睡眠時無呼吸症候群の治療方法に「CPAP(シーパップ)」という治療法があります。どのような原因の睡眠時無呼吸症候群、どのような症状にCPAPは有効なのでしょうか。CPAPに期待できる効果やCPAP装置の使い方のポイントを、その費用など気になる条件とともに解説します。

CPAPとは

CPAP装置を着けて寝ている男性

睡眠時無呼吸症候群の治療法として、日本や欧米でもっとも普及しているのが「Continuous Positive Airway Pressure」、頭文字をとって「CPAP(シーパップ)」と呼ばれる治療法です。以下で、そのCPAPが睡眠時無呼吸症候群のどのタイプに有効で、どのような治療法なのか解説します。

 

睡眠時無呼吸症候群とは

睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中の呼吸が止まってしまう病気のことです。「10秒間以上呼吸が止まる無呼吸」や「もう少しで呼吸が止まりそうな低呼吸」が、睡眠中1時間あたり5回以上あると睡眠時無呼吸症候群と診断されます。日中の頭痛や強い眠気、だるさ、集中力や記憶力の低下などのほか、高血圧や糖尿病などの生活習慣病につながってしまう可能性もあります。その原因によって「閉塞性睡眠時無呼吸タイプ」と「中枢性睡眠時無呼吸タイプ」に分類することができ、CPAPは、閉塞性睡眠時無呼吸タイプに有効です。

閉塞性睡眠時無呼吸タイプの睡眠時無呼吸症候群

鼻や口から肺への空気の通り道である気道のうち、鼻腔から咽頭(いんとう)までの「上気道」と呼ばれる部分に空気が通る十分なスペースがなくなり、無呼吸が生じるタイプです。睡眠時無呼吸症候群の患者の約9割がこのタイプに該当し、CPAPが有効とされています。上気道のスペースが狭くなる要因としては、首・あごのまわりに脂肪がついたり、のどちんことも呼ばれる口蓋垂(こうがいすい)の両側が肥大したり、舌の付け根である舌根(ぜっこん)が落ち込んだりすることなどが挙げられます。

中枢性睡眠時無呼吸タイプの睡眠時無呼吸症候群

呼吸運動を調節し、指令を出す中枢神経の異常によって引き起こされるタイプです。肺、呼吸に関連する筋肉や、中枢神経からの指令を伝達する末消神経には異常がないにも関わらず、無呼吸が生じてしまいます。閉塞性睡眠時無呼吸タイプと違い、上気道は開いたままです。睡眠時無呼吸症候群のなかでも、このタイプの患者は数パーセント程度です。

 

CPAP装置の使用法

CPAPは、寝ている間の無呼吸を防ぐため、専用の装置を使って上気道に空気を送り続け、上気道を開いた状態にしておく治療法です。上気道に中から空気圧をかけ続けることで、舌や軟口蓋を押し上げて広げ、無呼吸になるのを防ぎます。また、装置の種類も豊富で、日常的に使用するサイズのものから、出張や旅行に持参できる12㎏のコンパクトタイプなものまであります。以下で、具体的な装着方法を紹介します。

CPAP装置の装着方法

空気を送り込むCPAP装置本体は、1520センチ四方ほどの大きさで、ベッドサイドのテーブルなど近場で安定した場所に置きます。この本体から伸びたシリコン製エアチューブの先のマスクを鼻あるいは口に装着します。空気を送り込むときの圧力は、常に一定の圧力を保つ設定と、無呼吸のときに合わせて自動的に圧力が増す設定があり、どちらを選択するかは主治医が症状に応じて判断します。

CPAP装置の使用時間と使用頻度

睡眠中の呼吸を助ける治療法なので、毎日、寝ている間の一晩中装着します。症状が改善したからといってCPAPを中止すると、また無呼吸が発生する恐れがあるため、治療の継続や終了は主治医と相談して決めることになります。

CPAP装置の使用

医療機関で適切に設定された装置を使い、マスクを正しく装着すれば、睡眠が妨げられることはほぼありません。むしろ、呼吸が改善することで熟睡しやすくなりますが、まれに、鼻づまり、耳鳴り、マスクが当たる部分の皮膚のかぶれ、口の乾きなどが生じることもあります。また、CPAPを使い始めて間もない頃は、息を吐く際にも空気が送られてくるため、呼吸に違和感があるかもしれません。これらの不快な症状は、空気を送り込む圧力を調整したり、別のタイプのマスクに変えたりすることで改善することもあります。違和感が続くからといって独断で治療を中止したりせず、主治医と相談してください。

