“健康寿命の延伸”と“医療費削減への貢献”という共通目標を掲げ、『プロダクティブ・エイジング』の実現に向けて活動をしているNOMONとミルテルが、オンラインセミナー「老化抑制の最先端科学を日常へ」を医療関係者向けに開催した。

ミルテルは、病気になる前、病気が手遅れになる前に「ミルテル検査」として、テロメアテスト(病気のかかりやすさが分かる)、ミアテスト(がん、認知症のリスクが分かる)を提供している。

URL:https://www.mirtel.co.jp/

ちなみに、プロダクティブ・エイジング(Productive Aging)とは、1975年にILC⽶国センター理事⻑が提唱した、「⾼齢者を社会の弱者や差別の対象として捉えるのではなく、すべての⼈が⽼いてこそますます社会にとって必要な存在としてあり続けること」という概念である。NOMONでは、これを高齢者のみならずすべての人を対象にして、「すべての人が、自分を取り巻く様々なことに可能な限り繋がりながら歳を重ねることで、自分らしい人生を全うしていくこと」と定義している。

URL:https://www.nomon.jp/about/

NOMONの山名慶が「医食同源」をキーワードに展開するNMNの最前線と、ミルテル創業者である広島大学(医系科学研究科)田原栄俊教授の「テロメア、マイクロRNA、細胞外小胞」をキーワードに展開する最先端の老化研究が融合した本セミナーは、健康長寿の未来を示しているといえる。
そして、加齢や病気、超高齢社会における課題解決を見据え、「老化」を前向きに捉え、向き合うきっかけをくれる内容である。

分子レベルで老化を抑制するメカニズムがわかってきているNMNの効果が、ヒトの試験で検証される時期にきている

NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)とは、ビタミンB3の1種にヌクレオチドが1個ついているNAD+の前駆体である。
NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)は、エネルギー生産や抗老化因子であるサーチュインを活性してくれる物質であるが、NAD+自体は摂取しても吸収されないため、NMNという前駆体の状態で飲むことが行われている。

老化研究の歴史を振り返ってみると、カロリー制限でマウス、ラットの寿命が延びると分かったのが1930年、何と90年も前であるとのこと。もしかすると90年前のこの研究が、現代の超高齢社会を作っているといった見方もできるかもしれない。
一方、分子レベルで老化が制御できるとわかってきたのはごく最近らしい。2016年にワシントン大学が、NMNを投与したマウスの全身で老化が抑制されたことを報告し、それを皮切りに研究が進み、まさに今年、ヒトに対するいくつかの試験が進行中だという。

老化の制御という観点でいうと、医薬品であるメトホルミン(metformin)やラパマイシン(Rapamycin)などでヒトでの試験が実施されているそうだ。
そんな中、医薬品ではなく、私たちが日常的に手にしている食品、例えば、納豆に入っているスペルミジン、NMNなどが、「今、日常的に手に取ることができ、しかも分子レベルで老化を抑制するメカニズムがわかってきている。そしてそれが、ヒトを対象にした研究で効果が検証される時期にきている」と山名代表はいう。
この言葉を聞くと、カロリー制限が今の世の中に浸透しているように、NMNなどのニュートラシューティカル製品を当たり前のように手に取り、健康寿命の延伸が実現する世界はそう遠くないのかもしれないと感じることができる。

現代における「医食同源」を見据える

医食同源とは、病気の治療も日常の食事も、ともに生命を養い健康を保つためには欠くことができないもので、源は同じだという考えのことをいう。

どの分野においても、歴史を振り返ることは大きな意義をもっている。
ある角度から歴史を振り返ってみると、歴史のある時期においては、特定の栄養素の欠乏が致死の病であったらしい。例えば、ビタミンB1欠乏で脚気、ビタミンCで壊血病、ビタミンDでくる病などである。あるデータによると80%以上の日本人はビタミンDが不足しているらしい。今はくる病にはならないが、どこかしらに影響が及んでいてもおかしくないのかもしれない。

そこで、老化ビタミンのようなものがないのか、ということで注目されているのがNAD+である。加齢に伴う血中NAD+の減少や、筋肉が減少している人のNAD+の減少が既に明らかになっているそうだ。

