年を重ねるごとに、私たちは自然と「老化」について考えるようになります。しかし、最新の科学は私たちに希望をもたらしています。老化と加齢は必ずしもイコールではなく、健康寿命を延ばすことは可能だという研究結果も複数みられます。今回は、老化についての最新知見と、サプリメントなどで注目されているNMNという成分の可能性について解説します。

なお、本記事はYouTubeで公開されている「【老化研究者兼CEOが解説】『老化とNMN』セミナー前編:老化について」(2020年11月23日開催)の内容を基に作成されています。最新の情報や個別の状況については、専門家にご相談ください。※1

老化と加齢の違い:科学が明かす驚きの事実

老化と加齢は、必ずしも同じ現象ではありません。老化とは年を重ねることで身体機能が低下することを指し、単に年を重ねること=加齢とは異なります。老化という現象について、まずはヒト以外の生き物に目を向けてみましょう。

老化しない生き物たち

驚くべきことに、自然界には老化しないとされる生き物が存在します。例えば、普通のネズミが2~3年程度しか生きられないのに対し、ハダカデバネズミは30年以上生きるとされています。400年以上生きるといわれているニシオンデンザメや、500年ほど生きるというアイスランドガイなど、とても長寿な生き物もいます。

ベニクラゲは一度乾燥させて水に戻すと若返るという特徴をもっており、ロブスターは年齢を重ねるほど体が強くなり、生殖能力も高まるとされています。

老化しない生き物

老化しない生き物について詳しく知りたい場合は、こちらの記事をご覧ください。

関連記事:老化は必然ではなく止められる!老化知らずな長寿の生き物たち「老化シラーズ」を紹介

これらの例は、老化が必ずしも生物学的に避けられない現象ではないことを示しています。老化は必然ではなく、種差や個体差があるのです。同様に、ヒトにおいても老化の個人差が大きいことは周知の事実です。同じ年齢でも、非常に元気で若々しい人もいれば、早く老化が進んでしまう人もいます。

日本の現状:健康寿命と介護の課題

私たちNOMONの目標は、人間の健康寿命をできるだけ延ばし、寿命との差をゼロに近づけることです。死ぬ寸前まで元気で自立した生活を送りたいと願っている方々にとって、健康寿命の延長は重要な課題です。ここで、日本における健康寿命と介護問題、老化(フレイル)についてみていきましょう。

平均寿命の延びと介護期間の長さ

日本の平均寿命は戦後には40歳代でしたが、わずか100年で倍増し、現在では80歳代へと大きく延びました。しかし、平均寿命と健康寿命を見ると、亡くなるまでの最後の約10年間は何らかの介護や支援が必要な期間となっています。この介護期間の長さは、個人の生活の質だけでなく、社会的にも大きな課題となっています。※2

健康寿命と寿命のギャップ

介護期間と医療費の増大

介護期間の長期化とともに、介護や病気の予防にかかるコストも年々増加しています。2025年には97兆円、2040年には138兆円という規模に達することが、2018年時点ですでに予測されていました。そのため、健康寿命を延ばし、介護が必要な期間を短縮することは、個人にとっても社会にとっても重要な課題といえます。※3

ヘルスケアコストの増加

フレイル予防の重要性

健康寿命の延伸において特に注目されているのが、「フレイル」という概念です。フレイルとは、高齢期に心身の活力が低下した状態を指します。介護が必要になる一歩手前の段階であり、医学的には可逆性があると考えられています。つまり、フレイルは予防や改善が可能だということです。そのため、政府も各地方自治体におけるフレイル診断の実施を推進しています。

フレイルは介護の前段階

75歳がターニングポイント

2020年現在、日本の65歳以上の高齢者人口は全体の約30%を占めています。※4

これは1970年の7.1%と比べると、驚くべき増加です。アクティブに活動されている高齢者の方も多く、良い意味で街の風景が大きく変わったと感じる方も多いのではないでしょうか。

急激な高齢化に伴い、現役世代(15〜64歳)と高齢者の比率も大きく変化しています。現状では、2人の現役世代で1人の高齢者を支える形になっていますが、このまま高齢化が進むことで、1対1で支えなければならなくなる可能性があります。※5

しかし、もし現役世代の定義を75歳まで引き上げることができれば、この比率を現状程度に維持できる可能性があります。

高齢者と現役世代の比率

ここで重要なのが75歳という年齢です。統計によると、70歳時点では身体的フレイルの有病率は4%未満ですが、75歳を超えると10〜20%に急増します。※6
自立度も75歳を境に急激に低下する傾向がみられます。※7