CPAP装置を正しく装着するポイント

自宅で本格的に使い始める前に、医療機関に一泊入院し治療に適した機器設定などを行う、タイトレーションといわれる検査を実施する場合もあります。マスクは、顔とマスクフレームが平行になるように角度調整し、後ろの部分は首にかかるまで深くかぶるとよいでしょう。また、寒冷地の冬場などでは、エアチューブの内部が結露し、その水滴がマスク側に落ちてきてしまうことがあるため、暖房器具などで室温を温かく保ってください。使い方でわからないことがあれば、コツがつかめるようになるまで主治医や医療機関のスタッフに相談すると安心です。

 

CPAPの効果

スッキリした目覚めの男性

CPAPは、続けることで睡眠時無呼吸症候群の症状が改善され、それに伴う睡眠の質の向上や、生活習慣病などの合併症の抑制が期待できます。

 

睡眠時無呼吸症候群の症状改善

CPAPによって、睡眠中の無呼吸や低呼吸の頻度が減少していきます。それに伴って無睡眠の質も向上するため、日中の眠気が減少したり、集中力を取り戻したり、だるさや疲労感も感じにくくなるでしょう。

 

睡眠時無呼吸症候群の合併症の抑制

睡眠時無呼吸症候群については、生活習慣病との合併が指摘されています。例えば、高血圧の場合、睡眠中に下がるはずの血圧が、無呼吸の影響で血圧が上昇するケースがみられます。CPAPによって無呼吸が減少すると、睡眠中の血圧上昇が抑えられ、早朝から日中までの降圧効果にもつながるのです。そのほか、心筋梗塞や脳卒中、糖尿病などのリスク抑制にも効果があることもわかってきました。

 

CPAPの効果はいつから感じるか

CPAPは、初めて装置を使った翌朝に熟眠感などの症状改善を感じる人がいる反面、なかなか改善を感じない人もいます。ただ、治療の効果は、自覚症状だけでなく、無呼吸の頻度や睡眠の質にあらわれることもあります。そのため、自己判断で治療をやめることなく、主治医と相談しながら、治療を継続していくことが大切です。

 

CPAPをはじめるには

男性医師

CPAPを受けるためには、知っておきたいことがあります。医療機関の選び方から、治療費用の目安まで、気になることを以下で紹介します。

 

CPAPのための医療機関の選び方

睡眠時無呼吸症候群の検査と治療ができる医療機関は全国にあります。「睡眠外来」や「睡眠センター」など、睡眠専門の外来を設けている機関もあれば、内科や呼吸器科、循環器科、耳鼻咽喉科、精神科などが対応している場合もあります。CPAPは長期的な治療になるため、定期的な受診が必要になります。まずは、なるべく通いやすいところに相談してみてください。

 

CPAPの費用目安

治療費の目安として、保険が適応になり、3割負担の方で月4,500円程度です。CPAP装置は医療機関からレンタルして使用することが一般的で、装置の保守管理、マスクやエアチューブなど治療に必要な消耗品の供給は医療機関で対応しています。

 

CPAP装置のメンテナンスなど

CPAP装置やマスクは、毎日使うものだけに、こまめに手入れをする必要があります。特に、顔に直接触れるマスクは、常に清潔にしておくことが大切です。取扱説明書に従って、適切な手入れをしましょう。

 

睡眠時無呼吸症候群は治療することができます。治療によって睡眠の質が向上すれば、日中の不調が解消され、健康的な生活が期待できます。睡眠時無呼吸症候群かもしれないと思う方は一度、医療機関を受診し、CPAPを検討してみてはいかがでしょうか。

<参考>
睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは?症状と原因、治療方法|放っておくと高まるリスク
無呼吸なおそう.com
日本呼吸器学会
『睡眠時無呼吸症候群を治す!最新治療と正しい知識』白濱龍太郎監修(日東書院本社)
『別冊NHKきょうの健康 睡眠の病気』内山真監修(NHK出版)
『睡眠障害のなぞを解く』櫻井武著(講談社)

この記事は、Sleep Stylesより許可を得て転載しております。

執筆

LIFE IS LONG JOURNAL編集部

 

LIFE IS LONG JOURNAL編集部。 ”LIFE IS LONG JOURNAL”は「人生100年時代」を迎え、すべての人が自分らしく充実した人生を歩んでいくための「健康寿命」を伸ばすために役立つ情報を発信するメディアです。

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