では、NAD+の前駆体であるNMNはどのように摂取するのが良いのだろうか。
ヒトでの臨床研究におけるNMNの摂取量は250mgらしい。NMNは、食べ物や母乳に含まれているようだが、250mgを食品で摂取しようとすると、枝豆2万個、ブロッコリー4千房、母乳122Lが必要だという。これは非常に難しい。
しかし現代では、最先端科学の応用によって、NMNサプリメントとして日常的に摂取ができるようになっており、摂取している人が増えているようだ。今後、ヒトでの検証が進んでいくと共に、多くの人が当たり前に手に取る生活はすぐそこかもしれない。

NMNの摂取でテロメアが伸びる

マウスによる実験で、テロメラーゼ(テロメアを伸ばす酵素)を欠損させると、テロメアが短くなり、抗老化因子であるサーチュイン減少、NAD+減少、そして肝臓の線維化が生じたことが報告されている。すなわち、老化が早くなるということらしい。
そこで、テロメアの短いマウスがNMNを摂取すると、NAD+、サーチュインが増え、テロメアが伸び、肝障害が軽減し、見事に逆の変化が生じたとのこと。
ヒトの検証はこれからではあるものの、これは注目に値する研究報告である。

遺伝子全体に影響をおよぼすテロメアとは

「テロメア」とは、染色体末端のDNAとタンパク質からなる構造体の名称である。テロメアのDNAは、5’-TTAGGG-3’と呼ばれる6つの塩基がたくさん繰り返されている二本鎖DNA配列で、その長さは10000-20000塩基対(二本鎖になっているので対と呼ぶ。反対の鎖は、3’-AATCCC-5’である)になっている。そして、テロメアDNAの最末端部分は、二本鎖配列ではなくTTAGGGの一本鎖配列が飛び出した構造になっており、この最末端のしっぽのようになっている1本鎖部分を「Gテール」というらしい。Gがたくさんあり、しっぽのようになっているからGテール。何だか愛着がわく名前である。


ちなみに、Gテールは200-500塩基でテロメアの長さに比較して非常に短く、その機能の違いからテロメアとGテールは区別して考える必要があると田原教授はいう。

このGテールはストレス(主に酸化ストレスなど)を受けると短くなり、さらにテロメアも短くなり、様々な染色体の不安定化が導かれ、それが病気の原因になると考えられている。

しかも、テロメアの異常は、テロメアから遠く離れた場所に存在する遺伝子にまで影響がおよぶことが分かっているそうだ。

テロメアの短縮と加齢に伴う疾患には多くのエビデンスがあり、糖尿病、動脈硬化、感染症、ストレス疾患(うつ病など)、心筋梗塞、がん・がんの予後、腎疾患、慢性心不全、冠動脈心疾患などでテロメアの短縮が報告されているとのこと。

田原教授が注目している「テロメア疲労度」とは

テロメアとGテールをわけて考えたときに、テロメア長を「テロメア強度」と言い、Gテール長を「テロメア疲労度」という。
テロメア強度は加齢によって短縮し、基本的には短くなったものを元に戻すことはできないが、テロメア疲労度は、環境が改善すると伸ばすことができ、テロメア強度よりも重要であると考えられている。

ちなみに、登山家の三浦雄一郎さんのエベレスト登頂時にGテール長を測定したところ、登頂時はGテールが短縮し、帰還2週間後程度で元に戻ってたいそうだ。この事実だけでも、酸化ストレスの影響や、Gテールが環境によって改善する、という性質が見て取れるから面白い。

このGテールは染色体を守る機能として重要な部分であるが故に、2本鎖のテロメアを開裂したループ(tループ)の中にGテールを潜り込ませて守られている構造となっていて、Gテールはこのループの糊付け的な役割をしているようだ。

その結果、我々のDNAの末端はループ構造をしていて、染色体を守っているようだ。ミクロの世界の構造には驚かされるばかりである。
そして、Gテールが短くなるとループの糊付けが不十分になり、染色体が不安定になるため、このループの強さが染色体の安定性に非常に重要だという。「Gテールの短縮化は染色体の不安定化を誘導する」ということを覚えておきたい。

