寝酒としての習慣
短時間にアルコールを大量に摂取すると、脳の活動を抑える作用が働き、起きていることができなくなります。このことから「寝酒」としての習慣が生まれたようです。
アルコールは興奮した人に対しては鎮静効果を与え、反対に抑うつ状態の人には興奮を与える作用があります。
この作用を正しく利用し、アルコールによって睡眠中枢が活動する時間に覚醒中枢の過剰興奮を抑えることができれば、理論上はスムーズに眠れるということになります。
ところが、実際はアルコールを用いた入眠には多くの問題が発生します。
アルコールが招く睡眠障害
・アルコール依存症による不眠症
眠くなるほどのアルコールはかなりの量です。毎日眠くなるまで暴飲を続けると、アルコール耐性が上がることで酒量も増えていき、やがてはアルコール依存症、同時にアルコールがないと眠れない不眠症となる危険性が高くなります。
>>不眠症とは?
・中途覚醒
多量のアルコールが身体に入ると、覚醒中枢も睡眠中枢も麻痺してしまいます。麻酔状態と同じで意識そのものが失われているため、眠っていても本来睡眠が持つ回復過程などはすべてがストップしてしまっている状態です。
アルコールの麻酔状態が切れると、覚醒中枢が回復して目が覚めてしまいます。そのため、アルコールを飲んだ翌日は、非常に早く目が覚めてしまうことがあるのです。
これを何度も続けていると、睡眠障害が進んでしまうことになります。
また、アルコールの利尿作用によって、夜中にトイレに立つようになり睡眠が覚醒されてしまうこともあります。
・睡眠時無呼吸症候群(SAS)
アルコールには筋緊張を和らげる作用があり、睡眠中に喉の奥に舌を落ち込みやすくさせてしまいます。
空気の通り道である気道が狭くなることで、大きないびきをかくようになります。
さらに、眠っているときに呼吸が停止したり、喉の空気の流れが弱くなったりする「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」につながる可能性があります。
>>睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは?
>>睡眠時無呼吸症候群のリスク、検査や治療
>>睡眠時無呼吸症候群セルフチェック
・飲酒しないときに悪夢を見る
アルコールを多く飲むとノンレム睡眠が増加し、レム睡眠は減少します。深酒をしたときまったく夢を見ずに眠り続けるのはこのためです。
ところが、寝酒が習慣化すると、脳に反発する力が生まれ、アルコールを摂取しないで寝たときに悪夢が出現するようになってしまいます。
アルコールとの付き合い方
「酒は百薬の長」という言葉もある通り、少量のアルコールを飲んでいる人の方が飲まない人よりも長生きというデータもあります。
ただし、アルコールを睡眠薬がわりに飲むのはNG。ストレスを抱えているためアルコールがなくては眠れない、という人は、より中毒性の低い精神安定剤を検討するのが健全です。
また、睡眠においてアルコールのよい恩恵を受けるためには、量だけではなく飲む時間も大切。寝る直前ではなく、できれば2時間前、遅くとも1時間前までに切り上げるように心がけましょう。
参考図書:
『快適睡眠のすすめ』(岩波書店)著/堀忠雄
『睡眠のはなし』(中公新書)著/内山真
『基礎講座 睡眠改善学』(ゆまに書房)著/堀忠雄、白川修一郎
『ぐっすり眠れる3つの習慣』(KKベストセラーズ)著/田中秀樹
この記事は、Sleep Stylesより許可を得て転載しております。