長寿化が進む現代において、注目すべきは「健康寿命」です。これは、健康を維持しながら日常生活を楽しめる期間を指します。寿命そのものが延びても、健康でない期間が増えてしまうと何らかの介護や支援が必要となり、本人の生活の質が損なわれるだけでなく社会全体への負担も大きくなります。つまり、健康寿命を延ばすことは、個人の幸せと社会の活力を維持するために必要不可欠なのです。
今回は、「NMN」をはじめとする老化研究の可能性や、日本人の健康寿命に関するデータをご紹介するとともに、75歳が健康寿命のターニングポイントであることについて解説します。
なお、本記事はYouTubeで公開されている「【NMNサプリの選択基準は?】1章:日本人の寿命と健康寿命」 (2021年3月18日開催)の内容を基に作成されています。最新の情報や個別の状況については、専門家にご相談ください。※1
老化研究の最前線
老化はただの加齢現象ではありません。老化とは年をとることによって身体の機能が衰えるプロセスのことを指します。近年、老化を遅らせたり防いだりする方法が研究されています。
老化は必然ではなく、一部の生物は老化しないとされています。その例として、400年以上生きるニシオンデンザメが挙げられます。こういった老化しない生物たちは、老化そのものを克服するヒントを与えてくれる重要な研究対象です。
老化しない生き物について詳しく知りたい場合は、こちらの記事をご覧ください。
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さらに、老化研究の歴史上で今注目されているのが、「NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)」です。2016年に、ワシントン大学の今井眞一郎教授らの研究で行われたマウス実験においてNMNが健康寿命を延ばす効果が確認されて以来、NMNは研究者たちの期待を集めてきました。※2
2013年に発表された「Hallmarks of Aging(Aging Hallmarks/老化の特徴)」という論文では、老化の原因が9つに分類されていました。その後10年間にわたる基礎研究や臨床研究の知見を盛り込み、12のAging Hallmarksへとアップデートされた論文が、2023年に公開されています。※3
その間、分類された老化の原因それぞれに対して効果がある薬剤や食品成分などが動物実験を通して検証されてきました。効果が認められたもののひとつが、前述のNMNです。2021年のScience誌を皮切りに、NMNの人間における様々な有効性の検証報告がされており、健康寿命延伸への道が開かれようとしています。
日本人の健康寿命と75歳のターニングポイント
日本人の平均寿命は世界の中でも非常に長い一方で、健康寿命との間には大きなギャップがあります。このギャップが、老後における医療や介護の負担を増加させています。特に重要なのは「フレイル」とよばれる状態です。フレイルとは、高齢になるにつれて体力や心身の機能が低下する「虚弱状態」のことを指します。フレイルは健康寿命を短くする要因のひとつとされていますが、予防や改善が可能であることがわかっています。※4
また、年齢を重ねるとともに発症率が上がるとされている、がん、認知症、心血管疾患の年代別の発症率を他国と比較した結果、日本はインドやブラジルと比べて特別低いわけではありませんでした。最先端の医療や国民皆保険が整備された日本であっても、他国と比べてこれらの発症率を劇的に抑えられるわけではないということは、老化抑制においてまだ改善できる余地が残されているともいえます。※5
特に注目すべきは75歳という年齢です。この年代を境にさまざまな疾患の発症率が急激に上昇する傾向があります。例えば、日本人のデータでは、75歳を超えると身体的フレイルの有病率が大幅に増加します。※6
75歳になってから身体のメンテナンスをすればいいというわけではなく、75歳を迎える前に適切な対策を講じることで、身体機能が低下するリスクを軽減することが重要です。
日本人の体力は向上している
興味深いことに、日本人の高齢者は以前に比べて身体能力が向上しています。例えば、厚生労働省が2020年にまとめた「人生100年時代に向けた高年齢労働者の安全と健康に関する有識者会議報告書」には、年代別の歩行速度に関するデータが掲載されています。これによると、20年前と比較して女性は約20歳分、男性は約10歳分も若返っていることがわかります。※7
さまざまな研究によって、歩行速度が速いほど健康寿命が長いことが報告されています。歩行速度の若返りによって示された日本人の身体能力の向上は、特別な治療法や技術の導入ではなく、日常的な生活習慣の改善によって達成されたと考えられます。
また、信号が青のうちに横断歩道を渡れるくらいの速度(1m/秒)で歩けるかどうかは、フレイルの指標にもなっています。このような具体的な指標は、自分自身の健康状態をチェックするための良い目安となります。
未来の健康寿命延伸のために
健康寿命を延ばすためには、一人ひとりが「今日から何ができるか」を考えること、そして最新の研究成果を社会に実装することが重要であるとNOMONは考えています。
健康寿命を延ばすための取り組みは、未来の自分への大切な投資です。老化研究が示す可能性を活用しながら、日常生活における小さな改善を積み重ねることが重要です。75歳がターニングポイントであることを意識しながら、若い頃から健康への意識を高めていきましょう。
参考資料
※1 YouTube. NOMON研究所. 【NMNサプリの選択基準は?】1章:日本人の寿命と健康寿命
※2 Kathryn F. Mills, et al. (2016) Long-Term Administration of Nicotinamide Mononucleotide Mitigates Age-Associated Physiological Decline in Mice. Cell Metabolism. 24(6), 795-806.
※3 Carlos López-Otín. (2023). Hallmarks of aging: An expanding universe. Cell, 186, ISSUE 2, p.243-278
※4 Mihoko Yoshino, et al. (2021) Nicotinamide mononucleotide increases muscle insulin sensitivity in prediabetic women Science. 372(6547):1224-1229.
※5 Linda Partridge, et al. (2020) The quest to slow ageing through drug discovery. nature reviews drug discovery. 19. 513–532.
※6 Kojima G, et al. (2017) Prevalance of frality in Japan. J Epidemiol. 27(8). 347-353.
※7 厚生労働省. 人生100年時代に向けた高年齢労働者の安全と健康に関する有識者会議報告書.
※NOMONではHallmarks of AgingをAging Hallmarksと記載しています。