このような特徴により、Gテール長が短縮すると、加齢疾患のリスクが増加してしまうことは確からしい。実際に、脳卒中、心筋梗塞、がん、狭心症、認知症などでGテール長が短縮していることが報告されているとのこと。

そのため、テロメア長、Gテール長を測定し、モニタリングをしていくことが未病の検査になるわけである。

ちなみに現時点においてGテール長の測定技術で実用化されているのは、広島大学で開発した方法のみであり、それがミルテル社で提供されているものである。

未病状態をいかにコントロールし、病気に近づかないようにしていくかが1つの大きな鍵

どうやら人は、健康な状態からいきなり病気になるのではなく、未病状態すなわち病気に近づいている状態を経ていることがわかっているらしい。

しかし、日本人の死亡の危険因子となっている様々な生活習慣病は、痛みなどの症状が出ないことが多いために、リスクを検知するのが難しいとされているそうだ。
ちなみに様々な生活習慣病とは、糖尿病、血管障害、高血圧症、癌、慢性腎臓病、脳卒中、脂質異常症、心筋梗塞、脳障害、透析、心臓疾患、認知症、腎臓障害などを指している。

病気が発症するまでには、細胞レベルで障害が起こり(染色体不安定性、酸化ストレスなど)、その後、組織レベルでの障害(脳障害、心臓疾患、肝臓障害、血管障害など)が起こるが、この間は無症状で、この期間を経て病気として出現する。そのために、細胞レベルの段階で検知し、改善を図っていくことがいかに重要か、ということだ。

錆びた自転車のチェーンを例にしてみると、完全に錆びきって動かない状態が病気とした場合、錆びているけれど動く状態の自転車であれば、油をさしたり、錆びを取ったり、という改善策ができるため、錆び始めた段階での対処が重要であるという田原教授の説明は非常にわかりやすく納得ができる。

前記したように、Gテールの特徴は環境や生活習慣によって改善できるという点であり、

そこで、NMNといったサプリメントや、生活習慣の改善(食、運動、睡眠、喫煙、飲酒など)1つのポイントになってくるようだ。生活習慣の改善は、それぞれの取組は複雑でその効果を検証するのは非常に難しいが、Gテール長が短く細胞に障害が出るかも知れない状況で、NMNといったサプリメントを摂取することで、細胞障害が保護できるエビデンスが出ている点は非常に希望が持てる重要なポイントといえるのではないだろうか。

テロメアGテール長と疾患エビデンス

EBioMedicine(Cell PressとThe Lancetが共同で作成した速報紙)において、テロメアGテール長は、大脳白質病変および血管機能と関連していることが報告されている。

<参照>

https://pubmed-ncbi-nlm-nih-gov.ezproxy.tulips.tsukuba.ac.jp/26425704/

動脈硬化を有する群は健常群に比べて、Gテール長が約半分であった。また、アルツハイマー病などのハイリスク因子である大脳白質病変群は健常群に比べて、総テロメア長に関わらずGテール長が短縮していた。さらにGテール長が短い透析患者は心筋梗塞や心不全のリスクが増大することが明らかになっている。

このような報告からも、Gテール長を観察することの意義深さを理解することができる。

テロメア疲労度から体をどうやって守れば良いのか

前記している、NAD+前駆体であるNMNが大事な要素であることは確からしい。
NAD+の増強により、酸化ストレスが改善するなど、脳の老化を改善させることが既にわかっていて、さらに、ミトコンドリアの機能改善、アミロイドβ減少、認知機能増加などの夢のようなエビデンスが出てきているらしい。

また、Gテールが短縮した状態のときにNMNの補充することが、様々な障害を回避できる可能性も大いにあり、更なるエビデンスの蓄積が期待されているようだ。

病気を超早期発見するための救世主「マイクロRNA」

約22塩基ほどの小さなRNAで、RNAだけれどもタンパク質は作らないという特徴を持つ「マイクロRNA」は、メッセンジャーRNAにくっつき、これまで作っていたタンパク質の翻訳をブロックしている。この制御機能が体の中では非常に重要であることがわかっているそうだ。

