実施した者の割合は前年度に比べて倍増し、19.7%でした。

オフィスで全員が一緒に働くことが当たり前だった働き方からうって変わって、生活する場所であった自宅で働く、チームのメンバーが違う場所にいながら仕事をする、といった新しい働き方にトライしてきた1年間になりました。

 

私がオフィスとの一番の違いを実感するのは、仕事で落ち込むようなことがあったときです。

そんなに大げさなことではなく、問い合わせの電話で少し嫌な思いをした、とか、研修で思うように話せなかった、とか、そんなちょっと感情がざわついたときのことです。

これまでは、隣で働く同僚に「ちょっと問い合わせたら、こんなこと言われちゃったんです」と話したり、ランチを一緒にとる同僚に「今日の研修は自分的にはちょっとイマイチでした」と聞いてもらったりしていました。

自分の感情を落ち着かせて、そのあと切り替えて仕事に向かうのに、こういった何気ないコミュニケーションにずいぶん助けられていたんだな、と実感しています。

テレワークになってから、エレベーターでばったり別の部署の人に会って、「久しぶり!最近どうしてる?」なんて何気ない会話をして、ちょっと元気をもらう、といった機会も減りました。

とはいえ、働き方は変わっていきます。

通勤時間を別のことに使えるようになる、家事との両立がしやすい、といったテレワークのいいところはそのままに、オフィスのよさも取り込んでいきたいものです。

 

そもそも、これまで私たちが働いていた「オフィス」にはどのような機能があったのでしょうか。

せっかくならば、私たちが、健康でいきいきと働けるオフィスづくりに関する調査や資料を参考にしましょう。

2015年に経済産業省がまとめた「健康経営オフィスレポート」があります。

「健康経営オフィス」とは、オフィスの環境に工夫を加えて、働く人が心身ともに健康でいきいきと働いて、ひとりひとりがパフォーマンスを最大限に発揮できる場をつくることを指します。

このレポートで紹介されている7つの機能をもとに、自分が今働いている環境を振り返ってみると、働きやすくなったと感じる理由や、働きづらいと感じる理由がはっきりするかもしれません。

挙げられているのは、「快適性を感じる」、「コミュニケーションする」、「休憩・気分転換する」、「清潔にする」、「適切な食行動をとる」、「体を動かす」、「健康意識を高める」の7つで、それぞれの機能ごとに、自分の職場環境を振り返るチェックリストもあります(図)。

私の場合で言うと、「1.自分の体に合わせて椅子の機能を調節している」、「10.仕事の合間に雑談することがある」、「12.昼休みは規定通りしっかり休んでいる」が難しくなった点で、先ほどの感情のぶれを雑談で調整していたことに加えて、椅子が腰痛の原因になっているかもしれない、午後の生産性が下がるのは休憩のとり方や雑談の時間がないためかな、など分析することができます。

分析できると、椅子を新調しようか、昼休みは時間を決めて1時間しっかりとろう、同僚と電話する機会やミーティングのときに仕事以外の話もふってみよう……といった具合に対策も浮かんできます。

同様に、以前と変わっていないところや、働きやすくなったところも見えてきます。

(参考文献に挙げたレポートの中には、Step2、Step3と健康状態のチェックまで出来るので、気になる方はぜひ!)

図.健康経営オフィスレポートより「健康を保持・増進する7つの行動」簡易チェックシート

 

私たちは、何かうまくいかないことがあると、自分の「内側」に原因を求めがちです。

例えば、日記を書こうと思ったのに続けられないと、「自分はめんどくさがりだから続けられない」、「いつも3日坊主」と自分の性格に結びつけてしまいます。

ただ、私たちが思っている以上に、自分の「外側」である環境の影響は大きいもので、環境を分析して見直すだけで、すんなりと問題が解決したり、うまくできるようになることも多くあります。

チームも同じで、チーム内のコミュニケーションがうまくいかないと、メンバーや関係性など、チームの中に原因を求めてしまいがちですが、環境ややり方を見直すことで、スムーズにいくことがあります。

この春、新しい働き方にあわせて、あなたに最適化したオフィスづくりを始めてみませんか。

 

【参考文献】

・令和2年度テレワーク人口実態調査(国土交通省)

001391381.pdf (mlit.go.jp)

・平成27年度健康寿命延伸産業創出推進事業 健康経営オフィスレポート(経済産業省)

kenkokeieioffice_report.pdf (meti.go.jp)

執筆

博士(心理学),臨床心理士,公認心理師

関屋 裕希(せきや ゆき)

 

1985年福岡県生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、筑波大学大学院人間総合科学研究科にて博士課程を修了。東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野に就職し、研究員として、労働者から小さい子をもつ母親、ベトナムの看護師まで、幅広い対象に合わせて、ストレスマネジメントプログラムの開発と効果検討研究に携わる。 現在は「デザイン×心理学」など、心理学の可能性を模索中。ここ数年の取組みの中心は、「ネガティブ感情を味方につける」、これから数年は「自分や他者を責める以外の方法でモチベートする」に取り組みたいと考えている。 中小企業から大手企業、自治体、学会でのシンポジウムなど、これまでの講演・研修、コンサルティングの実績は、10,000名以上。著書に『感情の問題地図』(技術評論社)など。

この記事をシェア

編集部おすすめ記事

人気記事ランキング