つまり、75歳がフレイル予防の重要なターニングポイントなのです。

フレイル有病率

自立度

高齢者の若返りに関するデータ

75歳以上になると身体機能が低下し、自立度が下がるとされていますが、悲観する必要はありません。実は、日本の高齢者は体力的に若返っているというデータもあるのです。

例えば、高齢者の歩行速度はここ10~20年で明らかに改善しています。
厚生労働省が2020年にまとめた「人生100年時代に向けた高年齢労働者の安全と健康に関する有識者会議報告書」では、高齢者の身体機能や健康状況についても記載されています。高齢者の歩行速度について、1990年と2017年のデータを比較すると、同じ年齢でも歩行速度が明らかに向上しています。男性は約10歳、女性に至っては約20歳も若い世代と同等の歩行速度を維持しているのです。※8

日本人高齢者は体力的に若返っている

生活習慣と栄養の重要性

また、骨粗鬆症に関連する指標も改善しています。街で見かける高齢者の方々の姿勢が、昔と比べて明らかに良くなっていると感じる方も多いのではないでしょうか。これは、急激な骨密度の減少による椎体骨折(背骨の骨折)を予防できるようになったことが一因と考えられます。

これらの改善は、医学の進歩だけでなく、生活習慣や栄養状態の向上など、さまざまな要因が複合的に作用した結果だと考えられます。つまり、私たち一人ひとりの努力次第で、老化の進行を遅らせることができる可能性があるのです。

NMNへの期待:老化研究の最前線

老化研究において今注目されているのが、NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)です。NMNは、体内で NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)の前駆体として機能する物質で、「老化に対するビタミン」ともよばれています。

NAD+は、エネルギー代謝や DNA修復など、細胞の健康維持に重要な役割を果たしますが、加齢とともに減少することが知られています。NMNは、この NAD+を増やすことで、老化に関連するさまざまな症状を改善する可能性があると期待されています。

NAD+の役割や細胞老化との関連性について詳しく知りたい場合は、こちらの記事をご覧ください。

関連記事:NAD+低下のメカニズムと細胞老化の関係

人体における効果研究の最新動向と、今後の可能性および注意点

最近、NMNの人体における効果に関する研究結果が次々と発表されています。これは老化研究の分野における大きな進展であり、今後さらなる研究の進展が期待されています。

ただし、NMNはまだ研究段階の物質であり、長期的な安全性や効果についてはさらなる検証が必要です。また、サプリメントとして摂取する場合は、医師や専門家に相談することが推奨されます。

最新の老化研究に注目しつつ、食事・運動・睡眠の習慣を大切にしよう

老化は避けられないものではありません。最新の科学は、健康寿命を延ばし、より長く活動的な生活を送る可能性を示しています。75歳がターニングポイントであることを認識し、それ以前から積極的に健康管理を行うことが重要です。

NMNをはじめとする最新の研究成果に注目することはもちろん、バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠など、基本的な健康習慣を大切にすることで、健康寿命を延ばせる可能性が高まります。老いを恐れるのではなく、健康で活動的な人生を楽しむための準備を、今日から始めてみませんか?

参考資料

※1 YouTube. NOMON研究所. 【老化研究者兼CEOが解説】『老化とNMN』セミナー前編:老化について (2020年11月23日開催)
※2 厚生労働省. 平成28年簡易生命表の概況
※3 厚生労働省. 2040年を見据えた社会保障の将来見通し(議論の素材)-概要(内閣官房・内閣府・財務省・厚生労働省 平成30年5月21日)
※4 総務省統計局. 統計トピックスNo.126 統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-1.高齢者の人口
※5 内閣府. 高齢社会白書 平成29年版高齢社会白書(概要版)
※6 Kojima G, et al. (2017) Prevalance of frality in Japan. J Epidemiol. 27(8). 347-353.
※7 秋山弘子. (2010) 長寿時代の科学と社会の構想. 科学. 80(1)

執筆

LIFE IS LONG JOURNAL編集部

 

LIFE IS LONG JOURNAL編集部。 ”LIFE IS LONG JOURNAL”は「人生100年時代」を迎え、すべての人が自分らしく充実した人生を歩んでいくための「健康寿命」を伸ばすために役立つ情報を発信するメディアです。

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