癌などによりマイクロRNAができる経路が異常になると、細胞外小胞の1つのエクソソームとして分泌されることがわかっていて、体液(血液、髄液、唾液、尿など)で検知できることから、バイオマーカーとして注目されているようだ。

エクソソームは当初、ゴミ袋のようなものだと思われていたが、どうやらそうではなかったらしい。
精子と卵子が受精するときには、エクソソームが精子の頭につかないと受精が成立しない。母乳に含まれるエクソソームは、赤ちゃんの免疫を増進させることがわかっている。
さらに面白いことに、同じ牧場で飼育されている、健康状態が非常にい良い乳牛(高い値段の牛乳を生産)と普通の状態の乳牛(安い値段の牛乳を生産)を比較すると、健康状態が非常に良い乳牛には免疫に関連するマイクロRNAが非常に多く含まれていたそうだ。

これは、マイクロRNAから得られる情報の重要性と、良いものを食べることの恩恵を示している事実だといえる。

もし、野菜や果物などの植物や、牛乳のような動物由来のものから、免疫を上げるようなエクソソームの生成や保存、加工が可能となれば、機能性食品を製造したり、農作物に応用するなどの可能性も秘めていると語る田原教授の言葉の先に「健康とスマイルが継続する」未来を見ることができる。

認知症の常識は、症状が出る前に超早期発見をし、発症を防ぐことが絶対条件である

専門家に限らず、認知症の問題を認識していない人はいないだろう。残念ながら現時点では、認知症になってからの改善は非常に難しいようだ。

アルツハイマー病が時間をかけて発症することは周知の事実であるが、アルツハイマー型認知症に見られる老人斑の大部分を構成しているタンパク質のアミロイドβは、症状が現れる20年くらいも前から蓄積がはじまっているというから驚く。
ちなみにアミロイドβは、健康な人の脳にも存在しているものの、通常は脳内のゴミとして短期間で分解され、排出されているらしい。

田原教授のチームでは、アミロイドβとほぼ同じ精度で認知症のリスクを検出可能なマイクロRNAを既に同定しており、アルツハイマー病の前段階、すなわちアミロイドβが上がりはじめている段階での検出に成功している。そしてそれを早期に検出し、モニタリングしていくことが大切だという。
ミルテル社ではミアテストとして検査が展開されており、自分がどのリスク領域にいるのかの検査ができるそうで、これは非常に興味深い。

ここで、検査をしたのは良いけれど、認知症はどうやって予防するのか、となる。
現在も様々な研究がされているものの、機能性食品(クルクミンなど)や、口腔内・腸内環境を良好にするサプリメント、NMNなどが良いとされているようだ。

また、マイクロRNAは画像検査に写らない超早期がんを検出できる可能性も持っているとのこと。偽陰性、偽陰性、画像で見つけられない場合のグレーゾーンなどの課題はあるものの、様々な方向性を持ってチャレンジングしていくことが大事であり、「健康長寿のために早期発見は必須だ」と田原教授はいう。

今回は、ネガティブな印象が根付いている「老化」が、「プロダクティブ・エイジング」へ遷移する時代に直面していると、そう強く感じることのできるセミナーの内容を紹介させていただいた。

テロメア長やGテール長、マイクロRNAなどの検査が、健康診断のように当たり前に実施され、それに応じて、食事やNMNサプリメントなどのニュートラシューティカル製品が予防的に提案される「現代の医食同源」が実現される世界はそう遠くないかもしれない。

そして、「いま私たちが直面しているCOVID-19の重症者に圧倒的に高齢者が多いことも、老化への取組みがいかに重要かを物語っているのではないだろうか」という山名代表のメッセージが、専門家のみならず1人でも多くの人に届くことを願いたい。

執筆

LIFE IS LONG JOURNAL編集部

 

LIFE IS LONG JOURNAL編集部。 ”LIFE IS LONG JOURNAL”は「人生100年時代」を迎え、すべての人が自分らしく充実した人生を歩んでいくための「健康寿命」を伸ばすために役立つ情報を発信するメディアです。

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