睡眠障害には、寝つきが悪くて眠れないという症状だけでなく、途中で目覚める(中途覚醒)、朝になっても眠くて起きられない(過眠症)など、主な症状別に7つのタイプがあります。
今回は、睡眠障害の分類と身体への影響、睡眠障害チェックの方法などをご紹介していきます。
眠りに問題があると危険な理由
「よく眠れない」「途中で目覚める」「慢性的に睡眠不足である」といった、眠りに何らかの問題がある状態のことを「睡眠障害」と呼びます。
寝ている間の不調に私たちはなかなか気づくことができません。
不調そのものに気づきにくいこと、また睡眠障害が慢性化することで、健康を害したり、日中の眠気によって思わぬ事故を招いたりすることがあり、睡眠障害の危険性はさまざまな病気や事故の背後に潜んでいます。
主な睡眠障害
一口に睡眠の病気といっても、病気の種類や症状は多岐にわたります。
2015年に改訂された睡眠障害国際分類第3版(International Classification of Sleep Disorders,3rd ed;ICSD-3)では、睡眠障害が7つのカテゴリーに分類されています。
不眠症は、不眠をもたらす原因別に11種類に分類されています。
これらの診断には専門医の判断が不可欠です。
<主な睡眠障害>睡眠障害国際分類(ICSD-3)
1.不眠障害(insomnia disorder)
精神生理性不眠症、精神・身体疾患による不眠、薬剤もしくは物質による不眠
2.睡眠関連呼吸障害(sleep related breathing disorders)
3.過剰な眠気を来す中枢性症候群(central disorders of hypersomnolence)
4.概日リズム睡眠-覚醒障害(circadian rhythm sleep-wake disorders)
睡眠相前進症候群、時差障害
5.睡眠随伴症(parasomnias)
6.睡眠関連運動障害(sleep related movement disorders)
レストレスレッグス症候群、周期性四肢運動障害
7.その他の睡眠障害(other sleep disorders)
睡眠障害の影響
睡眠障害は、高血圧、糖尿病などの生活習慣病を悪化させる他、逆に一部の生活習慣病によって不眠症状などが進行することもわかっています。
また、うつ病とも深い関わりがあり、不眠などの睡眠障害が増悪因子になることもあります。
さらに、睡眠障害は労働災害や居眠り事故を誘発するなど、個人の健康問題という範囲を超えて、社会的・経済的にも大きな影響を及ぼします。
睡眠障害診断の手順
睡眠障害にはたくさんの種類があり、治療法もそれぞれ異なります。
自己流で治そうとするのはたいへん危険です。睡眠に関する何らかのトラブルを感じた場合には、迷わず専門医に相談しましょう。
一般的には「睡眠障害スクリーニング」と呼ばれる手順を踏んで、症状を医学的に具体化していきます。
睡眠障害診断(睡眠障害スクリーニング)の手順
① 睡眠の量・質の問題の確認
※睡眠障害国際分類第2版(ICSD-2)に準拠しています
- 寝つきが悪い(入眠障害)
- 夜中に目が覚める(中途覚醒)
- 朝早く目が覚めてしまう(早期覚醒)
- 朝、目覚めにくい(覚醒困難)
- 睡眠をとっても熟睡感が得られない(熟眠障害)
- 起きていなければならないのに居眠りをしてしまう(過眠)
- 睡眠時間と起床・就寝パターンが生活スタイルに合っていない
② 睡眠中の異常現象の確認・いびきや呼吸停止
- 脚のむずむず感
- 不随意運動(自分の意思とは関係なく現れる異常運動)
- 睡眠中の異常行動
- 寝ぼけ行動など
③ 睡眠の問題の発症時期の確認
- きっかけ
- 経過
- 頻度
- 症状の内容
睡眠障害のタイプ
(清水徹男、田ヶ谷浩邦:一般医療機関における睡眠障害スクリーニングガイドライン.厚生労働省精神・神経疾患研究医委託費「睡眠障害医療における政策医療ネットワーク構築のための医療機関連携のガイドライン作成に関する研究」,平成17~19年度総括研究報告書,pp8-12,2008より引用改変)
参考図書:
『睡眠障害国際分類第2版(ICSD-2)』(医学書院)発行:日本睡眠学会
American Academy of Sleep Medcine:International Classification of Sleep Disorders.3rd ed,American Academy of Sleep Medicine,Illinois,2014 引用
『睡眠障害診療ガイド』(文光堂)日本睡眠学会認定委員会ワーキンググループ監修