がんは日本人の死因で最も多く、2018年には約37万人が亡くなっています。アメリカの調査で運動量と発がんリスクが密接に関係していることがわかりました。
運動不足の人は毎日運動をしている人に比べると20~30%発がんリスクが高まります。
なぜ運動をするとがん予防になるのか、どのくらい運動するといいのか、家事をするだけで発がんリスクが軽減できる理由をまとめました。
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運動不足ががん発症に繋がると判明
米国立がん研究所が行った調査で、運動することによって発がんリスクが減少することが明らかになりました。
144万人の平均59歳、BMI平均26の肥満型の人たちを対象に、11年間に渡って運動量と発がんの関係性を調べたところ、運動量が多い上位10%の人は、下位10%に比べると、約20%発がんリスクが軽減していました。
リスクが下がったのは、食道がん、肝がん、肺がん、腎臓がん、胃噴門部がん、子宮内膜がん、骨髄性白血病、
多発性骨髄腫、結腸がん、乳がん、頭頸部がん、直腸がん、膀胱がんの13種類です。
日本で上位の死因になっている肺がんや直腸がん、乳がんも発生するリスクが抑えられています。
体脂肪率とがんの関係は過去の研究ですでに指摘されており、体脂肪が過剰でない場合は大半のがん発症率は低くなっています。
このことから、体脂肪を減らすために運動をすることが、発がんリスクを減らすことにつながることが分かります。
しかし、今回の研究では体脂肪率と関連性がないがんも含まれているので、運動をすることによって得られる免疫機能や炎症、酸化に対する効果がリスクを減らしていると考えられます。
また、米国が閉経後女性73,615人を対象にした運動と発がんリスクの調査では、毎日運動を1時間以上行なった女性は乳がんリスクが25%減少し、週7時間以上ウォーキングを行なった女性は乳がんリスクが14%減少しました。
この調査から体型やホルモン状態に関係なく、運動そのものがリスクを減らしたと結論付けられます。
運動することによってインスリン抵抗力が高まり、がんの増殖を抑えることが可能です。
さらに、運動は代謝を活発にして免疫機能を高める他、ストレスを軽減することからもがん予防に効果的です。
また、大腸がんでは、運動によって老廃物が消化管を通過する時間の短縮ができるので発がんリスクを減らすことができます。
<参考>
Increased Physical Activity Associated with Lower Risk of 13 Types of Cancer
どのくらい運動すればリスクを減らせる?
45-79歳の男性40,708人を対象に運動量とがん発生率を7年間調べた研究によると、1日30分ウォーキングやサイクリングをした人は発がんリスクが運動量30分以下の人に比べて34%減少しました。
また、ガイドラインに沿って週2-3時間の有酸素運動をしている女性は、運動不足の女性と比較すると乳がんによる死亡率が41.5%低いことがわかっています。
これは、運動することによって乳がんの元になるエストロゲンの代謝に変化が起こり濃度を下げる効果があるためです。
男性も女性も1日に30分程度の有酸素運動をすることで、発がんリスクを減らすことができます。
家事で発がんリスクを減らすことができる
毎日30分のウォーキングやサイクリングを続けるのは大変なことです。しかし、男性でも女性でも家事をしながら有酸素運動をすることが簡単にできます。
有酸素運動と言えば、ジョギングや水泳などのイメージがあるかもしれませんが、比較的軽い負荷を継続的に筋肉に与える運動のことです。
そのため、普段の家事でも十分に有酸素運動になります。あるトイレ掃除用具を製造する会社が行った調査では、トイレ掃除の筋力負荷は、両手に3キロのダンベルを持って時速4キロの速度で100メートル歩くのとほとんど同じという結果になりました。
風呂掃除を30分間とゴミ捨てをすると、80分間の水泳や59分間のジョギングに相当するカロリー消費量になります。また、雑巾掛け、窓拭き、掃除機かけを30分継続的に行うことで、30分の運動量と同等に発がんリスクを減らす効果が期待できるのです。
そして、イギリスで行われた面白い研究があります。7つのホテルの客室清掃員の女性を対象にし、2つのグループに分け、1つのグループには運動が健康に良いこと、1日の仕事量が1日の必要運動量を満たしていることを伝えました。
一方、もう1つのグループには情報を全く伝えず、清掃員が仕事=運動ではないと思っている状態を作りました。
清掃員は1日平均5部屋を清掃しており、これは1日3時間の有酸素運動に匹敵する運動量です。
4週間後、情報を与えたグループの体脂肪率、体重は減っていました。それに対して、情報を与えなかったグループは実験前と全く変わりませんでした。
このことから、運動をしているという意識を持つことで、掃除も十分な運動になり、効果が現れるということが分かりました。
家事だけでなく、買い物袋を持って歩いたり、階段の上り下りをしたりするといったことも運動をしている意識を持って毎日続けると、発がんリスクが低くなります。
がん予防で推奨される身体活動量
国立がん研究センターのサイトによると、実際に18歳〜64歳の人は
“歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を毎日60分行うこと” に加え
“息がはずみ、汗をかく程度の運動を毎週60分程度行うこと”
を推奨しております。
65歳以上の方は
“強度を問わず、身体活動を毎日40分行うこと”
を推奨しております。ただ、普段運動しない人がいきなり1日60分の運動を行うことは、容易ではないために、まずは現在の身体活動量を少しづつ増やすことを意識してください。
<参考>
家事をして健康に!運動不足を解消して体脂肪を減らせば
発がんリスクが下がる1日30分以上運動をすることで体脂肪率にかかわらず発がんリスクを20~30%軽減することができることが、アメリカの調査でわかりました。
今までわかっていた大腸がんや乳がんだけでなく、日本人の死因に多い肺がんや食道がんなどもリスクを減少することができます。
毎日ジョギングやウォーキングなどの有酸素運動を続けるのは難しいですが、トイレ掃除やゴミ捨てなどの家事を30分することで同じ効果が得られます。
<参考>